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前田建設工業株式会社(以下、 前田建設)は、 建設技術者向けの資格学習アプリ「サクシェアPASS」を開発し、 2026年1月よりサービス提供を本格開始しました。
このアプリは1級土木施工管理技士試験の学習支援を目的としており、 建設業界で深刻化する人材不足や技術者の高齢化といった課題に対応する人材育成策として注目されています。
本記事では、 前田建設工業が資格取得支援に乗り出した背景や「サクシェアPASS」の内容、 そして1級土木施工管理技士資格保有者の現状と今後の展望について、 施工王の視点から詳しく解説します。
前田建設工業が資格取得支援に踏み切った背景
建設業界の人材不足と資格取得支援の必要性
日本の建設業界では近年、 人手不足と技術者の高齢化が深刻な問題となっています。 特に現場を統括する施工管理技士の人材不足は顕著で、 各社が優秀な人材の確保に苦慮している状況です。 インフラ整備や災害復興工事の需要増に対し、 「1級土木施工管理技士」のような高度な資格を持つ技術者への需要は高まる一方です。 公共工事の入札では1級資格者の配置が求められるケースも多く、 企業にとって資格保有者は「いなくては成り立たない」戦力と言えます。 実際、 一級資格保持者は複数の企業から声がかかるほど引く手あまたの状態であり、 資格保有は転職市場でも大きな武器となっています。
しかし一方で、 施工管理技士の有資格者数の増加ペースは、 ベテラン世代の大量退職に追いついていません。 有資格者の平均年齢も高齢化しており、 毎年の合格者が引退者数に追いつかないことで現場では慢性的な担い手不足が続いています。 こうした状況に危機感を抱いた国は、 施工管理技士試験の制度改革にも着手しました。 受験資格の緩和や試験回数増加といった施策です。 例えば2019年度(令和元年)から段階的に制度が見直され、 1級施工管理技術検定では2024年度より「19歳以上」であれば学歴・ 実務経験不問で一次検定を受験できるように条件が緩和されています。
こうした制度改革の効果もあり、 一次試験の受験者数は大幅に増加しました。 実際、 1級土木施工管理技士一次検定の受験者は制度改正初年度の2024年に前年度比約1.5倍(+55%)に急増し約5.1万人に達しました。 翌2025年も若干の減少はあったものの約4.8万人と高水準を維持しており、 制度改正前の水準を大きく上回っています。 合格率は受験者急増に伴い49.5% (2023年)から44.4% (2024年)へ低下しましたが、 これは難易度の上昇というより新規層(学生や未経験者)の参入で受験者層の学習度に差が生まれたためと分析されています。 言い換えれば、 「誰でも挑戦できる時代」になった反面、 「合格できるかどうか」は従来以上に適切な勉強方法に左右される時代になったとも言えます。 このように人材不足と若手台頭という両面の課題がある中、 資格取得を効率的に支援する仕組みへの期待が高まっていました。
前田建設工業がアプリ開発に至った経緯
前田建設工業が「サクシェアPASS」の開発に乗り出した背景には、 上述の業界課題に対する危機感と、 自社および業界全体の若手育成を支援したいという狙いがありました。 建設業界ではこれまで現場OJTが中心で計画的な座学の機会が確保しづらく、 若手技術者が忙しい現場業務の合間に勉強時間を捻出するのは容易ではありません。 こうした事情から、 「いつでもどこでも学習できる環境」を提供することが急務となっていました。
前田建設は以前から技術者育成に力を入れており、 デジタル技術の活用による教育効率化にも関心を寄せてきました。 実際、 同社は「建設×テクノロジーによる社会価値の創造」を掲げてDX (デジタルトランスフォーメーション) 戦略を推進し、 現場の生産性向上だけでなく人材育成や教育分野へのデジタル技術活用にも注力しています。 こうした方針の下で、 建設業界の教育DXの一環として資格学習を手軽かつ効果的に行える仕組みづくりが社内プロジェクトとして立ち上がりました。 その成果が、 学習アプリ「サクシェアPASS」の開発です。
