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屋外コンサートなどで遠方にまで響く低周波音の騒音問題に対し、建設大手の前田建設工業とスタートアップ企業のピクシーダストテクノロジーズ(PxDT、代表:落合陽一氏)が革新的な解決策を打ち出しました。
両社が共同開発した「iwasemi™通気遮音装置」は、通気性を維持しながら騒音を遮断する新技術です。
近隣住民への騒音被害を抑えつつイベントの快適性を保つこの試みは、騒音問題解決の切り札として建設業界でも大きな注目を集めています。
本記事では、その技術の概要と業界にもたらす影響について、施工王が詳しく解説します。
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屋外コンサートの低周波騒音問題と従来対策の限界
近年、野外コンサートで発生する低音域の騒音は遠方まで伝播し地域社会で大きな課題となっています。
従来の防音策では騒音を抑えるために通気性を犠牲にせざるを得ず、換気や熱環境との両立が困難でした。
低周波騒音が周辺環境に及ぼす影響
- 数百メートル先まで騒音が届いてしまう
- 低周波数帯の重低音は建物や地面を振動させ、数百メートル離れた地域まで届くことがあります。
- そのため屋外コンサートは、近隣住民の生活環境に悪影響を及ぼす騒音クレームが後を絶ちません。
- イベント主催側にとっても考慮しなければならない大きな問題
- 実際、低周波音による住環境への影響は社会問題化しており、イベント主催者にとっても公演を円滑に実施する上で大きな障壁となってきました。
- 長時間続く重低音は、単に「うるさい」だけでなく住民のストレスや体調不良を招く場合もあり、地域と音楽イベントの共存を困難にしています。
- このため各地で屋外イベントの開催時間や音量を規制する動きも見られ、騒音対策は避けて通れない課題となっています。
従来の防音対策と通気性のジレンマ
- 防音対策が大掛かりになっている現在
- 従来からコンサート会場の騒音対策としては、防音壁を高く厚く設置したり、会場自体を屋内化するなどの手法が取られてきました。
- しかし低周波騒音は波長が長くエネルギーも大きいため、対策には壁や床の大幅な重量化・厚み強化、二重壁構造の採用、防振装置の設置など大掛かりなものが必要でした。
- これら従来技術では換気口や開放部を塞ぐ必要が生じ、十分な換気・通気との両立が難しくなります。
- その結果、観客の熱中症リスクや設備の過熱など快適性・安全性の面でも課題を抱えていました。
- コストやスペースの確保も大きな障壁に
- 防音構造の大型化・重量化は建物にかかる負荷を増やし、施工コストやスペース確保の面でも制約が大きく、コンサート主催者と施工者双方にとって頭の痛い問題となっていたのです。
- 例えば低周波用の大型消音ボックスや曲がりくねったラビリンス型消音ダクトを設置するといった対策もありますが、これらはいずれも大規模で高コストになりがちでした。
- 以上のように、従来の遮音手法には多くの制約がありました。それに対し今回開発されたiwasemi通気遮音装置がもたらすメリットを、以下に簡単に比較します。
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従来の低周波防音策 |
新技術「iwasemi」の利点 |
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壁や天井を厚く重くする設計 |
軽量な構造で対応可能 |
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二重壁・浮き床など大掛かりな施工 |
コンパクトな単一構造で実現 |
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通気口を閉塞し換気を犠牲にする |
通気を確保しつつ遮音が可能 |
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建物荷重増・空間制約が大きい |
後付け可能で設計自由度が高い |
