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建設業の工期実態調査から読み解く「適切な工期設定」とは?背景まで徹底解説

建設業界では近年、「適切な工期設定」に注目が集まっています。

日本建設業連合会(日建連)の最新調査によれば、民間の建築工事の約9割で時間外労働の上限規制を順守できる適切な工期が確保されていることが明らかになりました。

この背景には、2024年4月から建設業にも適用された働き方改革関連法の時間外労働規制や、業界による「適正工期確保宣言」などの取り組みがあります。

本記事では、適切な工期設定とは何か、その重要性と業界の動向、背景にある働き方改革や法制度まで詳しく解説します。

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適切な工期設定とは?その意味と重要性

「適切な工期設定」とは、工事の期間を無理のない適正な長さに設定し、現場スタッフが週休二日制(4週8閉所)を確保しながら働けるようにすることです。

これは単に工期を長く取るだけでなく、労働時間の上限規制を守り、安全かつ高品質な施工を実現するための前提条件となります。

本節では適切な工期の定義と、それがなぜ重要視されるのかを解説します。

「適切な工期」とは何か―4週8閉所と時間外規制の遵守

建設業界でいう「適切な工期」とは、現場の労働環境に無理が生じないよう十分な工期を確保した契約期間のことを指します。

具体的には、4週8閉所(4週間で8日間の現場閉所日=週休2日)と週40時間労働を原則とした工期を設定することが基準となっています。

4週8閉所とは、1か月間に必ず8日間(通常は土日)の休工日を設けるスケジュールのことで、従来残業や休日出勤が常態化していた建設現場に週休二日制を浸透させる取り組みです。

十分な工期の確保により、労働基準法で定められた時間外労働の上限(月45時間・年360時間、特例時でも月100時間未満等)を守りやすくなります。

適切な工期設定が重要視される背景には、工期に余裕がないことによる弊害が深刻化していた事情があります。

工期が不足していると、現場では「竣工に間に合わせるために早出・残業や休日出勤を重ねざるを得ない」ケースが多く、長時間労働が常態化していました。

その結果、労働者の疲労蓄積やワークライフバランスの悪化を招くだけでなく、施工ミスや事故の発生リスクも高まり品質低下が懸念されます。

こうした問題意識から、適切な工期を設定することが建設業界全体の課題となってきたのです。

建設業法改正と適正な工期確保の法的枠組み

「適切な工期」を確保する動きは法律面からも支援されています。

2019年のいわゆる「担い手3法」改正(2020年施行)では、建設業法に著しく短い工期での請負契約を禁止する規定が盛り込まれました。

これにより、発注者(施主)は通常必要とされる期間に比べ極端に短い工期で契約を結ぶことが禁止され、もし違反した場合には国土交通大臣や知事が是正勧告を出せる制度となっています。

また同改正では、発注者に対して契約前に工期に影響を及ぼす事項(設計の不確定要素や周辺環境条件など)を事前に受注者へ情報提供する義務も課されました。

これは受注者(施工側)が適正な工期で見積もりを提出できるようにするための措置です。

さらに中央建設業審議会によって「工期に関する基準」も策定・勧告され、発注者・受注者双方の責務が示されています。

例えば発注者は、施工に必要な情報を事前提供し受注者と十分協議した上で工期を決定すること、受注者は不明な施工条件があれば発注者に確認し必要な工期を説明すること、など協働して適正な工期設定を行うことが求められています。

このように法改正とガイドライン整備によって、「無理な工期では契約してはならない」という枠組みが整い、適正な工期確保が法的にも後押しされる環境が生まれました。

特に2024年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されたことから、従来のように人海戦術で無理に間に合わせる働き方は転換期を迎えています。

適切な工期設定は、法令順守のみならず、働き方改革を進め人材を守るために不可欠な要素となっているのです。

建設業界における働き方改革と工期見直しの背景

建設業における働き方改革は他産業に比べ遅れていましたが、2024年問題(時間外労働規制の猶予終了)を契機に一気に進みつつあります。

週休2日制の導入促進や長時間労働是正など、工期の見直しと労務管理の改善が重要なテーマです。

本節では、建設業界の働き方改革の流れと、「適切な工期設定」がその中で果たす役割について背景を整理します。

2024年問題:時間外労働上限規制の適用と影響

政府が推進する働き方改革の一環として、2019年より改正労働基準法による時間外労働の上限規制が順次施行されました。

ただし建設業界は他業種より5年長い猶予が認められていましたが、この猶予が2024年3月末で終了しました。

つまり2024年4月1日からは建設業でも一般則として月45時間・年360時間(繁忙期でも月100時間未満など)の残業制限が適用され、違反すれば罰則の対象となります。

