建設業界の基礎知識

バスダクトとは?概要や工事の種類、メリットを徹底解説!

大規模な工事で使われることが多いバスダクト。

住宅や施設で電気を安全に使うために欠かせない存在の一つですが、そもそもどのような意味があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回はバスダクトの概要をはじめ、工事内容や混在されやすい金属ダクト工事との違い、バスダクト工事における注意点を解説します。

電気工事に従事して間もない方や、資格や技術を活かして電気工事分野への転職を検討中の方は、参考資料の一つとしてお役立てください。

バスダクトとは


バスダクトとは、アルミニウムや銅の導体で絶縁物を覆い、鉄板のケースに収めたもののことです。

直線・変形などあらゆる形状のユニットを結合し、ブロックのようにつなぎ合わせて電路を形成します。

導体を意味する「Busbar(ブスバーまたはバスバー)」と、管を意味する「Duct(ダクト)」を掛け合わせて作られています。

物流施設や生産工場、高層住宅など多くの建物で電気需要が高まる一方、建設設備業界の人手不足が問題視される昨今。

バスダクトは、施工・運用それぞれの省力化につなげ、さらに安定した良質な電気を大容量供給できるとして注目を集めています。

金属ダクト工事との違い

金属ダクト工事は配線を通すことを、バスダクト工事は電気そのものを通過させることを目的とした工事という違いがあります。

金属ダクト工事とは、金属製のダクトを用いて建物内部に配線やケーブルを巡らせる工事のことです。

大型商業施設や高層マンション、ビルや工場といった大規模な建造物にはこのダクトを使用して配線工事を行います。

一方バスダクト工事は大規模な電気工事を指しており、導体部分を絶縁で固定する手法を用います。

6,000Aまで流すことが可能な強力な工事なので、電気使用量が多い工場やビルが群する場所で利用されることが多いです。

具体的な種類と名称

バスダクト工事は3つの種類に分類されます。
ここではそれぞれの工事の概要を解説します。

フィーダバスダクト

プラグの受口がないタイプの工事をフィーダバスダクトと呼びます。

およそ3mの長さで接続部にボルトナットを用いて、導体は電流が伝わらない絶縁で覆われています。

直接手で触れても感電する恐れがなく安全性が高いといった特徴があります。

プラグインバスダクト

バスダクトから分岐できるよう、プラグの受口があるタイプをプラグインバスダクトと呼びます。

プラグの種類によって分岐できる特徴から移設・増設に用いられます。

トロリーバスダクト

バスダクトの下部を開放し、トロリーを走行できるようにしたタイプをトロリーバスダクトと呼びます。

移動しながら電力供給を行う際に用いられます。

バスダクトの関連法規

バスダクト工事を行う上ではいくつかの決まりごとに遵守する必要があります。

詳細は経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」に記載されていますが、ここでは一部を抜粋して紹介します。

  • ダクト相互及び電線相互は、堅ろうに、かつ、電気的に完全に接続すること。
  • ダクトを造営材に取り付ける場合は、ダクトの支持点間の距離を3m(取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所において、垂直に取り付ける場合は、6m)以下とし、堅ろうに取り付けること。
  • ダクト(換気型のものを除く。)の終端部は、閉そくすること。

出典:経済産業省:電気設備の技術基準の解釈

全部で7項目あるので、バスダクト工事に従事する際は一読することをおすすめします。

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バスダクトの10種のメリット


大量の電流を流せる特徴から、工場や倉庫、ビルなどの大型施設に取り付けられるバスダクトですが、設置によってどのようなメリットがみられるのでしょうか。

ここからはバスダクトの10種のメリットを解説します。

1. 耐火性・耐久性に優れている

バスダクトの内部は導体で満たされているので、火災時の煙道になるリスクを抑えることができます。

ケーブルに比べて延焼の危険性も低く、耐火性にも優れています。

さらに短絡容量が大きく大電流を流すことができる特徴から、短絡事故を防止できるなど、耐久性に優れているというメリットも。

ただし、長期使用によっては変形やサビといった劣化がみられることがあるほか、温度や湿度などでも劣化が進むため、10年を経過したバスダクトは接続部表面に注意した上で点検することが求められます。

