建設業界の基礎知識

足場に使用する作業床とは?概要や定義、事故事例を解説

足場を立てる際に使用するものの一つに作業床があります。

作業床とは新築や改修工事において設置する一時的な床のことで、墜落防止を目的としています。

今回はこの作業床の概要と使用における注意点を解説します。

作業床の意味を押さえ、今後の業務に役立てましょう。

作業床とは


作業床とは、高さが2m以上ある場所で作業をする際に墜落を防ぐ目的に設置する床のことで、墜落防止の観点から以下のような決まりがあります。

  • 幅40cm以上、床材間の隙間は3cm以下、床材と建地との隙間は12cm未満

建地と床材の隙間が12cm以上ある場所で、その箇所に防網を張るなどの墜落防止措置がなされているときは、この規定は適用されません。

この決まりは足場からの墜落および転落による労働災害が多発したことを受けて墜落防止措置の強化を図ることを目的としており、2015年に足場の組み立てに関する特別教育や点検、鋼管足場にまつわる改正があったのがはじまりです。

なお、会社や職人によっては「さぎょうゆか」「さぎょうしょう」のいずれかで呼ばれています。

足場の作業床における注意点

足場の作業床については、幅や床材間以外にもいくつか注意しなければならないことがあります。

例えば、墜落によって下で作業をする作業従事者に対して危険を及ぼす可能性がある場所の場合、足場の種類に応じて後述する労働安全衛生法第559条に則り、以下項目に沿った設備を取り付けます。

  • 丈夫な構造設備
  • たわみが起きる恐れがない
  • 著しい損傷や変形、腐食がないもの

参考:e-Gov法令検索 |労働安全衛生規則

なお、妻面にかかわる部分を除いた枠組み足場と、妻面を含む枠組み足場以外の足場には以下のような設備を取り付ける必要があります。

妻面にかかわる部分を除いた枠組足場
  • 交さ筋かい及び高さ15~40㎝以下の桟、もしくは高さ15㎝以上の幅木、またはこれらと同等以上の機能を有する設備
  • 手すりわく
妻面を含む枠組足場以外の足場
  • 高さ35~50cm未満以下の桟、またはこれと同等以上の機能を有する設備

また、上表の足場用墜落防止用設備を作業の性質上取り付けることが困難、または作業を進める上で臨時に取り外さなければならないときは以下のような対応が必要です。

  • 元請等の現場責任者と協議を行い許可を得る
  • 当該箇所への関係者以外の立ち入りを禁止する
  • 防網を張る、または墜落防止用具器具を安全に取り付けるための設備を設け、業者に墜落防止用器具を使用させる
  • 臨時に取り外した場合は作業終了事後、ただちに元の状態に復旧させる
  • 設置困難な場合は関係者以外立ち入り禁止措置を継続する
  • 元請け等の現場責任者等に報告する

他にもいくつかの定義が決められているので、詳細は中小建設業特別教育協会公式ホームページをご確認ください。

参考:東京労働局登録教育機関 一般財団法人中小建設業特別教育協会|【第1章】第1節 足場の定義①

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足場の作業床におけるポイント


足場は作業者の安全を考慮し、さまざまな点に注意しながら利用することが大切です。

ここからは足場の作業床におけるポイントを紹介します。

労働安全衛生法

労働安全衛生法とは、職場における作業従事者の安全と健康を確保すること、そして快適な職場環境を形成する目的で、1972年に労働基準法第5章から分離・独立して制定されました。

この法律では足場の材料や作業床についても以下のような規定を設けています。

第五百五十九条
事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならない。
2 事業者は、足場に使用する木材については、強度上の著しい欠点となる割れ、虫食い、節、繊維の傾斜等がなく、かつ、木皮を取り除いたものでなければ、使用してはならない。
出典:e-Gov法令検索|労働安全衛生規則

第五百六十三条
事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
出典:e-Gov法令検索|労働安全衛生規則

このように細かな規定が設けられていることから、足場を利用する際や組立、作業床の取付においては細心の注意を払うことが重要です。

安全衛生特別教育の概要と受講の必要性

労働安全衛生法の第6章59条3項では、事業者は危険または有害な業務で厚生労働省令で定めるものに作業従事者をつかせる際、厚生労働省の定めるところにより、当該業務に関する安全または衛生のための安全衛生特別教育(特別教育)を行わなければならないとしています。