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施工手間・材料費が嵩み高コスト |
材料の工夫でコスト抑制が期待 |
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対象帯域外の音も遮断しがち |
必要な帯域だけを選択的に制御 |
前田建設とPxDTによる新遮音装置「iwasemi」の開発
前田建設工業とピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)は、メタマテリアル技術を活用した新しい遮音デバイス「iwasemi™通気遮音装置」を共同開発し、シミュレーションおよび実物大実験でその性能を確認しました。
通気性を保ちながら低周波騒音をピンポイントで抑制する画期的な構造です。
建設大手とスタートアップが挑む社会課題解決
- 2社の共同プロジェクト
- 前田建設は総合建設業者として培ったノウハウを持ち、PxDTは最先端の音響テクノロジー企業としてメタマテリアル※技術を保有しています。
- その両者がタッグを組むことで、従来困難だった「騒音問題の構造的解決」に挑戦しました。
- 今回の共同開発では、PxDTが開発した独自の音響制御技術「iwasemi」を前田建設が持つ建築設計・施工の知見と融合させ、2025年11月には装置の基本性能についてコンピュータシミュレーションおよび前田建設の研究施設で実物大モデルを用いた実証実験で検証を実施しています。
- 社会課題の解決の道筋を明らかに
- 実験の結果、屋外コンサート会場周辺で問題になりやすい低周波騒音を構造的に低減できる可能性を明らかにしました。
- 建設業界の老舗企業とテック系スタートアップの協業から生まれた今回の成果は、新たなイノベーションの形としても注目されています。
※メタマテリアル…自然界に存在しない特性を持つ人工材料。構造設計により特殊な電磁気・音響特性を発揮する。
「iwasemi™通気遮音装置」開発の狙いと革新性
- 開発機能の特徴
- ①空気は通すが音は通さない
- 両社が開発した「iwasemi™通気遮音装置」の最大の特徴は、“空気は通すが音は通さない”という一見矛盾する性能を両立させた点にあります。
- PxDTの音響メタマテリアル技術「iwasemi」により、入射する音波に対して逆位相の音波を発生させて騒音を打ち消す特殊構造を実現しました。
- まさに「音を構造で調律する」新発想であり、従来は困難だった特定周波数帯域(例えばコンサートの重低音が集中する数十〜数百Hz)のみを選択的に減衰させることが可能です。
- そのため必要以上に壁体を厚く重くしなくても効率的な低周波騒音対策が行えます。
- ②ノイズキャンセリングとは異なる
- さらに、通気のための開口部に本装置を設置すれば風や空気はそのまま通しつつ音だけを大幅に遮断でき、換気性能や熱環境を損ねずに防音効果を発揮できます。
- この方法はスピーカーで逆位相音を発生させるアクティブなノイズキャンセリングと異なり、構造体そのものがパッシブに遮音するため電源を必要としない利点もあります。
- 防音の常識を覆すこうした革新的アプローチに、業界内外から大きな期待が寄せられています。
- ①空気は通すが音は通さない
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新遮音装置「iwasemi」の仕組みと性能
iwasemi通気遮音装置はメタマテリアル構造によって騒音を逆位相で打ち消す仕組みを備え、125Hz帯で約10dBの低減効果を発揮するなど高い性能を示しました。
シミュレーションと実大実験で通気性と遮音性の両立を確認しており、その有効性が証明されています。
“空気は通すが音は通さない”構造の秘密
- ①材料自体が音エネルギーを相殺
- iwasemi通気遮音技術では、素材内部に設けた特殊な構造が音波を散乱させ、入射音と逆位相の波を衝突させることで音エネルギーを相殺します。
- 言わば、ヘッドホンのノイズキャンセリング機能を材料自体で実現するようなものです。
- そのため従来技術では難しかった高い遮音性能と通気性の両立が可能になりました。
- ②設計自由度の高さ
