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建設業界はこれまで「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが強く、若い人材から敬遠されがちでした。
しかし近年、この業界は「新4K(給与・休暇・希望・格好いい)」を掲げて大きく変わろうとしています。
政府や企業が一体となって労働環境の改善やイメージアップに取り組み、高い給与や十分な休暇が取れ、将来に希望を持て、仕事が格好いいと思える産業へと改革が進んでいます。
本記事では施工王としての視点から、新4Kが示す具体的な内容と建設業界の未来への影響について深掘りして解説します。
「新4K」とは?建設業の変革の背景
「新4K(給与・休暇・希望・格好いい)」の意味と意義
建設業界で言う「新4K」とは、「給与が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」の新3Kに「格好いい」を加えた合言葉です。
もともとは2015年(平成27年)頃に当時の国土交通大臣と経団連が掲げた新3K(給料・休日・希望)が出発点で、長らく定着した「きつい・汚い・危険」という旧3Kイメージからの脱却を目指したものでした。
その後、新3Kを加速させるために「きれい(清潔で働きやすい)」を加えて新4Kが誕生し、現在は業界の魅力を高めるため、「きれい(清潔で働きやすい)」に代えて「かっこいい」を加えた「新4K」として打ち出されています。
これは単に言葉のスローガンではなく、建設業が若者に憧れられる産業になることを目指したメッセージです。
建設業界の現状と課題
新4Kが提唱される背景には、労働力人口の減少と高齢化があります。
政府の試算によれば、日本の生産年齢人口(働き手の世代)は2040年までに20%減少するとされ、建設業では人手不足がますます深刻化すると見込まれています。
実際、建設業就業者の年齢構成を見ると、55歳以上が約35.5%を占める一方、29歳以下はわずか12.0%にとどまっており、業界の高齢化が顕著です。
参考:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf
ベテラン層の大量退職が迫る中で若い世代の入職が進まなければ、将来的に現場を支える人材が不足してしまう恐れがあります。
しかし長時間労働や厳しい作業環境など「きつい・危険」といった従来の3Kイメージが根強ければ、若者は建設業に魅力を感じません。
要するに、待遇や働き方を抜本的に改革し「魅力ある産業」に生まれ変わることが急務なのです。
こうした課題認識のもと、政府は建設業の働き方改革を強力に推進しています。
2024年4月から建設業にも時間外労働(残業)時間の上限規制が適用され、「2024年問題」と称される転換点を迎えました。
同時に、建設業法や入札契約適正化法など関連法の改正(いわゆる「第3次担い手三法」)が成立し、適正な工期設定や処遇改善、生産性向上など多角的な施策が進められています。
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「給与」—建設業の賃金改善は本当に進んでいるのか?
平均給与の推移と他業界との比較
建設業界は長らく「賃金水準が低い」と言われてきました。
しかし、データで見ても、建設業の平均賃金はこの10年ほどで着実に上昇しています。
建設業生産労働者の平均賃金推移を見ると、2012年には359万円だったのが、2023年(令和5年)には432万円まで上昇しています。
一方で、同期間の全産業平均(非正規雇用を除く)は508万円であり、依然として他業種より低い水準にとどまっている状況です。
参考:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf
上記の数字が示すように、2010年代半ば以降に賃金が大きく伸びています。
背景には、東日本大震災の復興需要や東京五輪に向けた建設ラッシュで人手不足が顕在化し、国土交通省が公共工事設計労務単価(公共事業における労務費の基準となる単価)を毎年引き上げてきたことがあります。
公共工事設計労務単価は12年連続で引き上げられており、2020年代に入ってからも建設技能労働者の賃金水準を底上げする効果を発揮しています。
その結果、大手ゼネコンや中堅建設会社では平均年収が600万円〜900万円台と他産業より高い水準となっているケースも出てきました。
一方で中小企業や現場作業員レベルでは依然として全産業平均を下回る水準にあり、業界内での格差も課題です。
総括すると、建設業の給与は「低い」とのイメージは徐々に変わりつつあり、統計上も他業界との差は縮まりつつあるというのが現状になります。
