建設業ニュース

建設業団体と国土交通省が民間発注者に求める「民間請負契約約款」活用とは

民間工事の現場で、 「契約書はあるのに、 揉める」 「追加工事や資材高騰の話が進まない」 といった声は少なくありません。 背景には、 発注者・受注者の力関係が契約条項に反映されやすいという“民間工事ならでは”の構造があります。

こうした状況を受け、 国土交通省と建設業主要3団体が共同で、 民間発注者へ「民間請負契約約款」の活用を呼びかけるリーフレットを作成・公開しました。

施工王編集部として、 本稿ではリーフレットの要点、 約款改正の中身、 そして建設業で働く人のキャリアにどう効くのかを、 ニュース以上に掘り下げて整理します。

なぜ民間工事の契約がいま注目されるのか

民間工事では契約条件が“個別最適”になりがちです。 その結果、 負担の偏りや交渉の停滞が現場に跳ね返ります。

片務的な契約が現場にもたらすもの

建設工事の請負契約は、 建設業法上「当事者が対等な立場で公正な契約を締結し、 誠実に履行する」ことが原則です。 とはいえ民間工事では、 発注者側が用意した独自契約書や、 標準的な約款から逸脱した条項で進むケースも現実に存在します。

このとき現場で起きやすいのが、 (1)追加・変更の手続が曖昧なまま工事が進む、 (2)資材高騰や供給不足など外部要因のリスクを受注者側だけで抱える、 (3)工期の遅れが“誰の責任か”で対立する、 という構図です。

特に、 契約締結段階で「変更が起きたときの協議の入り口(申出)」や「協議のルール」が弱いと、 現場は“決められないまま走る”状態になり、 施工管理・工務が矢面に立ちます。

国土交通省のガイドラインも、 受発注者間の取引の適正化を通じて、 責任と役割分担の明確化や適正施工の確保につながることを明確にしています。 つまり契約の整備は、 単なる書類仕事ではなく、 品質・安全・工程・原価管理の土台です。

調査が示した実態と、連携が動いた理由

今回の動きの直接の引き金は、 国土交通省が公表した調査で、 民間請負契約約款によらない独自契約書の使用割合が「発注者で約52.9%、 受注者で約23.9%」と示された点です。 この数字が意味するのは、 「標準(=共通言語)」よりも「自社・自案件仕様」が優勢になっている現状です。 もちろん、 工事の種類やスキームによってカスタマイズが必要な場面はあります。

しかし、 標準から離れるほど“どちらが何を負うか”の解釈が割れやすくなり、 結果として紛争コストが増えます。 国土交通省の定める「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」は、 民間請負契約約款に沿った契約書で締結することを基本とし、 過大な負担を負わせる片務的内容は違反の可能性があるとして慎むべきだと位置付けています。

そこで、 国土交通省と日本建設業連合会、 全国建設業協会、 全国中小建設業協会が連名でリーフレットを作成し、 民間事業者・施主に理解と協力を求める方針を明確にしました。

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国土交通省と建設業主要3団体が「民間発注者」へ伝えたいこと

今回の連名リーフレットは、 受注者向けの周知に留まらず、 発注者側の意思決定を変える狙いが明確です。

リーフレット作成の目的は「共通言語」を民間市場へ広げること

全国建設業協会の案内文は、 民間請負契約約款が十分に活用されていない状況を踏まえ、 「民間事業者・施主の皆様にご理解、 ご協力をいただくためのリーフレット」を作成し、 今後さまざまな場面で活用していくとしています。

日建連のニュースリリースでも同趣旨が繰り返され、 国土交通省と団体が「官民を挙げて普及・定着を目指す」メッセージが読み取れます。

ここで重要なのは、 契約の適正化が「施工者保護」だけでなく、 発注者にとっても“工事を成功させるためのインフラ”だと再定義されている点です。 国土交通省が公表する標準契約約款のページでも、 当事者間の力関係による片務性問題が、 建設業の健全な発展や施工の適正化を妨げるおそれがあることが説明されています。