- メタマテリアルの構造設計自由度は高く、狙った周波数帯域に合わせて吸音・遮音効果を調整できるため、コンサートで問題となる特定の重低音域に的を絞った対策が可能です。
- 一方で、人の話し声やアナウンスなど必要な音は遮らないよう設計することもでき、用途に応じ柔軟に音響特性をデザインできる点も優れています。
- 実際の実証実験で、換気用の開口部を開けたままでも騒音がどれだけ低減できるかを検証しており、通気性と防音性の両立が実証されています。
実験で確認された遮音性能と効果
- 従来の騒音を半分以下に
- 開発チームはコンピューター上でのシミュレーションに加え、実際の装置を用いた実験でiwasemi通気遮音装置の効果を定量的に評価しました。
- その結果、代表的な低周波音である125Hzの帯域で約10デシベルの騒音低減に成功しつつ、十分な通気量を確保できることが確認されています。
- 125Hz付近はサブウーファーから出る重低音域に相当し、10dBの低減は人間の聴感上では音エネルギーがおよそ半分以下になる大幅な改善です。
- つまり従来なら遠方まで響いていた重低音を、この装置を通過させることで半分以下の音量にまで和らげることが可能になるわけです。
- さらに、軽量な構造のため既存の開口部への後付けや装置交換も容易で、会場や建物ごとの改修工事にも適した設計となっています。
- これらの性能検証により、「構造による低周波騒音対策」が現実的なソリューションとなりうることが示されたのです。
- なお、本装置は2025年11月に東京ビッグサイトで開催された業界展示会「JAPAN HOME & BUILDING SHOW 2025」にて初披露され、建築関係者からも大きな関心を集めました。
広がる応用範囲 — イベントから建築分野まで
iwasemi通気遮音技術は、屋外イベント会場以外にも様々な建築・産業分野での防音ニーズに応用できるポテンシャルを持ちます。
開放型の空間や換気が必要な設備における騒音対策として、新たな選択肢を提供すると期待されています。
野外イベント空間での活用メリット
- 換気機能を確保
- 本技術の直接のターゲットである野外コンサートや野外フェスティバルの会場では、大音量の音楽と観客の熱気を逃がすため換気が欠かせません。
- しかし従来は音漏れを防ぐために会場を囲い込んだりスピーカーの低音出力を抑えたりする必要があり、観客体験や演出に制約が生じていました。
- iwasemi通気遮音装置を活用すれば、ステージ周辺や客席エリアに通気可能な遮音壁やパネルを設置することで、風通しを確保しながら騒音だけを削減できます。
- これにより、近隣への音被害を軽減しつつ、野外ならではの開放感あるイベント運営が可能になります。
- 実際、騒音対策はイベント主催者にとって長年の課題であり、この技術はその障壁を下げるものとして歓迎されるでしょう。
- 観客にとっても音響が適切にコントロールされた快適な鑑賞環境が提供され、安全面(過度な音量による耳への負担軽減)のメリットも期待できます。
建築物・設備への展開と防音市場への影響
- 商業施設やスタジアム、工場など幅広く応用
- 前田建設とPxDTは、屋外イベント以外にも本技術の幅広い応用を見据えています。
- その例として、商業施設やスタジアム、工場など建物の換気口・排気ダクトから漏れる騒音の低減があります。
- 工場設備の低音機械音やスタジアムの館内音響が周囲に漏れる問題に対し、換気装置を塞がずに騒音のみ抑制できれば、事業継続や周辺環境との調和に寄与するでしょう。
- また、建築物の外装パネルや高速道路沿いの防音壁など通気が必要な構造体への応用も期待されています。
- ビルの機械室やデータセンターの冷却ファン音、商業施設屋上の空調機器音といった従来対応が難しかった低周波騒音にも、新たな対策手段を提供できる可能性があります。
- 既存建築物への後付けが可能な技術
- さらにこの技術はモジュール化したパネルとして提供できるため、既存建築物への後付けやリニューアルにも活用しやすく、防音市場における新たなソリューションとして注目されます。
- 換気と遮音のトレードオフに悩んできた建築設備分野に、大きなインパクトを与えるでしょう。
建設業界への影響と今後の展望