この「2024年問題」により、従来長時間労働に頼って工期をこなしてきた慣習を改めざるを得なくなりました。

規制適用に備え、各建設企業は労働時間の管理徹底や生産性向上による業務効率化などに取組んでいます。

同時に、発注者との関係性にも変化が求められました。

工期に余裕がないままでは規制順守は難しくなるため、受注者側から「必要な工期確保」を発注者に働きかける必要性が高まったのです。

国土交通省も「官民一体となった適正な工期設定による働き方改革推進」を呼び掛け、例えば公共工事では週休2日を前提とした発注が増加するなど官主導で改革が進みました。

一方、民間工事では工期や費用を契約交渉で決めるため週休2日工事の普及が遅れており、今まさに民間分野での働きかけが重要になっています。

このように2024年を目前に控えた業界全体の危機感から、「無理な働き方を前提としない工期設定」への大転換が進んでいます。

従来は「間に合わなければ残業や徹夜でカバーすればよい」という風潮もありましたが、それが通用しない時代となったのです。

こうした働き方改革の文脈の中で、適切な工期設定は企業が従業員の健康と安全を守り、生産性を維持するための必須条件となりました。

週休二日制の遅れと長時間労働の実態

他産業では当たり前となった完全週休二日制ですが、建設業界では長年それが実現しにくい状況が続いてきました。

国土交通省の調査でも、「建設業では週休の平均日数が1日以下」という労働者も少なくないことが示されています。

工期に余裕がなく休みを取れない現場が多かったため、週休2日制の定着を妨げる大きな要因が“不適切な工期(余裕のない工期)”だったのです。

また、長時間労働も深刻でした。

建設現場では以前は月100時間超の残業が発生することも珍しくなく、厚生労働省の資料によれば技術者・技能者の約2~3割に特別延長水準(※)の残業が見られたとの指摘もあります。(※臨時の特別な事情がある場合の上限: 年720時間以内・月100時間未満 等)

このような過酷な労働環境は、働き手の減少や若年層の敬遠につながり、建設業の慢性的な人手不足を一層悪化させる要因でもありました。

週休二日制の導入促進に向けて、政府と業界団体は様々な施策を講じています。

例えば国交省は、民間も含めた工事の適正な工期確保を呼びかけるリーフレットを作成したり、工期算定に役立つ「工期設定支援システム」 (標準的な作業日数や猛暑日・降雨日も考慮した工程自動算出ツール)の提供を開始しました。

業界としても働き方改革に対応すべく、発注者との協議による工期調整の重要性を強調しています。

実際、国交省調査では「受発注者間でしっかり協議を行うことで適正な工期設定に近づく」との結果が示されており、受注者から発注者へ必要工期を説明する取り組みが鍵になるとされています。

以上のように、長時間労働是正と週休二日定着という働き方改革の柱を実現するには、「適切な工期設定」が避けて通れないテーマとなっています。

建設現場の働き方を健全なものに変えていくため、業界全体で工期見直しの取り組みが進んでいるのです。

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日建連「適正工期確保宣言」(2023年)の概要

業界団体である日本建設業連合会(日建連)は、2023年7月に「適正工期確保宣言」を発表し、元請企業が協働して適切な工期を確保する方針を打ち出しました。

この宣言は、働き方改革の加速と2024年の時間外規制適用に万全を期す目的で策定されたものです。

本節では宣言の内容と、その後のフォローアップ体制、企業の取り組み状況について解説します。

宣言に至った経緯と内容

2023年7月、日建連は建設業の長時間労働是正・働き方改革を加速するため、加盟各社が足並みを揃えて取り組む「適正工期確保宣言」を決定しました。

宣言が生まれた背景には前述の通り、翌2024年からの時間外労働上限規制の完全適用が迫っていたことがあります。

国土交通大臣からも「週休二日の確保など適正な工期設定による働き方改革の推進が必要」との要請がなされ、業界として自主的に行動を起こす必要性が高まっていました。

宣言の主な内容は次の通りです:

  • 元請企業(会員各社)は、見積提出の際に週休2日 (4週8閉所・週40時間稼働)を原則とした「真に適切な工期」に基づき見積もりを行い、工期工程表を添付して発注者に提示・説明する。発注者に対して十分に説明を行い、理解を得るよう徹底すること。
  • また、協力会社(下請企業)から真に適切な工期前提の見積りが提示された場合は、その内容と工期工程を確認し最大限尊重すること。

