目次
働き方改革の波は建設業界にも及び、週休2日(週に2日の休日)を確保しようという取り組みが進んでいます。
中でもキーワードとなるのが「4週8閉所」です。
これは建設現場で4週間に8日の閉所日(休日)を設けるという施策で、日建連(日本建設業連合会)を中心に業界全体で推進されています。
最新の調査報告 (2024年度)では4週間あたり平均7.12日の閉所を達成しており、前年より改善が見られました。
本稿では、「4週8閉所」とは何か、その背景や狙い、過去から現在までの実態調査結果、週休2日制との関係性、そして建設業における今後の展望について、施工王の視点から詳しく解説します。
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4週8閉所とは何か?
「4週8閉所」は建設業界における週休2日実現のためのキーワードです。
簡単に言えば、建設工事の現場を4週間につき8日間閉じる(休みにする)ことで、土日を中心とした週休2日を達成しようという取り組みを指します。
日建連が策定した行動計画の中核となる概念であり、年間換算で104日の現場閉所を目標としています。
4週8閉所の定義と目的
「4週8閉所」とは、その名の通り4週間(28日)で8日間の現場閉所を確保することを指します。
これは通常の企業でいう「完全週休二日制」(毎週土日休み)に相当しますが、建設業特有の事情に合わせ柔軟に定義されています。
日建連の「週休二日実現行動計画」では、工期1年の現場なら曜日にかかわらず祝日や長期休暇も含め合計104日間の閉所を確保することを目標に掲げています。
必ずしも毎週決まった曜日に休めなくとも、年間トータルで他産業並みの休日を確保するのが狙いです。
このような目標を掲げた背景には、建設業の労働環境を改善し、人材を確保する目的があります。
長時間労働や休日の少なさが敬遠され、若手人材の入職が伸び悩む中、「建設現場でも週休2日が当たり前」という社会的認知を得て若い世代の参入を促す必要があると考えられました。
実際、日建連は2017年にこの行動計画を策定し、原則土日閉所(週休2日)の方針を掲げてフォローアップを開始しています。
まずは業界の長年の慣習を変え、企業の意識転換を図るために、祝祭日や年末年始休暇等も含めて柔軟に104日の閉所を目指すアプローチが取られました。
これが「4週8閉所」の基本的な定義と目的と言えるでしょう。

「4週8閉所」がもたらす効果
4週8閉所の実現は、建設業界にもたらす効果が大きいと期待されています。
第一に労働者の健康確保と安全向上です。
十分な休息が取れることで過重労働を防ぎ、現場での事故リスクを減らします。
例えば近年では、夏季の猛暑による熱中症リスクが問題視されており、日建連は7~9月を「4週8閉所」推進強化期間と定めて各社に休日確保を呼びかけています。
適切に休養を取ることが、猛暑下で働く建設労働者の安全確保に極めて重要だからです。
第二に働き方改革関連法への対応という側面もあります。
2024年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用されました。
月45時間・年360時間(特例でも年720時間・単月100時間未満等)の上限を守るには、恒常的な週休2日取得による労働時間削減が不可欠です。
4週8閉所はまさにこの法規制をクリアするための手段とも言えます。
実際、週休2日を実施すれば自ずと残業時間を抑制できるため、企業にとってもコンプライアンス上のメリットがあります。
「4週8閉所」の課題
一方で課題も存在します。
工期や施工計画との調整がその一つです。
天候不良や周辺環境の制約などにより、必ずしも計画通り毎週土日を閉所できない現場もあります。
このため、不測の事態に備えて平日に振替休工したり、長期休暇と組み合わせて所定の閉所日数を確保する工夫が求められます。
また発注者側の理解と協力も不可欠です。
公共工事では発注者(国や自治体)が週休2日を前提とした工期設定に理解を示しつつありますが、民間工事では依然として工期短縮や土日作業の要請が根強く、現場レベルでの調整が課題となっています。
こうした課題を乗り越えるためには、元請だけでなく下請・協力会社を含めた業界全体での意識共有と取り組み強化が重要です。
建設業の働き方改革と週休2日導入の背景
建設業界で週休2日制の導入が遅れてきた背景には、業界特有の長時間労働文化や人手不足問題があります。
しかし政府による働き方改革関連法の施行や深刻化する人材難を受け、業界も本腰を入れて労働環境の改善に取り組み始めました。
