建設業界の基礎知識

損料とは?概要や使うシーン、類似した賃料との違いなどを解説!

工事の費用の一つに損料と呼ばれる項目があります。
3つの費目と2つの種類に分かれており、それぞれで意味や概要が異なります。

今回は損料を中心に、由来やそれぞれの種類を解説します。

経費計算を行う上で欠かせない項目なので、本記事で概要を押さえておきましょう。

損料とは


損料とは、建設または土木業界で自社所有する建設機械などの償却費・維持管理費・修理費のことです。

また、器物などを借りた際のレンタル費用は損料ではなく賃料に該当します。

簿記では減価償却費とも呼ばれており、購入費用に対して価値がなくなるまで使った期間で割ることで算出されます。

由来

損料の由来は江戸時代まで遡り、当時存在した損料屋がルーツです。

当時の庶民は狭い長屋暮らしが一般的で、頻繁に発生する火事から身軽に避難できるよう最小限の物で暮らしていました。

不足する家財道具は必要な料金を支払い、損料屋から借りる生活が主でした。

このとき、賃貸期間に具体的な定めはなかったものの、損料の2~3倍の保証料制度が設けられており、返却時には保証料が返金され、庶民の生活の支えとなっていました。

費目

損料の費目は大きく分けて3つあります。

  1. 償却料
  2. 維持修理費
  3. 管理費

1つ目は「償却料」と呼ばれる機械の使用、または経年による価値の「減価額」で、損料の中でも大きな割合を占めるものです。

2つ目は、機械の機能を維持するための整備・修理費用にあたる「維持修理費」を、3つ目は、機械の保有に必要な格納保管にかかる費用や保険費用などを含む「管理費」で構成されています。

焼却量または原価額、そして維持修理費と管理費を、1時間あたりまたは1日あたりの金額で計算した経費が損料扱いになります。

種類

損料にはさらに2つの種類があります。

  1. 運転損料
  2. 供用損料

1つ目は「運転損料」と呼ばれるもので、機械を運転する際に発生する費用が該当します。運転損料は償却費のうちの半分の金額と維持修理費を足して算出できます。

2つ目は「供用損料」で、機械を保有する際に発生する費用になります。
供用損料は償却費のうち半分と、管理費を足して算出します。

例えば工事の進捗状況によって長期間機械を現場で待機させなければならない場合です。

この場合、重機などであれば必要に応じて待機料が発生し、必要な待機料を見積もり、供用損料として計上します。

損料の3つの費目は運転損料と供用損料に分けられ、償却費であれば運転損料・供用損料それぞれに、維持修理費用は全てを運転損料に、管理費は全額を供用損料として計上します。

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土木積算の計算前に|歩掛や賃料について理解しよう


土木積算の計算をする際は、歩掛(ぶがかり)や賃料についても理解しておきましょう。

歩掛とは

厚生労働省の「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」では、歩掛について以下のような記載があります。

歩掛は、工事を施工するために必要な機械・労務・材料に係る費用とし、その算定は土木工事標準歩掛及び物価資料によるものとする。
出典:国土交通省「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」

つまり、工事において使用が欠かせない機械や人件費といった費用のことを歩掛と呼び、事業所によっては運転歩掛と呼ぶこともあります。

歩掛では、労務費・機械経費・燃料費を合わせたものが内訳になります。

労務費には機械を運転・操作するオペレーター費用を、機械経費では重機や発電機、コンプレッサーといった建設機械や足場材といった工具費用を、燃料費では機械に使用するガソリンや軽油といった燃料代が該当します。

参考:国土交通省|土木工事工事費積算要領及び基準の運用

賃料とは|機械経費に注意

損料と類似した言葉の一つに「賃料」があります。
賃料とは、建設機械などをレンタルした場合の料金やリース契約時の費用などが該当します。

例えば建設会社を運営していても、なんらかの理由によって建設機械や資材をレンタルする場合もあるでしょう。
この際に発生する費用を賃料と呼びます。

算出する際は、レンタル会社に支払うレンタル料金やリース料金などの単価ではなく、毎月発行される一般財団法人経済調査会の「積算資料」、または一般財団法人建設物価調査会の「建設物価」を参考にします。

参考:一般財団法人経済調査会|積算資料単価データベース Database
参考:一般財団法人建設物価調査会|建築費指数(2015年基準)