給与向上のための具体的な施策
賃金アップを実現するため、業界と行政は様々な施策に取り組んでいます。
まず国主導の取り組みとして注目されるのが、2024年に改正・成立した建設業法等で導入された「標準労務費制度」です。
これは工事請負契約の中で人件費(労務費)の適正額を国が示し、極端に低い単価での発注が行われないようにする仕組みです。
重層下請け構造の末端に至るまで適正な賃金が行き渡ることを狙いとしており、格差につながる受注の防止策と併せて、技能者の処遇改善につなげる狙いがあります。
一方現場レベルで重要なのは、技能に応じた正当な評価と報酬です。
企業側では現在、資格取得支援や手当の充実が進んでいます。
例えば施工管理技士や建築士などの国家資格を取得した際に祝い金や資格手当を支給する企業が増えており、社員の自己研鑽を後押ししています。
資格や技能を積むことでキャリアパスが開け、それがダイレクトに給与にも反映される仕組みが整えば、「頑張れば報われる」業界として魅力が高まるでしょう。
新4Kの「給与」が良くなるよう、制度面・企業風土の両面から改革が進んでいるのです。
「休暇」—働きやすさの改善と労働環境
長時間労働の実態と改善の取り組み
建設業界の大きな課題であった長時間労働と休日の少なさも、近年は改善への取り組みが本格化しています。
特に問題視されたのが週末の休みです。
2021年時点の調査では、建設業労働者で完全な週休2日(4週8休)を取得できていた人は全体の2割程度に過ぎませんでした。
逆に約4割の労働者は4週4休以下、つまり週1日程度しか休めていなかったことになります。
参考:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf
しかし、こうした長時間労働の是正に向けて業界は大きく舵を切り始めました。
国土交通省は直轄工事や自治体の公共工事で週休2日を原則とする方向を打ち出し、その結果公共工事では週休2日制の導入率が90%を超えるまでになっています。
参考:https://www.mlit.go.jp/tec/content/001730574.pdf
2024年からは改正労基法に基づく罰則付き残業規制もスタートし、もはや週に1日は必ず休む、可能なら2日休むのが新たな常識になりつつあります。
加えて、福利厚生制度の充実にも力が入っています。例えば、ある建設会社では社員がリフレッシュ休暇を取得しやすいように長期休暇制度を設け、プロジェクト完了後に連続休暇を取れる仕組みを導入しています。
また別の企業では、現場作業員が快適に休息できるよう作業所に空調完備の休憩室や仮眠室を整備したり、現場近くの宿舎を個室・高速Wi-Fi付きの快適なものに改装したケースもあります。
こうした細やかな施策が現場のモチベーション向上につながり、「働きやすい建設現場」の実現に寄与しています。
上記のように、休暇日数の確保から有給取得、福利厚生や業務効率化まで多面的に働く環境の改善が進んでいます。新4Kの「休暇あり」を実現し、建設業でもワークライフバランスを保てることを示すことで、現職者の定着率向上や新規人材の参入促進につなげようとしているのです。
「希望」—若者にとっての建設業の魅力
キャリアパスとスキルアップの機会
新4Kの三つ目のキーワードである「希望」とは、将来に希望が持てる産業であることを意味します。
若者にとって希望が持てるとは、すなわち明確なキャリアパスがあり、自身の成長や活躍の場が約束された業界であるということです。
建設業界では今、そのキャリアパスがより開けたものになりつつあります。
まず、建設業には多彩な職種とステップアップの仕組みがあります。
例えば施工管理技士や建築士などの資格を取得すれば、現場責任者や監督として活躍する道が開けますし、経験を積んでいけばゆくゆくはプロジェクトマネージャーや会社の経営層になることも可能です。
昨今の人材不足も相まって、若手が早くから重要なポジションを任される傾向も強まっています。
20代で現場代理人(現場全体の責任者)を務めるケースや、30代で会社の中核を担う人材に成長する例も珍しくなくなりました。
実力と意欲次第で年功序列に関係なく昇進できる企業も増えており、「頑張れば上に行ける」という希望が持てる環境になりつつあります。
さらに業界全体で若手育成プログラムの充実も進んでいます。
国や自治体が産学連携で建設業の魅力発信やインターンシップ拡充を図っており、建設系の学科に在籍する学生に対して現場体験の場を設ける取り組みも活発化しています。
こうした下地が整えば、「この業界で長くキャリアを積んでいける」という安心感が生まれ、ひいては若い人たちが将来設計を描きやすい業界になるでしょう。
新4Kの「希望」は、まさに人々が将来に夢や目標を持てる建設業への転換を示しているのです。
IT・DXの活用と新しい働き方