同アプリの開発にあたってはAI(人工知能)の活用にも踏み込み、 問題の自動生成・ 最適化技術を取り入れています。 これにより、 短期間でのアプリ開発と質の高い学習コンテンツの両立を実現しました。 前田建設は2025年11月にこのアプリの一次試験対策版を正式リリースすると発表し、 それに先立ち先行申込受付を開始しました。 このように、 現場のニーズとデジタル技術を結びつける形で「サクシェアPASS」は誕生したのです。
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前田建設工業の企業概要と特徴
創業から現在までの歩みと土木分野への強み
前田建設工業株式会社は1919年創業、 1946年設立の老舗ゼネコンです。 本社は東京都千代田区にあり、 インフロニア・ ホールディングス傘下の一員として総合建設業を営んでいます (2021年に持株会社制へ移行)。 長い歴史の中で、 日本一の高層マンション建設や東洋一のダム建設、 世界最長級の海底トンネル建設など、 多くの大型プロジェクトに携わってきました。 特に土木工事に強みを持つ企業として知られており、 ダム・ トンネルなどインフラ分野の施工で豊富な実績を誇ります。 また海外プロジェクトにも積極的で、 国外での施工実績が多い点も同社の特徴です。 こうした実績に裏打ちされた技術力と信頼から、 前田建設は国内では準大手ゼネコンに位置付けられ、 インフラ整備に欠かせない存在となっています。
現在の資本金は284億円(2023年3月期)で、 従業員も数千人規模にのぼります。 土木・ 建築工事の両領域でバランスよく事業を展開し、 公共事業から民間開発まで幅広い案件を手掛けています。 近年では従来の「請負」モデルに留まらず、 空港運営権などコンセッション事業への参入やPPP/PFI事業にも積極的で、 事業領域の拡大と多角化を図っています。 創業者の信条である「良い仕事をして顧客の信頼を得る」という理念を受け継ぎつつ、 新たな分野にも挑戦し続ける企業姿勢が伺えます。
DX推進と人材育成への取り組み
前田建設工業の特徴として、 ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)の積極的な活用が挙げられます。 建設業界の中でも同社は早くからBIM(ビルディング・ インフォメーション・ モデリング)やICT施工を現場に導入し、 生産性向上や品質管理の高度化に定評があります。
また、 人材育成の面でもデジタル技術を活用する姿勢を鮮明にしています。 前述のように、 建設業界全体の課題である若手技術者育成に対して、 前田建設は社内外向けの学習プラットフォーム開発という形で応えました。 これは単に自社社員のスキルアップを図るだけでなく、 業界全体に開かれた教育支援を提供しようという意欲的な取り組みです。
実際、 「サクシェアPASS」のプロジェクトは前田建設における建設教育DX推進の一環として位置づけられており、 AI技術の導入など先進的な手法が採用されました。 前田建設工業は、 このように最新テクノロジーを活用して社会課題の解決に貢献しようという企業姿勢を強く打ち出しており、 「サクシェアPASS」の開発・ 提供もその流れの中に位置づけられると言えるでしょう。
資格取得支援アプリ「サクシェアPASS」の内容と特徴
サービス開始までの経緯と初期反響
前田建設工業は2025年11月に「サクシェアPASS」一次試験対策版の先行申込受付を開始し、 翌2026年1月より正式にサービスを公開・ 開始しました。 リリース当初は法人向けに年間ライセンスとして提供され、 まず同社社員やグループ企業を中心に導入が図られましたが、 サービス開始時点で約20社・ 200名規模の申込みがあり、 これは当初予想を上回る反響だったといいます。 これは前田建設以外の企業からも申し込みがあったことを示しており、 業界内の資格取得支援ニーズの高さをうかがわせます。