週休2日実現の行動計画「4週8閉所」は、そうした時代の要請に応えるべく生まれたものです。
長時間労働の慣習と人材難という課題
建設業は伝統的に長時間労働と少ない休日が常態化してきた業種です。
国土交通省の調査によれば、直近の統計で建設業の年間総労働時間は約1,978時間となっており、全産業平均(約1,632時間)よりも350時間以上長い状況でした。
こうした過酷な労働環境は、働き手の高齢化と若年層の敬遠を招き、将来的な人手不足に直結する深刻な問題です。
実際、近い将来には技能労働者の大量離職(団塊世代の大量退職など)が予想されており、若年者の雇用による世代交代が必須と見込まれています。
しかし厳しい労働条件のままでは若者に選ばれず、人材獲得競争に勝てないという危機感が業界内で高まってきました。
このような状況下で、処遇改善(待遇改善)は建設業界の喫緊の課題となりました。
とりわけ週休2日(土日休み)の定着は他産業並みの休日を確保するという意味で、労働環境改善の象徴的な施策です。
他産業では当たり前の完全週休二日制が、建設業でも一般化すれば、過重労働の是正だけでなく業界のイメージアップにもつながり、新規入職者の増加が期待できます。
週休2日制の導入は単なる休みの話にとどまらず、将来的な担い手を確保し建設産業を持続可能にするために避けて通れない改革なのです。
法改正と業界の自主的取り組み (2017年~現在)
政府主導の働き方改革も、建設業界の意識転換を後押ししました。
2019年に改正労基法による時間外労働の上限規制が施行されましたが、建設業は医師・運転業務等とともに適用が5年間猶予され、2024年4月から罰則付きで適用されることになりました。
この「2024年問題」を見据え、建設業界でも早めに労働時間短縮へ舵を切る必要があったのです。
そうした中、日建連は他に先駆けて週休二日実現に向けた自主的な行動計画を打ち出しました。
2017年12月、日建連は建設現場の週休二日を実現するための基本方針と具体策からなる「週休二日実現行動計画」を策定します。
この計画では「2019年度末までに4週6閉所以上、2021年度末までに4週8閉所の実現」を目標に掲げ、会員企業各社でアクションプログラムをまとめて動き出しました。
当初5年間の計画でしたが、目標達成が困難な状況を踏まえ、後に計画期間は延長されています。
具体的には「2023年度末までに4週8閉所を実現(『土日閉所』にこだわらず年間104閉所を実現)」と目標期限を延ばし、2024年度を定着確認の年と位置付けることになりました。
さらに2025年度についてももう1年延長し、以降の新たな目標は2025年中に策定される長期ビジョンに沿って検討する方針が示されています。
この日建連の行動計画には、現場閉所日数のフォローアップが組み込まれており、毎年度(上半期・通期)ごとに進捗が調査・公開されています。
業界全体として週休2日を「見える化」し、各社に競争環境の中で取り組みを促す狙いがあります。
また、並行して「適正工期の確保」も重要な柱として打ち出されました。
無理のない工期設定がなければ週休2日も実現できないため、発注者と受注者間で適正な工期を契約に反映する取り組み(適正工期確保宣言など)も進められています。
このように法改正への対応と自主的改革が車の両輪となり、建設業における働き方改革がここ数年で加速してきたのです。
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「4週8閉所」の実態調査結果: 過去から現在
日建連は会員各社を対象に定期的なフォローアップ調査を行い、建設現場の週休2日実施状況(閉所日数と休日取得状況)を公表しています。
その結果によると、「4週8閉所」の達成率は年々向上し、直近の2024年度調査では全体の約6割の現場が4週8閉所以上を達成しています。
以下では、過去から現在にかけての主な調査結果と傾向を見てみましょう。
週休二日実現行動計画の成果と現状データ
日建連のフォローアップ調査データによれば、建設現場における閉所日数は着実に増加しています。
2019年度に調査を開始して以来、4週あたりの平均閉所日数は約0.9日増加し、直近の2024年度には平均7.12日となりました。
これは4週8閉所(8日)にあと一歩の水準まで改善が進んだことを意味します。
以下の表に、最近の調査結果の概要をまとめます。
年度(調査期間) | 4週あたり平均閉所日数 | 4週8閉所以上の現場割合 | 4週8休以上の休日取得率 (社員) |
---|---|---|---|
2022年度('22年4月~'23年3月) | -(※推定6.6日程度) | 42.1% | 77.1% |
