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コンクリート診断士は2001年に誕生した比較的新しい資格のため、ほかの資格に比べて情報があまり出回っていません。
建設業界で長く働く方でも「コンクリートに詳しくて難しい資格」と理解していても、それ以上詳しく説明できる方はあまりいないのではないでしょうか。
そのため、コンクリート診断士に挑戦したいと考えても、どのような計画を立てていいのか迷っている方もいるかと思います。
本記事ではコンクリート診断士について、試験の内容や難易度、試験対策などを解説します。
コンクリート診断士に興味がある方は、本記事を参考に試験についての理解を深め、合格への助けとしてください。
コンクリート診断士とは
コンクリート診断士は、公益社団法人「日本コンクリート工学会」が認定する資格で、コンクリートの診断や維持管理の知識・技術・倫理観を保有していると認められたものに与えられます。
民間資格ですが公的機関でも認められており、一部では公共事業の工事発注要件にもあげられています。
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コンクリート診断士試験の概要
昨今、古くなった構造物を取り壊して新設するよりも、維持管理が重要と認識されてきています。
コンクリート構造物の維持管理が重要との流れを受け、コンクリートの診断・維持管理に関する幅広い知識を持った技術者を養成し社会に貢献することを目的に、コンクリート診断士制度が誕生しました。
本章ではコンクリート診断士試験について、詳しく解説します。
コンクリート診断士の受験資格
コンクリート診断士になるには、年1回実施のコンクリート診断士試験に合格しなければなりません。
受験するためには資格や学歴、実務経験などの要件を満たす必要があるため、資格試験としてはハードルの高い要件となっています。
受験には以下のいずれかの資格を保有するか、学歴および実務経験が必要です。
資格または学歴 | 必要なコンクリート技術関係業務の実務経験年数 | ||
---|---|---|---|
資格 | コンクリート主任技師 コンクリート技士 1級建築士 技術士(建設部門) 技術士(農業部門ー農業土木または農業農村工学) 土木学会認定(特別上級・上級・1級)土木技術者 建設コンサルタンツ協会認定RCCM(鋼構造およびコンクリート) プレストレストコンクリート工学会認定コンクリート構造診断士 |
いずれか登録していること | 実務経歴の記入および勤務先の証明などは必要ない |
1級土木施工管理技士 1級建築施工管理技士 |
監理技術者資格者証を保有 | ||
学歴 | 大学 高等専門学校(専攻科) |
コンクリート技術に関する科目を履修した卒業者 | 4年以上 |
短期大学 高等専門学校 |
6年以上 | ||
高等学校 | 8年以上 |
受験するには講習eラーニングは必須
コンクリート診断士の受験には、コンクリート診断士講習eラーニングを受ける必要があります。
講習は2年間有効で、前年度受講した方は本年度の受講は免除されます。
前々年度以前に受講した方は再度受講する必要があるので、注意してください。
受講時間は9時間(基礎編:約5時間・応用編:約4時間)で、費用は23,000円(税込)です。
申し込みは、日本コンクリート工学会の公式サイトから行ってください。
コンクリート診断士試験の内容
コンクリート診断士試験は、四肢択一問題と記述式問題の2つが出題されます。
試験では、コンクリート診断士に必要な以下の知識・技術が問われます。
- 変状の種類と原因
- 劣化の機構
- 調査手法
- 劣化予測・評価および判定基準
- 対策の種類・補修・補強工法
- 建築物および土木構造物の診断の考え方・調査項目
- 技術および基準類の変性
合格基準は70%の正答率とされていますが、択一式・記述式ともに「足きり点」があると思われます。
それゆえ、四肢択一問題と記述式問題の2つを合わせた正答率が70%を越えていても、どちらかひとつの正答率が60%以下の場合は不合格になるようです。
コンクリート診断士試験の日程
コンクリート診断士試験までの流れを、2024年度を参考に表にしています。
(※2024年度試験の申し込みは修了しています)
受験を考えている方は、勉強計画を考える際に参考にしてください。
2024年度講習eラーニング受講申し込み期間 | 2023年12月4日~2024年2月5日 |
