建築・建設業界ではヤング係数という言葉を見聞きすることがありますが、意味を深くまで調べたことがない方が多いのではないでしょうか。
今回はヤング係数の概要・計算方法・材料ごとの値の違いを紹介します。
ヤング係数はどのようなものなのかを把握し、今後の業務に役立てましょう。
ヤング係数とは
物体の変形のしやすさ、またはしにくさを計測するための指標のことをヤング係数と呼びます。
ヤング係数が大きいほど硬く、伸びにくいあるいは変形しにくいと判断できます。
逆にヤング係数が小さければ小さいほど柔らかく伸びやすいので、変形しやすいことが値から判断できます。
名前の由来はイギリスの物理学者「トーマス・ヤング氏」が定義したことがきっかけで、ほかにも以下のような言葉が使われることもあります。
- ヤング率
- 縦弾性係数
- 弾性係数
- 弾性率
なおヤング係数は3つの単位を使って表記し、建築業界では「N/㎟」を使用するのが一般的です。
- N/㎟
- MPa
- GPa
ヤング係数比との違い
混同されやすい言葉にヤング係数比という言葉がありますが、これは鉄筋・コンクリートそれぞれのヤング係数の比率を表す指標のことです。
ヤング係数と類似しているもののまったく異なる意味であることを押さえておきましょう。
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ヤング係数の計算方法
ヤング係数は応力とひずみが比例関係にある領域とされています。
この応力とひずみの比例関係はフックの法則と同じことから、方式を使用することで算出可能です。
フックの法則の方式は以下のとおりです。
f(力)=K(定数)×X(伸び)
上述した方式をヤング係数の計算方法に当てはめると以下のとおりです。
E(ヤング係数)=σ(応力)/ε(ひずみ)
応力・ひずみの関係性
応力は物体に対して外から力が加わった際に生まれる内力のことを、一方ひずみは外から物体に力が加わる際に発生するものを指します。
例えば金属の試験片を使用した場合、試験片を引き延ばす力が一定以上加わるとひずみも同様に加わり、試験片を元の形に戻すことができなくなります。
元の形に戻らなくなる境目を降伏点と呼び、この降伏点を超えるとフックの法則が成立しなくなります。
降伏点を超えた範囲を塑性域と呼びますが、この塑性域を超えるとひずみがさらに大きくなり、下降伏点に到達します。
下降伏点を超えてもさらに力を加えると応力が最大になり、最大応力と呼ばれる状態に達します。
最大応力がかかるポイントは引張強度であり、この引張強度に達すると応力に耐えることができず、金属の試験片はやがて破断する仕組みです。
このように応力とひずみの関係性は引き延ばす力の大きさによって変化すると考えられています。
ヤング係数は材料によってことなる点に注意
建築・建設業界で使われる材料には硬いものや性状が異なるものがあり、ヤング係数の値も変動します。
ここからは業務にすぐ役立てられるよう、建築・建設業界で多用する材料ごとのヤング係数を紹介します。
コンクリート
コンクリートは金属等とは違い、ヤング係数の値が一定ではありません。
この場合は方式を用いて値を求める必要があります。
Ec(ヤング係数)= 3.35 × 10^4 × ( γ / 24)^2 × ( Fc / 60 )^(1/3)
なお 方式内の「γ」はコンクリートの単位体積重量を指し、「Fc」はコンクリートの設計基準強度を指します。
強度が大きいほどヤング係数も大きくなり、一般的なコンクリートのヤング係数は22600N/㎟とされています。
木材
木材は種類が豊富なため、強度もヤング係数の値もそれぞれ異なる点に注意が必要です。
木の値はおおむね7000N/㎟〜12000N/㎟とされています。
ただし木は植物であり、種類に限らず気温・天候・樹齢年数などによってヤング係数が異なるものと考えられます。
机上の計算だけでなく木材を取り扱った経験に基づいた技術で取り扱うことが大切と言えるでしょう。
鋼・アルミ
鋼やアルミといった金属類は、強度が変化しても値に変化はなく一定です。
例えば鋼材の値はおよそ205000N/㎟、アルミは7000N/㎟とされています。
このように同じ金属であっても種類によって大きく値が異なるので、建材として使用する材料のヤング係数は押さえておくと作業がスムーズに進むでしょう。
ヤング係数の計算方法を押さえよう
ヤング係数は材料の硬さを示す指標の一つです。
主に構造計算に用いることが多く、建築・建設業界では日常的に多用されているのが特徴です。
建築・建設業界に携わる人は、ヤング係数の意味やヤング係数比との違い、現場で使用する材料のおおまかな数値を本記事で押さえておくことをおすすめします。
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