2023年度('23年4月~'24年3月) | 6.87日 | 52.0% | 84.9% |
2024年度('24年4月~'25年3月) | 7.12日 | 61.0% | 89.4% |
(※注:2022年度の平均閉所日数は記事本文に明記なし。前年比較等から推定値を記載)
上記の通り、現場ベースでは4週8閉所以上を達成した割合が2022年度の42.1%から2024年度には61.0%へと大幅に上昇しています。
これは初めて全体の過半数を超えた2023年度(52.0%)からさらに約9ポイント増加したことになり、業界全体で週休2日が広がりつつあることを示しています。
また、現場勤務社員ベースで見た週休2日取得率(4週8休以上)も、2024年度は89.4%に達し8割台後半まで向上しました。
つまり約9割の技術者・作業員が実質的に週休2日を享受できている計算で、休日取得の面でも大きな前進が見られます。
これまでの推移を振り返ると、2018年度下半期時点では4週8閉所を達成していた現場は全体の約24%程度(1/4弱)に過ぎませんでした。
それが2020年度上半期には37.9%、2022年度で約42%、2023年度で約52%、そして2024年度には61%と、着実に右肩上がりで改善しています。
特に2023年度から2024年度にかけての伸び幅が大きく、10ポイント近い上昇となった点は注目に値します。
これは時間外労働上限規制の適用開始直前から直後にあたり、各社が本格的に週休2日取得に舵を切った結果と考えられます。
また、日建連による「適正工期確保宣言」の浸透も奏功し、契約段階であらかじめ週休2日分の工期を織り込むケースが増えたことが背景にあります。
実際、適正工期確保宣言を反映した工事では、その75%で4週8閉所が実現していたとの報告もあります。
このように、データからは業界の努力により週休2日が着実に定着しつつある姿が浮き上がります。
土木と建築で異なる進捗、下請含めた課題
一口に建設業と言っても、土木工事と建築工事で週休2日の進捗状況には差異があります。
調査結果を業種別に見ると、土木系の現場の方が週休2日化が進んでいる傾向が顕著です。
2024年度のデータでは、土木工事現場の72.8%が4週8閉所以上を達成しているのに対し、建築工事現場では50.2%にとどまりました。
同様に前年(2023年度)も土木66.1%、建築39.1%と差が大きく、土木がリードしています。
この理由の一つは、土木工事では公共事業が多く発注者(国や自治体)の理解・協力が得られやすいのに対し、建築工事は民間発注が多く工期短縮や稼働日の柔軟性を求められる傾向が強いためです。
公共工事では国交省が「週休2日モデル工事」の拡充など週休2日を推進しており、発注者の理解が進んだ結果、土木では半数弱の現場で4週8閉所が実施できているとの分析があります。
一方、民間比率の高い建築分野では着実に改善はしているものの、まだ3割~5割程度の現場に留まっているのが現状なのです。
さらに見逃せないのが、下請企業など建設サプライチェーン全体での実施状況です。
元請の大手企業では週休2日の取り組みが進んでも、実際に現場で作業を担う協力会社・職人レベルまで徹底されていないケースもあります。
建設専門工事業団体の調査によれば、現場従事者全体で見た4週8休(週休2日) 取得率は依然1割程度にとどまるとの報告もあります。
例えば2024年のある調査では、下請企業では4週8休を達成できたケースが1割程度しかなく、「元請は休んでも下請は現場に残業・休日出勤で対応している」実態が浮き彫りになりました。
このように、大手と中小、元請と下請の間で意識と環境にギャップがある点も課題として指摘されます。
今後は、業界全体で休暇取得の意識共有を図り、下請業者にも週休2日が浸透するよう支援・調整していくことが重要です。
具体的には、元請企業が工程管理の中で下請の休日確保まで考慮した計画を立てる、人員交代制の導入支援や発注段階での休工調整など、きめ細かな対策が求められるでしょう。
週休2日制と「4週8閉所」の関係
「4週8閉所」は建設業における週休2日制実現のための具体的指標ですが、その達成はイコールで労働者個々の週休2日取得を意味するわけではありません。
ここでは、現場単位の「閉所日」と労働者の「休日取得」の違いを整理しつつ、建設業における週休2日定着の課題と展望を考えます。
現場閉所日数と個人の休日取得の違い
建設業の週休2日を語る際には、「4週8閉所」(現場が閉まっている日)と「4週8休」 (労働者が休んでいる日)を区別する必要があります。
日建連の調査でも、この2つは別々にフォローされています。