宣言では、以上の行動を「初回見積もり提出時」に限って適用することも明記されています(初回見積もり以降の交渉段階でも努力は継続されますが、まずは最初の提示時点で適正工期を提示することが肝要であるとの考え方)。

要するに、見積もり段階から遠慮せず必要な工期をきちんと示し、発注者に説明・協議していこうという業界の決意表明と言えます。

これは元請だけでなく下請からの提案も尊重する点で、サプライチェーン全体で適正工期を確保しようとする姿勢が示されています。

宣言後のフォローアップと企業の取り組み状況

日建連は「適正工期確保宣言」を絵に描いた餅で終わらせないよう、半年ごとにフォローアップ調査を行う体制を取りました。

この調査では、加盟各社に対し「初回見積もり提出時の工期設定状況」と「契約時に適正工期が反映されたか」を報告してもらい、成果と課題を定期的に把握しています。

宣言直後の2023年下期(10月~)からスタートし、2024年度上期・下期と継続して実施されており、適正工期の定着度合いが数値で示される仕組みです。

加盟各社の具体的な取り組みとしては、全案件で必ず真に適切な工期を提示する方針を掲げる企業や、適切な工期が確保できない案件は受注を見送る決断をする企業も出てきています。

日建連2024年度下期調査によると、「原則すべての案件で真に適切な工期を確保している」会社は全体の61.5%にも上りました。

さらに「少なくとも4件中3件以上(75%以上)の案件で適正工期を確保している」会社も24.4%あり、合わせて約8割の企業が大半の案件で適正工期を実現している状況です。

これは宣言前と比べても大きな前進と言えます。

もっとも、企業規模や事業領域によって温度差もあります。

例えば小規模な専門工事業者では発注者への立場が弱く、なかなか工期延長を主張しにくいケースもあるでしょう。

また、元請と下請の間で適正工期の考えをどこまで共有できているかも課題です。

しかし大手ゼネコンを中心に「無理な工期では施工しない」という姿勢が示された意義は大きく、下請含めた全体に波及効果をもたらしています。

日建連自身、「かなり成果が出ている」と現時点の効果を評価しつつ、「今後も周辺環境を整え、適正な工期の定着を図りたい」とコメントしています。

業界ぐるみの継続的な取り組みにより、適切な工期設定は徐々に建設業界の新たな常識になりつつあると言えるでしょう。

日建連調査に見る民間建築工事の工期設定実態

日建連が実施した「民間建築工事の工期実態調査(2024年度下期)」の結果からは、民間工事における適切な工期確保の取り組みが着実に進んでいることが読み取れます。

初回見積もり時点で9割以上が適切な工期を提示し、その大半が契約段階でも確保されました。

一方で、一部では未だ制約により十分な工期が取れないケースも報告されています。

本節では調査結果の詳細を紹介し、民間プロジェクトの現状をデータから考察します。

調査結果サマリー: 初回見積もり時に91.7%が適切な工期を提示

日建連のフォローアップ調査 (2024年度下期分)によれば、民間発注の建築工事において初回見積もりで適切な工期を提示した案件は全体の91.7%に達しました。

この数値は、直前の2024年度上期調査 (89.7%)より2.0ポイント上昇しており、短期間での改善が見られます。

適切な工期を提示できている案件が9割を超えていることは、業界全体の意識改革が進んでいる証と言えるでしょう。

では、この91.7%に当たる案件では、どのように適切な工期が確保されたのでしょうか。

調査では初回見積もり時の状況を以下のように分類しています。

  • 建設会社自ら適切な工期を提示した案件: 1,606件(全体の68.9%)
  • 発注者から適切な工期を指定された案件: 531件(全体の22.8%)

つまり、約7割の案件で施工側から積極的に適正工期を提案しており、約2割強では発注者側があらかじめ余裕ある工期を設定して発注していたことになります。

初回見積もりでの工期設定状況 件数(割合)
適切な工期を提示(合計) 2,137件(91.7%)
└建設会社が自ら適切な工期を提示 1,606件(68.9%)
└発注者が適切な工期を指定 531件(22.8%)
適切な工期を提示できず受注者が説明のみ 147件(6.3%)
(参考)調査対象の総案件数 2,331件(100%)