2024年度講習eラーニング受講 | 2024年4月5日~5月20日 |
2024年度試験受験申し込み | 願書販売:2024年4月1日~5月10日 願書提出:2024年4月1日~5月22日 |
試験日程 | 2024年7月21日 |
合格発表 | 2024年9月中旬頃予定 |
コンクリート診断士試験情報
ここでは、コンクリート診断士試験について、難易度や合格率、必要な学習時間を解説します。
試験の難易度や必要な学習時間を参考に、試験合格に向けた計画を立ててください。
試験の合格率
2023年におけるコンクリート診断士試験の合格率は、15.7%でした。
2023年の試験だけが低い合格率というわけではなく、過去5年を見ても15%半ば〜16%で推移しています。
高度な知識や技術が要求されることや合格率が低いことからも、難易度の高さがうかがえます。
試験実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 3,412人 | 535人 | 15.7% |
2022年 | 3,474人 | 557人 | 16% |
2021年 | 3,611人 | 576人 | 16% |
2020年 | 2,973人 | 484人 | 16.3% |
2019年 | 4,243人 | 663人 | 15.6% |
試験の難易度
コンクリート診断士試験は、難易度の高い試験といえます。
コンクリート診断士試験の合格率は15%〜16%です。
難易度が高いといわれる宅地建物取引士が15%〜17%前後で、1級建築士が16%〜17%となっています。
以上のことから、コンクリート診断士試験の難易度は高く、計画的に勉強する必要があるでしょう。
また、広範な専門知識を要求されるだけでなく、受験要件を満たすのも難しいため、簡単に受かる試験ではないといえます。
合格に必要な学習時間
合格率が同じレベルの宅地建物取引士試験では、合格するために必要な勉強時間は300時間とされています。
そのため、コンクリート診断士についても、宅地建物取引士と同じくらいの300時間程度が必要でしょう。
コンクリート診断士試験では、選択肢問題に加えて記述式の問題が出題されます。
記述式問題では正確な理解が必要な上に、1,000文字以内で記述しないといけないため、論理的な文章力や構成力を磨く必要もあるでしょう。
そのため、資格試験に慣れていない方なら、300時間では足りない可能性があります。
コンクリート診断士!合格するための試験対策
コンクリート診断士試験で出題される四肢択一問題では、以下の5分野から出題され、計算問題も含まれます。
- 変状
- 劣化
- 調査手法
- 評価・判定
- 補修・補強
記述式問題では、診断士の資質や役割を問う問題や、構造物の診断・維持管理といった基本的な知識に関する問題が出題される傾向です。
四択問題対策
四肢択一問題はマークシート形式で、40問出題されます。
問題の出題形式は一般的な資格試験と変わらないため、勉強方法も同じように進めて大丈夫です。
具体的には、正攻法に過去問を繰り返し解いていきましょう。
過去10年分の問題を5周以上解き、全問正解を目指せばおよその理解が深まるはずです。
また、正解がわかるだけでなく、不正解の選択肢について「なぜ誤りなのか」を、自分の言葉で説明できるようになれば相当なレベルといえます。
コンクリート診断士試験では記述式問題が重要といわれますが、それは四肢択一問題で合格点を狙えるレベルでの話です。
そもそも四肢択一問題に自信がない方は、しっかりと四肢択一問題対策を行い、基礎を固めてください。
記述問題対策
記述式問題ではコンクリート診断能力を問う問題について、1,000文字以内で解説しなくてはいけません。
当然知識が断片的では論理的に答えられないため、基礎を理解した上で臨む必要があります
記述問題のコツとして、以下にあげるコンクリート診断の流れを意識して構成をつくりましょう。
- 外観の把握
- 調査
- 原因の推定
- 劣化の予測と評価
- 補修補強の要否の判定
- 対策の実施と記録
出題されそうなキーワードや用語の定義を、ノートに整理しておくのも有効です。
実際に記述問題を解くときは、解答を先に見てどのように解答すればいいのかを確認し、その後自分で答案を書いてみましょう。
まずは、どのような解答をすればいいのか、イメージできるようにしてください。
注意点として、専門用語は正確に覚え、誤字や脱字にも気を配りましょう。
不正確な用語や誤字・脱字は減点されてしまいます。
独学でコンクリート診断士試験に合格できる?