4週8閉所は現場自体が稼働していない日を意味し、当然その日は現場の全員が休むことになります。
一方で4週8休は各労働者単位で見た週休2日の取得状況です。
理想的には現場閉所=全員休日となるのですが、現実には工事の都合などで交替制で休みを取る場合もあります。
例えば、大規模工事などで「週休2日交替制」を敷き、現場は稼働しつつも作業員は班ごとに交替で週2日休ませるといった工夫です。
この場合、現場としては完全には止まっていなくても、労働者個々人は週休2日を確保できていることになります。
日建連の2024年度調査でも、現場閉所率(61.0%) より労働者休日取得率(89.4%)の方が高い結果が出ています。
これは、現場を完全閉所できない場合でも、人員交替や配置転換によって個人レベルでは休みを取らせる工夫がなされていることを示唆しています。
企業側も労務管理上、36協定の範囲で各人に週2日の休みを回す努力をしており、その成果として社員の休日取得率は高水準に達していると言えます。
もっとも、交替制で現場稼働を続ける方法には限界もあります。
現場を動かし続ければ誰かしらは出勤せざるを得ず、結局は真の意味での「休む文化」が根付かない恐れもあります。
やはり業界全体として目指すべきは「土日一斉閉所」による完全週休二日であり、その方が効率的かつ休暇の質も高まるでしょう。
日建連も「目指せ! 建設現場 土日一斉閉所」というスローガンを掲げ、現場全体で休むことの重要性をPRしています。
週休2日定着への鍵と残る課題
建設業で週休2日制を真に定着させるためには、いくつかの鍵となる要素があります。
まず第一に生産性の向上と工程管理の革新です。
限られた稼働日で工事を完遂するには、一人ひとりの生産性向上や技術革新(プレハブ化・ICT活用等)が不可欠です。
実際、週休2日を進める現場では「従来のやり方を見直し、ICT活用などで生産性向上を図った」との声もあり、働き方改革が現場の効率化を促す好循環も生まれています。
休みを増やすことが決して生産性低下に直結しないことを示し、効率的に働いてしっかり休むという新しい労働観を定着させる必要があります。
次に発注者側の理解と協力の拡大も重要です。
先述のように公共工事では週休2日を前提とした入札加点や契約ルールが整備されてきましたが、民間でも施主が週休2日の必要性を認識し、無理な短工期を要求しない風土を醸成することが欠かせません。
元請企業は契約交渉の段階で適正な工期を提案し、週休2日を確保するための工程計画を提示するなど、発注者に働きかける役割が求められます。
また、下請・職人への配慮と支援も欠かせません。
週休2日を実現しても下請けに皺寄せがいけば意味がないため、元請主導で下請各社の休暇取得計画を調整したり、場合によっては工期延長や追加予算の提案を行うことも選択肢となるでしょう。
業界団体や行政も、中小企業への助成やモデル事業の展開を通じて、裾野まで週休2日を行き渡らせる支援策を検討すべき局面です。
最後に現場文化の転換という点も挙げられます。
長年「現場は休まず動かして当たり前」という風潮があった業界だけに、完全週休二日を定着させるにはマインドセットの変化が必要です。
現場監督や職長などリーダー層が率先して休暇取得に前向きな姿勢を示し、「休めるときはきちんと休む」文化を作っていくことが大切ですです。
近年はSNSや広報を通じ、週休2日を実現している現場の事例紹介や効果(残業削減や離職率低下など)の発信も増えています。
そうした成功事例を業界内で共有し、休むことは悪ではなく生産性向上と安全確保に資するとの認識を広めることが、週休2日定着の鍵となるでしょう。
建設業における休日拡大の展望と今後の課題
週休2日推進の流れは今後も強まると予想されます。
2024年度は建設業の働き方改革元年ともいえる年になり、各社の取り組みは新たな段階に入りました。
今後は「4週8閉所」の定着を超え、年間の総休日数をさらに増やす試みや、働き方そのものの見直しが進む可能性もあります。
一方で、実効性を担保するための運用や、中小企業への波及といった課題も残ります。
2024年以降の新たな取り組みと目標
日建連は2024年度を4週8閉所定着の確認期間と位置付け、事実上この目標の総仕上げ段階に入っています。
2025年度からはフォローアップ調査の指標も見直され、作業所勤務社員の「4週8休」調査に代えて「年間休日日数」の調査が行われる予定です。
これは、単に4週8閉所を守るか否かだけでなく、年間を通じて何日休めたか(有給休暇消化等も含めた総休日)に着目しようという動きです。