損料と賃料の見分け方


損料は自社が所有する機械などを、賃料ではレンタルした機械や資材などが該当することが主ですが、現場ごとに異なる状況で工事を行うことも多く、簡単に決めることができないことも。

工事規模や企業形態による違いもありますが、役所の発注する公共工事の場合は積算基準で決められているため使い分けは明確です。

これは担当者によって公示価格に変動がないようにするためです。
ここからは、損料と賃料の使い分けを見分ける方法を紹介します。

積算標準の注意書き欄をチェックする

機械経費の積算基準では、損料の場合であれば何も記載しません。

もし、但し書きに「賃料とする」と記載がある場合は賃料としてください。
基本的な方法ですが、但し書きは必ず確認するよう心がけましょう。

工法協会の歩掛に注意する

工法協会の歩掛は協会ごとで異なる判断に基いて発信されています。
そのため、概要をきちんと確認することも大切です。

工法協会の資料では損料や賃料を明確に記載していないことも多く、資料に記載がない場合であっても「賃料」とするケースも珍しくありません。

「似たような工種だから同じように計上して良い」ということではないので、項目について不明点があるときは、工法協会に積載基準について問い合わせることをおすすめします。

移動式クレーンの使用者をチェックする

クレーンの吊り上げ荷重によっては資格が異なるため、移動式クレーンの使用者をチェックしましょう。

移動式クレーンの多くは運転士付きでレンタルするのが一般的です。

クレーンの吊り上げ荷重によっては必要な資格も異なり、5t以上のタイプであれば移動式クレーン運転免許を保有した人でなければ操作できません。

そのため、移動式クレーンをレンタルする場合は、単価にオペレーターの労務費や燃料費を合算する点に注意しましょう。

ラフテレーンクレーンの損料・賃料

自社所有であれば機械経費だけを損料で計上し、運転士の労務費や燃料費は、それぞれの費目に仕分けます。

レンタル契約した際は資格を保有する運転士が付くのが一般的のため、このようなときは損料ではなく賃料として計上します。

所有する機械を稼動した場合であれば、労務費は給与として、燃料費は自社経費として計上します。

なお、ラフテレーンクレーンは大型特殊車両に分類される車両で、公道を走行できます。

レンタルした場合、レンタル会社から現場までの走行距離や時間も利用料として請求されることから、燃料費もレンタル会社の負担になります。

このことから、レンタル料金には燃料費も含まれているので、賃料に合算するよう注意しましょう。

クローラクレーンの損料・賃料

クローラクレーンの場合も、自社所有のときは損料に機械経費だけを計上します。

また、自社所有であれば運転士を労務費として、燃料費を燃料代または消耗品費など自社の会計仕訳に沿って計上します。

大型である特徴から、レンタル会社から現場まではトレーラーで運搬し、現場で組み立ててから使用するのが一般的のため、移動や組立費は別途請求されます。

現場で使用した際に発生する燃料費は、使用した会社が負担するので、損料として計上しましょう。

積算ソフトの使用に注意

移動式クレーンは計算が特徴的なので、積算ソフトは使用せず自分で仕訳することをおすすめします。

損料は他の入力でも機械経費のみで問題ありませんが、賃料の場合、積算ソフトの自動仕訳によって運転士の労務費や燃料費が二重計上される可能性が高くなってしまいます。

二重計上が発覚すると再計算が大がかりになるので、レンタル料金の明細を確認しながら手動で入力することをおすすめします。

なお、初めて計上する場合は、経済調査会の積算資料などを参考にするとスムーズです。

参考:一般財団法人経済調査会|積算資料単価データベース Database
参考:一般財団法人建設物価調査会|建築費指数(2015年基準)

損料の計算方法


損料の計算方法は、以下のとおりです。

運転1日あたりの損料率 = {(1 –残存率)×1/2+維持修理費率 }÷標準仕様年数÷年間標準運転日数

建設機械等損料算定表は国土交通省が毎年改定していることから、最新の数値を使用しましょう。

参考:国土交通省|建設機械等損料
参考:国土交通省|令和6年度建設機械等損料算定表改定の概要

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損料の概要と賃料との違いを正確に理解しよう

自社所有の機械や資材にかかる償却費・維持修理費・管理費などの経費を損料として、レンタルやリースで利用する機械や設備にかかる費用は賃料として仕訳します。

適切に仕訳をする場合は、損料と賃料との違いを正確に理解することが必要不可欠です。

本記事を参考にしながら適切に損料を算出してください。

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