つまり本件は、 トラブル回避の啓発に留まらず、 民間工事における“標準運用”を社会実装する取り組みです。

担い手確保・処遇改善と契約はつながっている

発注者・受注者間ガイドラインは、 契約の適正化が最終消費者の利益につながるだけでなく、 若年入職者の減少や高齢化といった構造問題を踏まえ「処遇改善等を通じて若年層の入職を促進することが必要」と述べています。

さらに2025年末にかけては、 建設業の担い手確保に向けた制度改正が一段と進み、 契約段階で適正な労務費(賃金の原資)を確保し、 技能者の賃金へつなげる方向が明確になりました。

国土交通省の資料は、 書面契約の徹底に加え、 契約へのコミットメント条項の積極導入、 技能者への適正賃金支払いの確認推進などを掲げています。

この流れを見ると、 民間発注者への呼びかけは「価格」や「工期」を巡る対立を抑えるだけでなく、 現場の働き方・処遇を底上げし、 結果的に“良い人が集まる産業へ転換する狙いが含まれているといえます。

リーフレット内容を読み解く

表面は“なるべく短く、 刺さる言葉”で民間発注者に伝え、 裏面で改正点を整理する二層構造です。

表面が示す要点は「対等」 「紛争予防」「法令違反の防止」

リーフレット表面は、 民間事業者・施主に向けて「民間請負契約約款を是非ご活用」するよう呼びかけています。

表面の核は、 国土交通省のガイドラインにより「民間請負契約約款に沿った契約書での締結が基本」とされる点です。 片務的内容は建設業法違反の可能性があるため慎むべき、 という整理です。

そのうえで、 約款を使う意義を「契約当事者の対等性確保」 「紛争の未然防止・解決」「法令違反の防止」という形で明示しています。

リーフレットの要点 現場で効く場面 施工管理・工務の実務で変わること
対等性の確保 追加変更・検査・引渡しの協議 合意形成の根拠が「口頭」から「条項」に移る
紛争の未然防止・解決 責任範囲の争い、工程遅延 記録・書面化が標準になり、判断が早くなる
法令違反の防止 条項改変・一方的負担 監査・指導への耐性が上がる

「民間請負契約約款」とは何か

リーフレットは注記で、 民間請負契約約款を「中央建設業審議会が作成した民間建設工事標準請負契約約款、 またはこれに沿った標準的な約款(例:民間(七会)連合協定工事請負契約約款等)」と説明しています。

ここで登場する中央建設業審議会は、 建設業法に基づき標準約款を作成し、 その実施を当事者へ勧告する枠組みの中心です。 国土交通省の説明でも、 民法の請負規定だけでは不十分で紛争原因になり得ること、 力関係による片務性が施工適正化を妨げるおそれがあることから、 標準約款が整備されてきた経緯が示されています。

標準約款(民間工事)は少なくとも「甲」「乙」があり、 甲は「民間の比較的大きな工事」、 乙は「個人住宅建築等の民間小規模工事」を念頭に置いた標準約款であると明記されています。

リーフレット裏面が示す主な改正内容

改正は「適正な労務費」 「価格変動・変更協議」「内訳の透明化」を軸に、 “契約で担保する範囲”を広げています。

請負代金内訳書の項目拡充が意味すること

裏面では、 第三次担い手3法の全面施行 (2025年12月12日)等を受け、 民間建設工事標準請負契約約款に必要な改正が行われた、 と整理されています。

最も分かりやすい変更が「請負代金内訳書に明示する項目の追加」です。 リーフレットは、 従来の法定福利費に加え、 材料費・労務費・安全衛生経費・建退共掛金を追加したと示しています。 中建審の通知文も、 改正後の建設業法第20条を踏まえ、 適正な労務費確保と、 労務費以外の不可欠な経費への“しわ寄せ防止”のために項目追加したと説明しています。

実際、 民間約款(甲) (乙)の条文でも、 内訳書に材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金を明示することが規定されています。 これにより「とりあえず総額で丸めた見積り」から一歩踏み込み、 何にコストをかけて品質・安全・雇用を守るのかを可視化しやすくなります。