通気遮音技術「iwasemi」の登場は、建築物の防音設計における従来のトレードオフを解消する画期的な例として、建設業界に新たな可能性をもたらします。
今後、製品化と普及が進めば、都市空間の静粛性・快適性向上に向けた大きな一歩となるでしょう。
防音設計の新たな選択肢と可能性
- 防音と換気の両立を実現
- 建築設計において「騒音対策」と「換気・通風」はしばしば相反する要求でしたが、本技術はそのジレンマを解決する新たな選択肢となります。
- 例えば、環境性能と居住性を追求するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やウェルネスオフィス等では、省エネのため自然換気を取り入れつつ静かな室内環境を維持することが求められます。
- iwasemi通気遮音材はこうしたプロジェクトにも適用可能で、軽量かつ素材・形状の自由度が高いためデザインを損ねずに組み込める点も魅力です。
- 防音対策が必要な箇所だけにピンポイントで設置できる柔軟性があるため、必要以上の過剰設計を避けつつコストバランスと性能を両立できるメリットもあります。
- 省エネの促進
- また、遮音構造の軽量化は使用材料の削減や施工時の省エネ化につながり、環境負荷低減の観点でも注目すべきポイントです。
- 自然換気を活かすことで空調エネルギー消費の削減も期待でき、建築物の環境性能向上にも寄与する技術と言えます。
- 建築家や設備設計者にとって、メタマテリアルを用いた遮音材の登場は、防音設計の幅を広げ新しい発想を促す契機となるでしょう。
実用化に向けた課題と展望
- 製品化に向けた改良、価格低減、耐久性の強化
- 現時点で「iwasemi™通気遮音装置」は開発・実証段階にあり、今後は製品化に向けた改良やコストダウン、耐久性評価など解決すべき課題も残っています。
- しかし前田建設とPxDTは、得られた知見を基に施設ごとの音響条件や構造制約に合わせたカスタム設計手法の確立を進め、実用化への道筋を着実に描いています。
- 今後の実証実験の継続により、安全性や効果の長期安定性を検証し、建築基準や音響規準への適合も図っていくことでしょう。
- また、新素材ゆえ量産性やコスト面での改良も必要で、大規模導入には価格低減が鍵となります。屋外で長期間使用する上での耐久性・耐候性を確認することも不可欠です。
- さらに、行政や業界団体による新技術普及・標準化の後押しがあれば、社会実装が一層進むことも期待されます。
- こうした課題を乗り越え製品化が実現すれば、都市部の大型建築やイベント施設への導入が具体化し、騒音問題解決の切り札として広く普及する可能性があります。
- とりわけ都市密集地での開放型イベントや、騒音規制が厳しい地域での建設計画において、本技術は持続可能で快適な都市空間づくりに貢献するものと期待されます。
- 建設業界では、防災・環境技術の一環として音環境の最適化がますます重視されつつあり、今回のような異業種連携によるイノベーションが今後も増えていくでしょう。
まとめ
前田建設工業とPxDTが開発した「iwasemi™通気遮音装置」は、屋外コンサート会場周辺の騒音問題を構造的アプローチで解決しようとする意欲的な試みです。
メタマテリアル技術を用いることで通気性と遮音性の両立を可能にし、従来は難しかった低周波騒音の低減に成功しました。
この技術の応用範囲は野外イベントに留まらず、換気が必要な様々な建築・設備の騒音対策に波及しうるため、業界全体に与えるインパクトも大きいでしょう。
今後、実用化が進めば騒音問題に悩む現場にとって強力なソリューションとなり、都市の環境品質向上にも寄与すると期待されます。
また、建設会社とテクノロジー企業の協業によって生まれた本事例は、業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一端とも言え、今後もこうしたクロスオーバーから新たなソリューションが生まれていくでしょう。
施工王では、建設業界の最前線で起きているこのような技術革新に引き続き注目し、皆様に有益な情報をお届けしてまいります。
参照元
・中日新聞
有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。