安全衛生特別教育を受講する必要がある業務は以下の通りです。

  • アーク溶接
  • フルハーネス型安全帯を使用する業務
  • 高所作業車の運転
  • 小型車両系建設機械の運転など

安全衛生特別教育の方法は各事業所で行うほか、事業所外で行う方法があります。

内容については、安全衛生特別教育規定等において厚生労働大臣が科目・時間を定めています。

しかし、講師について資格要件等の規定はなく、教育科目について十分な知識・経験を有する人が選任されるのが一般的です。

以下に該当する人は、安全衛生教育の全部または一部の科目を省略することが可能です。

  • 技能教習修了等の上級の資格を有する人
  • その業務に関する職業訓練を受けた人

また、作業床が設置されている場合は、安全衛生特別教育は必要ありません。

参考:厚生労働省|特別教育
参考:労働安全衛生法 | e-Gov法令検索

作業床で起きた事故事例


ここからは作業床で起きた事故を紹介します。

日本で実際に起きた事故を把握し、細心の注意を払いましょう。

土木工事の法面の地すべり防止工事にて、ボーリングマシンを運搬する作業中に、荷を取り込む際に手すりを取り外した作業床の端から墜落

災害発生当日のボーリングマシンの運搬作業は、地上に置かれたボーリングマシンをバックホーで吊り上げて軌道の台車へと載せ、ウインチを用いて台車を作業床へ引き込もうとした際にボーリングマシンが作業床の端に引っかかり、引き込みがうまく行えなかった
そこで一度休憩を取り新たな方法を考えることにしたが、休憩を決めてから間もなく、作業床に残っていた一人の被災者が、手すりを取り外した作業床と台車の側面との間にできた開口部から墜落
地面までの中間の単管の支柱にあたり、顔面から後頭部にかけて単管が突き刺さり即死
被災者は防護服を着床し、また安全帯も装着していたが、使用はしていなかった


参考:厚生労働省|荷を取り込むために部分的に手すりを取外し、作業床の端から墜落

この事故は作業床の墜落防止措置が不十分であったことが要因により起きた事故です。
安全措置を怠ると大きな事故に繋がる可能性があるため注意しましょう。

高所作業で用意しなければならないもの


足場を利用する上では、作業床以外にも用意しなければならないものがあります。

ここからは、用意すべきものを3つ紹介します。

フルハーネス型安全帯

高所作業ではフルハーネス型安全帯の使用が必須です。

安全帯とは、ライフラインという補助用ロープと体を繋ぐ器具のことで、現在の建設現場ではフルハーネス型ではなく胴ベルト型が多く用いられています。

胴ベルト型は使い勝手や見た目が良いという特徴がある一方で、墜落時に体がくの字になり腹部を圧迫するという危険があります。

そのため、胴以外にも肩や太ももにベルトを巻くことができ、墜落時の衝撃を分散できるフルハーネス型の着用をおすすめします。

なお、中小建設業特別教育協会公式ホームページでは、フルハーネス型安全帯に関するよくある質問を閲覧できるページがあります。

フルハーネス型安全帯の使用方法や安全衛生特別教育についてはこちらのページをご覧ください。

参考:東京労働局登録教習機関 一般財団法人 中小建設業特別教育協会|よくあるご質問・回答【フルハーネス型墜落制止用器具特別教育】

手すり

高所作業では手すりの準備も欠かせません。

足場を組み立てるときはもちろん、高所作業では足場からの落下事故が多発しています。

そのことから、足場の種類に合わせて手すりわくを設置することも大切です。

厚生労働省では「労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定」
を公開しています。

手すりについても記載があるので、この機会にご確認ください。

参考:厚生労働省|労働安全衛生法令における墜 落防止措置と安全帯の使用に 係る主な規定

囲い・覆い

高所作業では、囲い・覆いも準備しましょう。

2m以上の高さがある高所作業では、作業床の端や開口部といった作業従事者が墜落する恐れのある部分に囲いを設けることが義務づけられています。

囲いが取り付けられない場所には防網を張り、作業従事者にはフルハーネス型安全帯の使用を促すことで墜落事故を予防できます。

また、覆いについても、作業床の端や開口部といった墜落の危険がある場所に取り付けることが義務づけられています。

労働安全衛生法第519条では「囲い、手すり、覆い等」と併記されているため、いずれかを設置することを押さえておきましょう。

参考:労働安全衛生規則 | e-Gov法令検索

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高所作業では作業床を必ず使用することに留意しよう

作業床は、高所作業を行う作業従事者の安全を守るために必要な設備です。

高所作業においては細かな決まりがありますが、これらは全て建設現場での事故を予防し、安心・安全に業務に取り組む目的で定められています。

作業床で起きた事故事例をきっかけに、今一度、業務に取り組む姿勢について振り返ってみてはいかがでしょうか。

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