両者を合わせた2,137件が初回見積もり段階で適切な工期を確保できており、これは調査対象全案件(2,331件)の91.7%に相当します。

残り約8%の案件 (194件)では初回提示時に適正工期を盛り込めなかったことになりますが、その多くも何らかの働きかけは行われています。

具体的には、発注者が提示した(やむを得ず短い) 工期に対して、受注者が「真に適切な工期」を説明したケースが147件(6.3%)あったと報告されています。

これらは発注者から提示された工期では十分な休工日が取れない恐れがあるため、受注者が「本来必要な工期は 日間である」と説明を試みた事例です。

こうした提案・協議の働きかけも含めると、全体の98%の案件で何らかの形で適正工期確保に向けた取り組みがなされている計算となり、非常に高い率で業界宣言が現場に浸透していることが分かります。

※「適切な工期を提示できず説明のみ」のケース147件は、発注者指定の工期が十分でない中で受注者が真に適切な工期を訴えた事例。

契約段階での工期確保率と残る課題

初回見積もり段階で適正な工期が提示されても、最終的に契約時点でその工期が反映されなければ意味がありません。

日建連調査では、適切な工期を提示した案件のうち94.7%で実際に契約に工期が反映されたことが報告されています。

これは、初回提案時には確保されていた適正な工期の大半が、発注者との交渉を経て正式契約にも盛り込まれたことを意味します。

前回調査(93.7%) より1.0ポイント向上しており、適正な工期を「提案するだけでなく実現する」割合も着実に上昇しています。

特に、自社で最初から適正工期を提示した案件では契約への反映率が高く(調査では88.0%がそのまま反映)、一方で初回は発注者提示の工期だった案件でも5.9%は受注者の説明により発注者の理解を得て適正な工期に修正して契約できたとされています。

受注段階で粘り強く協議し、発注者を説得して工期を延長させたケースが一定数あったことは、現場の努力の成果と言えるでしょう。

しかしながら、5.3%の案件では「真に適切な工期」が契約に反映されませんでした。

全体の数%とはいえ、具体例として以下のような理由が挙げられています

  • 改修工事のため工事可能日が土日祝日に限定されていたテナントビルの改修などでは平日営業日の工事が難しく、土日祝しか作業できないため工期全体がどうしても短くなってしまうケース。
  • 夜間作業を組み入れた短工期で受注せざるを得なかった発注者の要望や営業上の事情から、残業・夜勤を前提とする短い工期で契約してしまったケース。

これらは特殊事情によるものですが、「どうしても適正工期が取れない例外事例」として課題に残っています。

改修やリニューアル工事では稼働中施設への配慮から工期に制約が出やすく、今後の対策検討が必要でしょう。

また営業上の競争などで無理な条件を呑まざるを得なかった事例については、業界全体でのコンプライアンス意識向上や発注者側の理解促進によって減らしていくことが求められます。

とはいえ、全体としては「適正な工期でなければ受注を回避する」という企業も出てきているなど状況は好転しています。

適正工期を社内ルールとして徹底する企業の増加により、発注者も徐々に「無理な工期では業者が応じてくれない」と認識し始めています。

日建連も「周辺環境が整ってきている。

適正な工期が業界に定着すると良い」という見解を示しており、今後さらに発注者の意識改革が進めば5%の未達成ケースもゼロに近づいていくことが期待されます。

適正な工期確保の進展がもたらす効果と残る課題

適切な工期の確保が広がることで、建設業界には様々なプラス効果がもたらされています。

現場の安全管理や施工品質の向上、人材の定着・確保など、その恩恵は大きい一方、発注者側の理解やコスト増への対応など今後克服すべき課題も残されています。

本節では、適正工期確保の進展によるメリットと、引き続き注視すべき課題について整理します。

適正な工期確保によるメリット

現場の安全性と施工品質の向上

工期に余裕があることで、現場の働き方が計画的かつ安全になります。長時間労働や突貫工事が減れば、作業員の疲労が蓄積しにくくなり、ヒューマンエラーの減少につながります。
実際、従来は工期が逼迫するあまり「急いで施工しようとしてミスや事故のリスクが高まる」懸念がありました。

適正な工期が確保されれば、落ち着いた施工計画の下で十分なチェック体制を維持でき、施工ミスの低減や品質確保に寄与します。
加えて、安全管理面でも余裕を持った人員配置や休養が取れるため、労働災害の防止にも資するでしょう。