コミットメント条項と契約変更協議の追加が現場を変える

裏面のもう一つの柱が「労務費等の支払いに関するコミットメント条項」です。 リーフレットは、 労務費に関する基準の実効性確保のため、 労務費や賃金の適正支払いに係る表明・情報開示に関する条項を新設し、 任意で利用できる選択条項だと説明しています。

中建審の通知文は、 受注者が注文者に対し、 技能者・直接下請へ適正な賃金・労務費を支払うこと等を約し、 必要に応じて注文者が書類提出を求められる規定を導入した、 とより具体的に説明します。

そして、 現場の“揉めどころ”である変更協議についても強化されています。 通知文は、 資材高騰等に係る契約変更ルールとして、 請負代金額等の「変更方法」が契約書の法定記載事項として明確化され、 受注者から協議の申出ができ、 注文者は誠実に協議に応ずるよう努めることになった、 と整理しています。

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民間発注者にとっての実務メリットと、受注者側の備え

約款活用は「受注者が楽になる」だけではなく、 発注者にとってもQCDを守るための合理策です。

発注者側のメリットは「工事が止まらない」設計にある

民間発注者にとって最大のリスクは、 工事が想定どおりに進まず、 結局“追加コスト+追加時間+追加の調整負担 を背負うことです。 標準約款に沿う契約は、 当事者の権利義務を中立・公正な立場で整理し、 片務性の問題を抑える狙いがあります。

受注者側は「説明できる力」と「書面化の型」が価値になる

受注者側のメリットは、 交渉が“契約に基づく協議”として成立しやすくなることです。 一方で、 改正後の運用では「内訳の明示」 「変更協議の申出と回答」 「場合によっては支払いに関する表明・情報開示」といった、 書面・記録の重要性が増します。

変化点 受注者側の準備 現場担当者に求められること
内訳の明示範囲が拡大 見積・内訳の標準化、根拠資料の備え 数量・歩掛・単価を説明できる
変更協議が制度化方向 申出書・回答書など“型”を用意 事実と根拠を時系列で残す
コミットメント条項の導入 支払いフローと証跡の整備 下請・技能者まで含む連携

施工王が見る今後の展望

2025年12月12日 改正部分は施行される

第三次担い手3法の全面施行を受け、 標準約款の改正部分は2025年12月12日から施行されることが示されています。 「価格・工期が動くのは例外」という前提から、 「価格・工期が動くことを前提に、 事前にルールを決める」前提へ移っています。

伸びる人材像は「契約×原価×現場」をつなげる人

キャリアの観点で見ると、 施工管理に求められる能力は拡張しています。 従来の工程・品質・安全に加え、 (1)内訳の根拠を積み上げる力、 (2)変更協議を“条項に沿って”前に進める力、 (3)支払い・下請連携・証跡を整える力が価値になっていきます。

役割・職種 強みになるスキル 現場での具体行動
施工管理(主任・所長) 変更協議の設計、記録設計 申出・回答の書面化、根拠整理
工務・積算 内訳の標準化、数量・単価管理 内訳書・見積の型づくり
専門工事の現場代理人 元請・発注者への説明力 必要経費の見える化と提示
発注者側(営繕・PM) 「契約とQCDの統合 標準約款を前提に意思決定

まとめ

国土交通省と建設業主要3団体が連名でリーフレットを作成した背景には、 「民間工事の契約が標準約款から離れ、 負担が偏りやすい」という実態があります。

リーフレットは、ガイドライン上、民間請負契約約款に沿った契約が基本であり、片務的な条項は違反の可能性があるため慎むべきというメッセージを、民間発注者に真正面から伝えています。

施工王編集部として強調したいのは、この変化が“働く人の価値”を押し上げるチャンスでもあることです。契約を味方にできる現場人材は、会社の粗利と現場の働き方の両方を守れる存在です。

民間発注者と受注者が“共通言語”で話せる土台が整えば、 結果としてトラブルが減り、 品質・安全が上がり、 建設業が持続可能な産業へ近づきます。そうした流れを現場から支える人材は、これからの建設業界で確実に中心になっていくはずです。

参照元:

全国建設業協会,民間約款利用促進リーフレット,日本建設業連合会

建設業法,国土交通省:建設業法令遵守ガイドライン

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