建設業界の基礎知識

純工事費とは?工事原価との違いや工事価格との関係を解説

工事価格を決めるためには純工事費や間接工事費など、さまざまな項目があります。
とくに会計科目では、純工事費を含む工事原価について正確に理解しておく必要があるでしょう。

経理や経営に携わる方はもちろん、現場で働く方も工事にどれくらいの費用がかかっているのかを知ることは、工事の全体像を把握するのに役立つはずです。

本記事では工事価格の決定に必要な純工事費についてや工事原価との違い、工事原価の計上基準などを解説します

純工事費とは直接工事費と間接工事費の合計


純工事費は工事原価の一部で、工事の実施に直接必要な費用(直接工事費)に共通仮設費を加えた費用のことです。

直接工事費用とは、材料費や人件費など工事に直接かかる費用を指します。

対して、共通仮設費用は仮設事務所や電気水道設備といった、工事に必要な仮設物に関する費用のことです。

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純工事費の内訳


純工事費は、共通仮設費(工事を進めるために一時的に設置される仮設事務所や機械等の運搬費、準備や跡片付けなどの費用)と、直接工事費で構成されます。

ここでは、直接工事費について、ひとつずつ掘り下げて解説します。

直接工事費に含まれるものは、以下にあげる5つの費用です。

材料費

材料費は、建設工事に必要な各種材料の購入費用です。
コンクリートや鉄筋、木材や配管材料など、実際に工事現場で使用されるすべての建材が含まれます。

労務費

労務費は工事現場で働く労働者の賃金や給与で、職人や作業員の人件費が該当します。

経費

経費は工事の運営に必要な、そのほかの費用です。
経費には、以下の費用があてはまります。

  • 現場での管理費
  • 事務員や警備員の給与
  • 光熱費
  • 通信費
  • 特許使用料

外注費

外注費は工事に必要な人や物を、ほかの業者に依頼した際の費用です。
自社の作業員に支払う給与は労務費にあたり、外部企業の作業員への支払いは外注費に相当します。

原価計算では、材料費・労務費・経費の3つに分けて算出するのが一般的です。
しかし、建設業界は外注するケースが多く工事原価に占める割合も大きいため、原価計算では外注費も加えます。

機械費

機械費は、工事現場で直接使用した機械にかかった費用です。

費用には機械の整備や修理代、機械を動かす技術者の労務費などがあり、工事現場で仮設建物に使用した機械類の費用も含まれます。

純工事費と工事原価の違い


純工事費と工事原価は、建設工事における費用計算で重要な概念ですが、それぞれ異なる意味を持ちます。
純工事費は工事原価の一部で、直接工事費と共通仮設費の合計です。

一方、工事原価は工事全体の原価を意味し、純工事費に加えて現場管理費や一般管理費なども含まれます。
工事原価は建設工事に関わるすべての費用を含むため、工事の全体像を把握するために重要です。

工事原価には2つの計上基準がある


建設業における工事原価は、建設会計基準に従って計上します。
計上基準には工事完成基準と工事進行基準があるため、本章でそれぞれの計上方法や特徴の違いを確認してください。

工事完成基準

工事完成基準は、長期請負契約時に採用される基準です。

工事完成基準では工事完了時に売上と費用を計上し、それまでに発生した費用は未成工事支出金として記録されます。

未成工事支出金は、一般的な会計方法での売掛金と同様の扱いです。

工事完成基準での計上は会計上確実に処理できますが、工事完了まで利益が不明な点はデメリットでしょう。

工事進行基準

工事進行基準では、工事期間中に売上・経費を分散して計上する方法です。

工事収益総額、工事原価総額、工事進捗度の3つの観点から分散計上するため、信頼性の高い工事価格が見積れます。

こまめに会計処理を行うため、その時点での実際の工事コストと利益がわかります。
それゆえ、赤字がでにくい計上方法といえるでしょう。

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工事原価を計上する際に気を付けたい4つのポイント


ここでは、工事原価を計上するさいのポイントを解説します。
以下の内容を参考に、工事費用を正確に管理しましょう。

経費は現場別にわける

工事原価計上では、まず現場別に経費を仕訳します。
複数の現場を請け負っている場合、最終的には一括管理して会計処理を行います。

その前に、まずは各現場で発生している費用や利益を管理するため、現場ごとに経費を分けることが重要です。

現場を特定できない請求書は、各現場に平均して経費を分散します。

請求書の内訳を詳細にする

経費を現場別に仕訳したら、さらに細分化します。

現場別に分けた請求書を直接工事費と間接工事費の2種類に分けると、その後の細分化がやりやすくなります。

直接工事費は、以下の区分に細分化しましょう。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 機械費
  • 経費

管理できる範囲で細かく分け、内訳の精度を高めます。

人件費は1日あたり一人当たりで概算する

工事原価で大きく占める人件費ですが、請求書が発生しない項目となるので作業日報などで管理する必要があります。

日報には作業人員や時給、作業時間などを記載しますが、見直すことを踏まえてわかりやすく記載してください。

作業日報に必要事項を記載すれば、1日あたりの詳細な人件費の概算が可能になります。

共通経費を按分する

工事原価の計上では、共通経費の按分も行います。

経費を現場別に分類し、直接工事に関連するものと関連しないものに分け、可能な限り細分化してください。

細分化後も分けられなかった費用は、共通経費とします。

企業で一括管理されている倉庫整理の人員や、企業所有の機器の減価償却などは、共通経費にあたります。

共通経費は工事の規模や決められた比率に基づいて、各現場に振り分けてください。

工事価格の算出方法


工事原価や現場管理費、一般管理などの工事費用を積算すれば、工事価格が決まります。
積算とは、工事に必要なすべての費用を細かく計算することです。

積算は、以下の手順で行います。

  • 設計図や仕様書をもとに、必要な材料の種類と数量をリストアップ する
  • 市場価格や過去のデータを参考に材料や労働、機械の費用の単価を設定する
  • リストアップした数量と設定した単価をもとに以下の費用を合計する(費用には材料費や労務費、機械費などの直接工事費と、現場管理費や一般管理費などの間接工事費が含まれる)
  • すべての費用を合算して工事価格を決定

工事価格が決定したら見積書を作成し、クライアントに提示します。

純工事費がわかれば工事価格の仕組みがみえてくる

純工事費は、工事にかかった費用です。
純工事費は工事価格にも関係し、さらには企業の利益にも大きな影響をあたえるでしょう。
それゆえ、工事に携わる方には、とくに意識して欲しい項目のひとつです。

より大きな利益を意識して業務に臨めるように、本記事で紹介した純工事費や工事原価などへの理解を深めてください。

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