独学でコンクリート診断士試験に合格した人は、珍しくありません。
SNSやブログなどでも、多くの方が独力で試験に合格したと報告しています。
ただし、難易度が高く合格率も低いため、独力で試験を突破するのは簡単ではありません。
とくに記述式問題は、自分の回答が正解かどうか簡単に判断できないでしょう。
また、300時間以上の勉強時間が必要といわれるため、短期集中型の学習では難しく、長期的な学習計画を立てる必要があります。
何から手を付ければいいかわからない方は、試験対策の教室や通信講座を検討した方がいいかもしれません。
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コンクリート診断士の仕事内容
コンクリート診断士は、竣工済み・施工済みの構造物に使用されているコンクリートの評価や、劣化状況の点検・診断を行い、補修補強計画の検討も行います。
コンクリートは時間の経過とともに劣化しますが、コンクリート品質規格の変遷や施工条件、立地条件などを考慮して適切な処置を行えば、寿命を延ばすことが可能です。
最近では、劣化した構造物の補修工事の需要が増加しているため、コンクリート診断士はさまざまな業界から求められている資格です。
コンクリート診断士の年収はどれくらい?
コンクリート診断士の年収に関する公的なデータはありませんが、一般的に年収は500万円〜700万円といわれています。
実際に求人サイトで「コンクリート診断士」を検索すると、400万円~700万円の求人が多く出てきます。
厚生労働省が提供する職業情報提供サイト「jobtag」では、建設・土木作業員の平均年収は411万1,000円とされているため、コンクリート診断士の給与は高いといえるでしょう。
参考:職業情報提供サイト jobtag
コンクリート診断士が活躍する職場
コンクリート診断士の資格を取り実務経験を積めば、キャリアアップや転職などの場面で強みになります。
そのため、コンクリートに関する幅広い知識と技術を武器に、さまざまな分野で活躍できるでしょう。
とくに以下にあげる業界では、コンクリート診断士に対するニーズが高い傾向です。
- 建設会社・ゼネコン
- 建設コンサルタント会社
- 公共機関
- 試験・研究機関
- コンクリート製品メーカー
- 診断補修専門会社
- セメント会社
- 設計事務所
コンクリート診断士は将来性のある資格
コンクリート診断士は、今後も需要が高い資格といえます。
日本では広い範囲でコンクリートが使用され、ストック量は100億立方メートルを超えており、老朽化対策や適切なメンテナンスが求められています。
しかし、コンクリート診断士の数は少なく、コンクリートの評価が追いつかない状況です。
そのため、さまざまな業界がコンクリート診断士を必要としています。
さらに、コンクリート診断士資格に対する信頼性も日増しに高まっているため、将来も活躍が期待できます。
国土交通省では公共工事の品質を保つため、民間団体が管理する高い技術を持つ資格について活用できるように制度を変更しました。
2014年に「国土交通省登録資格」制度を導入し、コンクリート診断士資格も登録されています。
公共工事の中には「コンクリート診断士」を発注要件とする案件も増えており、社会的な評価は高まっています。
以上のことから、コンクリート診断士はますます必要とされる資格といえるでしょう。
参考:国土交通省「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録簿」
コンクリート診断士は難関資格!適切な準備で突破しよう
コンクリート診断士はコンクリートの状態を診断し、建築物の維持管理を行うための資格です。
コンクリート診断士になるためには資格試験を受けなければなりませんが、難易度が高く合格率は低いものとなっています。
しかし、独学でコンクリート診断士試験を突破した方もいるため、計画的な勉強計画を立てれば、手の届く試験といえるでしょう。
さまざまな業界からの信頼もあり、需要のある資格ですので、ぜひこの機会に目指してみてはいかがでしょうか。
有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。