過労による判断ミスや注意力低下が減ることは、安全・品質両面で大きなメリットですし、発注者にとっても、工期を適正に設定することは結果的に高い品質の建築物を得ることにつながるため、中長期的には「適正な工期=発注者メリット」への理解が進むと期待されます。

人材確保と離職防止への効果

働き方改革で特に重要なのが、人材の定着・確保です。従来の建設業はきつい労働環境のイメージから若者の敬遠を招き、「人が入ってこない」 「経験者が疲弊して辞めてしまう」という課題がありました。

しかし適正な工期の下で週休二日制が浸透し、残業も適正範囲に収まるようになれば、建設業の職場環境は大きく改善します。

実際、週休2日取得の現場が増えつつあることは建設業界の魅力発信にもつながり、国交省もリーフレット等で「建設業でも働きやすい環境づくりが進んでいる」ことをアピールし始めています。

適切な工期確保は、建設現場で働く人々のワークライフバランスを向上させ、結果的に技能者の離職防止や新規入職促進に直結する施策なのです。

教育訓練の時間確保

また、十分な工期があることで教育訓練の時間を確保しやすくなるという効果も見逃せません。

これまで時間に追われて新人育成が後回しになりがちだった現場でも、ゆとりが生まれることで計画的にOJTや安全教育を実施できます。

生産性向上のための新技術導入 (ICT施工やプレハブ工法等)にも時間を割けるようになるでしょう。

働く人に優しい職場環境は、生産性と技術力の向上にもつながる好循環を生むのです。

発注者側の理解促進とコスト面の課題

適正な工期確保をさらに推進するには、発注者側の意識改革と協力が不可欠です。

民間発注の場合、工期を延ばすことはしばしばコスト増加と表裏一体だからです。

工期が長くなればその分、現場管理費や人件費がかさみ、発注者にとっては工事費上昇要因となります。

したがって「早く安く仕上げてほしい」という発注者心理とのせめぎ合いが常に存在します。

受注者側としては、安全や品質、労働環境のために必要な工期延長であることをエビデンスをもって説得することが求められます。

国交省が提供する工期算定ツールの活用や、実例データを用いた説明などで発注者の理解を得る取り組みが今後一層重要になるでしょう。

幸い、近年は発注者側にも適正工期確保の機運が高まりつつあります。

例えば不動産デベロッパーなどでは、自社のESG方針の一環として協力会社の働き方改革に配慮し「ゆとり工期」での発注を志向する動きも出ています。

また、品質事故や労災トラブルによるプロジェクト遅延リスクを避けるため、無理のないスケジュールを組む方が結果的に得策との認識も広がり始めました。

とはいえ、中小の発注者や工期短縮を至上命題とする案件(テナント入居日が決まっている商業施設等)では依然として適正工期の優先度が低い場合もあります。

業界全体で成功事例を共有し、「適正な工期設定はWin-Winである」ことを広めていく必要があるでしょう。

もう一つの課題は生産性向上と段取り力です。

工期を確保するといっても、ただ漫然と作業期間を延ばせば良いわけではありません。

限られた作業時間内で最大の成果を上げるには、綿密な工程管理と技術革新が求められます。

プレキャスト工法の活用やICT施工で作業効率を上げ、短い労働時間でも工期内に高品質な仕事を終えられる体制を構築することが理想です。

適正な工期=ダラダラ仕事をするという誤解を避け、「限られた日数・時間で最大限効率よく働くために工期を確保する」という建設プロジェクトマネジメントの高度化が今後のテーマです。

これにより発注者のコスト負担感も和らげることができます。

総じて、適正な工期確保は多くのメリットをもたらす一方、発注者の理解促進や施工計画の工夫といった課題も残されています。

しかしこれらは乗り越え可能な課題であり、業界の創意工夫と対話によって解決していくことでしょう。

適切な工期設定の定着に向けて

本記事では、「建設業 工期実態調査」というテーマに沿って、適切な工期設定の重要性と現状、背景にある働き方改革や業界の取り組みについて詳しく解説しました。

日建連の調査結果からは、民間建築工事の約9割で適正な工期が確保され、働き方改革に沿ったプロジェクト運営が着実に広がっていることが分かりました。

これは、2023年の「適正工期確保宣言」を契機に業界全体で努力を重ねてきた成果であり、企業が自主的に無理な受注を控えるようになった点も含めて大きな前進と言えます。

適切な工期確保は、現場の長時間労働を是正し、安全と品質を守り、人材を未来につなぐための鍵になるでしょう。

【参考資料】

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