週休2日相当 (104日)の確保がある程度実現した今、次のステップとして年間休日120日(完全週休2日+祝日等)や計画的な長期休暇取得など、より充実した休暇制度を目指す可能性があります。
実際、大手建設会社の中には夏季休暇や年末年始とは別に計画年休制度を導入し、5日以上の連続休暇取得を奨励する動きも出てきました。
今後の新たな目標設定次第では、「4週8閉所」は最低ラインとしてさらに上の水準の働き方改革が推進されるでしょう。
また、労務管理のIT化・効率化も進展しています。
2024年の残業規制適用に合わせて、多くの現場で勤怠管理システムや労働時間の見える化ツールが導入されました。
これにより各社員の残業状況や休日取得状況が把握しやすくなり、長時間労働の抑止と適切な休暇配分がデータに基づき行えるようになっています。
国も建設現場向けに働き方改革推進モデル事業を展開し、生産性向上技術(プレキャスト工法やBIM施工など)と休暇取得の両立を図る取り組みを後押ししています。
2024年以降、こうした技術革新と働き方改革が融合し、短い工期でも品質と効率を維持しつつ休みを増やすという新しい施工管理手法が確立されていく展望があります。
日建連の新・長期ビジョン策定(2025年予定)でも、DXやロボット活用などを通じた生産性革命と、労働環境改善の両立が重要テーマになるとみられます。
継続的な課題と施工王から見た展望
展望が開ける一方で、依然として解決すべき課題も残ります。
まず中小零細企業や地域の建設現場への波及です。
都市部の大規模案件では週休2日が当たり前になりつつありますが、地方の小規模工事や下請単独の工事では依然として土曜稼働が続いているケースがあります。
業界全体の底上げには、地域の建設業協会や行政の役割も大きいでしょう。
例えば地方自治体が発注する工事でも週休2日条件を付与する、地域の職人不足対策として休日確保に取り組む企業を支援・表彰する、といった施策が考えられます。
次に意識改革の継続です。
週休2日実現はゴールではなくスタートだという認識が重要です。
休める日を増やした上で、その時間を如何に充実させるか(リフレッシュや自己研鑽に充てるなど)も働き方改革の一部と言えます。
施工管理技術者の中には「休みが増えても現場が気になって落ち着かない」という声もありますが、オンとオフの切り替えをきちんと行う文化を醸成していく必要があります。
企業も社員に対し、有給休暇の取得促進や休暇中のバックアップ体制整備などを引き続き進めていくでしょう。
最後に、週休2日定着による業界の魅力度向上について触れます。
転職支援を行う施工王の立場から見ても、近年は「週休2日かどうか」が求職者の企業選びにおける重要な判断基準になっています。
従来、建設業は休みが少ないイメージが強かったため敬遠されがちでした。
しかし各社が週休2日を実現し始めたことで、「建設業界でもプライベートを大事にできる」というポジティブな発信が可能になりつつあります。
これは人材確保という点でも非常に明るい材料です。
実際、週休2日制を全面に打ち出す企業求人への応募が増えるなど、労働環境の改善が採用市場にも好影響を及ぼしています。
週休2日の定着により働きやすい職場が増えれば、将来的に建設業の担い手不足解消にもつながっていくでしょう。
まとめ
建設業界における「4週8閉所」は、週休2日制の実現に向けた具体的な取り組みとして定着しつつあります。
働き方改革の流れの中で、かつて慢性的だった長時間労働にメスを入れ、毎週しっかり休める業界へと変わろうとしている点は特筆すべき進歩です。
最新の実態調査では、平均閉所日数7.12日/4週、現場の6割以上で4週8閉所実現、社員の約9割が週休2日取得という成果が示されました。
これは数年前には考えられなかった大きな前進であり、業界全体の努力の賜物と言えるでしょう。
しかし、真の週休2日定着までの道のりはまだ途中です。
建築分野や中小企業への波及、下請含めた全体での取り組み、そして休みを確保しながら生産性を維持・向上させる工夫など、課題も残ります。
幸いにも、働き方改革を支える技術革新や制度整備は着実に進んでおり、業界の意識もポジティブに変わり始めています。
「休める建設業」が当たり前になれば、人材不足の解消や安全・品質の向上といった好循環が生まれるでしょう。
施工王としても、週休2日が根付いた魅力ある建設業界となるよう、最新動向を注視しつつ求職者・企業双方の支援に努めてまいります。
働き方改革の次のステージに向け、業界全体で引き続き知恵を絞りながら、誰もが笑顔で働ける建設現場を実現していきたいところです。
有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。