建設業における「希望」はキャリアだけでなく、仕事の内容そのものの変化にも表れています。
従来、建設現場の仕事というと「力仕事・肉体労働」のイメージが強かったかもしれません。しかし今やIT・DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用によって、建設現場の働き方は大きく様変わりしつつあります。
例えば、BIMやCIMといった3次元モデル技術の普及は、施工の進め方を劇的に進化させています。
建物の詳細な3Dモデルを用いて設計段階から関係者が情報を共有することで、施工中の手戻りやミスが減り、現場監督もタブレット上で図面や工程を直感的に把握できるようになりました。
紙の図面と睨めっこしていた時代に比べ、若いデジタル世代にとって馴染みやすい仕事環境が整いつつあるのです。
また、ドローンやAIの活用も注目に値します。測量や点検はこれまで人が高所や危険箇所に赴いて行っていましたが、今ではドローンを飛ばして空撮し、その映像をAIで解析して寸法や不具合をチェックできるようになりました。
これにより、危険で敬遠されがちだった作業をテクノロジーが肩代わりしてくれています。
こうした流れは若者にとって大きな魅力となるでしょう。
最先端のテクノロジーに触れながら社会インフラを作り上げていく仕事は、まさに未来志向で希望が持てるキャリアと言えます。
「古臭い手作業ばかりではなく、デジタルと融合したスマートな働き方ができる。」この事実が広まれば、「建設業って実は面白そうだし将来性がある」と感じる若者も増えてくるのではないでしょうか。
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「格好いい」—建設業のイメージ変革
PR戦略とメディア活用
最後のキーワード「格好いい」は、一見抽象的ですが極めて重要な要素です。
給与や休暇が整い希望ある職場になっても、「なんとなくダサい・泥臭い」というイメージのままでは若者の心は掴めません。
そこで業界を挙げて進められているのが、建設業のイメージアップ戦略です。
近年はSNSやウェブを活用した積極的なPRが目立っています。
建設会社や業界団体がInstagramやX(旧Twitter)、YouTubeなどで現場の魅力を発信し始めています。
例えば、現場で働くやりがいや達成感、最新技術の導入事例などを写真や動画で紹介し、建設業のポジティブな側面を強調する取り組みがあります。
完成した建物の壮大な姿や、職人技が光る施工シーン、安全対策に真剣に取り組む様子などを発信することで、「こんなに社会に貢献していてやりがいがあるんだ」「思ったよりスタイリッシュで最先端だ」と感じてもらう狙いです。
実際、SNSの即時性と拡散力は強力で、そうした投稿をきっかけに業界への見方が変わったという若者もいます。
最新の現場技術とデザインの進化
「格好いい」と感じてもらうためには、PRだけでなく仕事そのものが洗練されていることも大切です。
幸いなことに、現代の建設業は技術革新により様々な面でスタイリッシュに進化しています。
まず挙げられるのが最先端技術の導入です。前述のようにBIMやドローン、AI、ロボットなど尖った技術が現場で活用されるようになり、建設現場はハイテクの塊になりつつあります。
ヘルメットに装着したウェアラブルカメラで現場と遠隔オフィスを繋ぎリアルタイムで指示を仰ぐ、といった光景はもはやSFではなく現実のものです。
まさに「建設現場=泥臭い」という従来のイメージを覆すテクノロジーの力が、格好良さを演出しています。
まとめ
「新4K」が示す「給与・休暇・希望・格好いい」という四つのキーワードは、いま建設業界が未来に向けて成し遂げようとしている変革の指針です。
本文で見てきたように、給与面では統計に表れるほど確かな賃金上昇が進み、長時間労働の是正や週休2日制の普及によって休暇環境の改善も実現しつつあります。
もちろん、すべてが理想通りに進んでいるわけではありません。
中小企業では人手不足やコスト制約から十分な給与アップ・休暇確保が難しいケースも残っていますし、現場の慣習を変えるには時間がかかる部分もあります。
しかし、新4Kという明確なビジョンが共有されたことで、業界全体が「働く人に選ばれる建設業」に生まれ変わろう、と本気で動き出したことは間違いありません。
その本気度は国の政策から現場の取り組みまであらゆるレベルに浸透しており、少しずつではありますが確実に成果が現れています。
これから建設業界に飛び込もうと考えている皆さんも、ぜひ前向きに検討してみてください。
建設業の未来は明るく、そしてあなた自身がその未来をつくる担い手となるのです。
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