2. 負荷の偏りに対応できる

バスダクトは大容量の集中幹線方式です。
そのため多数の幹線に分岐できるメリットがあります。

分岐が増えれば1つにかかる負担を軽減できることから、より安心・安全を維持した電気供給が可能になります。

また、大小異なる分岐線を混在させても負荷バランスが不均等にならないよう維持できるといった特徴もあります。

3. 電圧降下を抑制できる

バスダクトはケーブルに比べて導体が太く、導体相互距離が小さい特徴を持ちます。

そのため交流回路における電流の流れにくさを示す「リアクタンス値」が小さく、電圧降下を低く抑えられるメリットもあります。

4. 電磁波の発生を低減させる

ケーブルと比較して近接する通信線に対する誘導障害を低く抑えることができるといったメリットもあります。

導体同士の間隔が短いことから、外部に漏れ出す磁束が小さいといった特徴を持つバスダクト。

例えば医療機器が設置された環境だと、漏洩磁束が命の危険に及ぶ可能性もあるため、その点を踏まえても有用と言えます。

5. 増設工事も可能

プラグインブレーカーの採用によって簡単に分岐を増設できるため、負荷変動が激しい工場でも負荷の変動に対応可能というメリットもあります。

負荷変動の激しい工場では、改修・増築といった工事により不要になったケーブルが大量に山積みされることがあります。

このまま積み上げてしまうと、異常加熱を招き火災につながることがあるため、大きな火災を未然に防げるのも大きなメリットと言えるでしょう。

6. 電力の取り出し口を選択できる

バスダクトにはプラグイン分岐機能を搭載できるので、増設が簡単に行えるといったメリットもあります。

活線中であっても負荷の移設や増設が可能なので、稼動を維持したいライン式工場には有用です。

7. 環境保全につながる

使用不可となったバスダクトは、銅板や胴体部分にあるアルミニウム・銅・絶縁物に分けることができ、それぞれ再利用可能な資源としてリサイクルされます。

バスダクトを幹線設備に用いることは、最終的に環境保全につながるというメリットもあります。

8. 工期の短縮化

バスダクトは建物の建築工程に合わせて施工できるので、工期の短縮化につながるのも大きなメリットです。

ケーブル敷設の場合、建物ができあがり、配線の確保が終わってからの工事になりますが、バスダクトは下層階から順に立ち上がる建築方法を採用しているので、プレハブ施工が可能です。

9. 電炉の見栄えが良い

大量のケーブルを敷設すると、見た目にまとまりがなく美観を損ねてしまいます。

バスダクトを活用すると、電路がまとまっているので見栄えがすっきりと仕上がり、美観性を高めることができます。

10. 電力品質を均一に維持できる

バスダクトの内部は隙間なく導体が敷き詰められているため、熱対流の心配がいりません。

縦向き敷設・垂直敷設を採用しても熱勾配が発生しないので、大型商業施設や工場であっても均一な電力品質を保つことができます。

バスダクトの2つのデメリット


バスダクトにはさまざまなメリットがある一方でいくつかのデメリットがあることも押さえておくことが大切です。

デメリットの数はメリットの数に比べて少ないものの、安全を維持するためにもこの機会に把握しておきましょう。

1. 複雑な施工が困難

バスダクトは直線的に敷設を行うのが効率的と言われています。

そのため直線をずらす・曲げるなどの作業が繰り返される場所では「曲がり部材」などが必要になります。

直線ではない部位が多いほど必要になる部材も増えるため、時間や手間が掛かります。

バスダクトを使用する場合は、できる限り直線的な部分になるよう綿密な施工計画を練ることが求められます。

2. 事故による停電範囲が広い

バスダクトは数千Aと大量の電流を流すことができる特徴があります。

CVTケーブルの許容電流は300Aほど。
つまり、CVTケーブルの数十倍もの電流が流れることから、バスダクトによる事故が発生した場合、停電範囲が広まる可能性が考えられます。

事故を未然に防ぐためには、バスダクト周辺の温度に注意することが大切と言えるでしょう。

バスダクト工事における注意点


バスダクトを用いた電気工事では、設置場所の環境を確認することが大切です。

施工図に設置可能場所と記入があっても、その周辺の温度や湿度などを確認しながら取り付けていく姿勢が求められます。

ここからはバスダクト工事における注意点を紹介します。
大事故につなげないためにも、注意点に留意した上で工事を進めましょう。

接地工事が必要になるケースがある

バスダクトは、ケーブルラックや電線管と同じく電気設備技術基準や内線規定に基づいて接地するよう定められています。

使用電圧が300V以下の場所では「D種接地工事」を、300V以上の場所では「C種接地工事」を施すことに留意しましょう。

なお、国土交通省ではそれぞれの工事に関する仕様書を公開しています。
詳細は「公共建築改修工事標準仕様書(電気設備工事編)」よりご確認ください。

参考:国土交通省|公共建築改修工事標準仕様書(電気設備工事編)

工事可能な場所を確認する必要がある

バスダクト工事を進める上では、工事可能な場所であるかを必ず確認しましょう。
バスダクトを設置する天井にはさまざまな設備があります。

そのため、作業を進める前に、どの位置に設備が使用され、配管はどのようになっているかについて各事業者で検討・相談することが大切です。

保管場所に気を付ける

40℃を超える場所にバスダクトを保管した場合、電気的な性能が低下する恐れがあります。バスダクトの保管は必ず周囲の温度に注意することも大切です。

さらに湿度が高い場所も水が付着する恐れがあり、性能を低下させる原因につながります。乾燥した場所に木材などで浮かせて保管すると性能の低下を予防できます。

過負荷に注意する

バスダクトは1系統から多くの分岐幹線が得られるものの、負荷の増設を繰り返すと最大容量を超過する恐れがあります。

最大容量を超過したまま使用を続けると、バスダクトが異常加熱を起こし火災事故につながる可能性があるので、過負荷に注意した上で増設計画を立てましょう。

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バスダクト工事が行える場所


大量の電流を流すことができるなどさまざまなメリットがあるバスダクト。

しかし使用にあたっては工事が行える場所を把握した上で設置することが大切です。

展開している場所

バスダクト工事は、露出した天井および壁面などの展開している場所で行います。

乾燥した場所であれば300Vを超えていても施工可能であるものの、湿度が高く水気のある場所では300V以下と制限されているので注意しましょう。

点検が可能な隠ぺい場所

バスダクトは点検が可能な隠ぺい場所での工事も可能です。

例えば隠ぺいされていても、点検口が設定されている場所であれば問題ありません。

「展開している場所」と同じように、乾燥した場所および湿気・水気のある場所ではV数に注意しましょう。

バスダクト工事の理解を深めて業務に役立てよう

バスダクトは大量の電流を流すことに適した電力幹線用部材です。

3つの種類に大別され、それぞれで用途が異なるといった特徴もあります。

耐火性や耐久性に優れ、電圧降下を押さえられるメリットがある一方で、複雑な施工が困難といったデメリットもあります。

バスダクトを使用した工事に携わる際は、本記事で紹介したデメリットや注意点を踏まえて安全に敷設しましょう。

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