サービスインと同時に、 従来は法人一括のみだった申込・ 利用形態が拡張され、 受講者個人単位での利用申込(個別請求)にも対応しました。 これにより、 企業単位だけでなく個人で資格取得を目指す技術者もこのアプリを利用できるようになり、 導入規模や運用形態に応じた柔軟な活用が可能となっています。 料金は法人向けー括ライセンスのほか個人プランも用意されており、 専用サイト上で案内されています。
サービス開始後のサポート施策として、 2026年2月には第1回全国模擬試験(実力判定テスト)が実施される予定です。
さらに今後の計画として、 2026年7月に二次試験対策版のリリースが予定されています。 一次検定合格者が受験する実地試験(二次検定)に対応したコンテンツを提供し、 学習範囲を拡充する狙いです。
前田建設はこのアプリを、 自社グループ内に留まらず業界全体に提供していく方針を示しており、 将来的には学生・ 若手技術者・ 海外人材など幅広い層を対象とした建設業界の学習支援プラットフォームへと展開していく計画です。
こうした展望から、 「サクシェアPASS」は単なる資格試験対策ツールにとどまらず、 業界の人材育成インフラの一翼を担う存在として位置付けられています。
アプリの機能と学習効果
「サクシェアPASS」の最大の特徴は、 1次試験合格に必要な学習要素をスマホ1つに集約した点にあります。 アプリ内には膨大な問題データベースと多彩な学習モジュールが搭載されており、 受講者は移動中や休憩時間など好きなときに効率良く勉強を進めることができます。 以下に主な機能とメリットをまとめます。
- 豊富な演習問題: 基礎力養成のため、アプリには2,000問以上の厳密された過去問題、予想問題が収録されています。分野ごとに演習を重ねることで、受講者は重要知識を漏れなく習得できる構成です。解説も丁寧に付されており、独学でも理解を深めやすくなっています。
- 模擬試験(実力テスト) 機能: 本番形式の模擬試験を3回分実施できる機能があり、試験時間内で解答する訓練や問題傾向の把握に役立ちます。模試実施後にはスコアや合格推定判定が表示され、弱点分野が明確になるため、以降の学習計画にフィードバックできます。特に一次検定直前期には、自分の実力を客観視し苦手克服に注力することで合格率向上が期待できます。
- 学習レポート(進捗見える化)機能: 月次レポート機能によって、各受講者の学習進捗状況や正答率、分野別の弱点などが可視化されます。受講者自身はもちろん、企業で導入している場合は管理者(上司や人事担当者)がチーム全体の取り組み状況を把握することができます。これにより、「どの社員がどの分野で躓いているか」 「誰が学習遅れ気味か」といった情報が一目で分かり、必要に応じたフォローアップや声かけが可能となります。従来のように各人の自主性任せにするのではなく、組織的な伴走支援ができる点で、人材育成ツールとしても大きな価値があります。
以上の機能セットに加え、 「サクシェアPASS」はAI技術による学習最適化も組み込んでいる点が特徴的です。 前田建設によれば、 こうしたAI活用による個別最適化により「短期間で質の高い学習体験を提供する」ことが可能になったといいます。
また、 スマートフォンで完結する手軽さも大きなメリットです。 「いつでも・ どこでも学べる」環境の提供は、 忙しい建設技術者にとって非常に有難いポイントでしょう。 従来は仕事と勉強の両立が難しく資格取得を諦めていたような人でも、 スキマ時間学習を積み重ねることで合格に必要な知識を無理なく蓄積できると期待されています。
1級土木施工管理技士の重要性と資格保有者の現状
建設現場を支える1級施工管理技士の役割と価値
1級土木施工管理技士は、 土木工事現場の監理技術者・ 主任技術者になれる国家資格であり、 建設業界において極めて重要なポジションを担う人材です。 1級と2級の違いは大きく、 特に取り扱える工事規模と責任範囲において1級は圧倒的に上位です。
公共工事や一定規模以上の土木工事では、 法律上1級資格を持たなければ主任技術者や監理技術者になれない決まりになっており、 企業の受注活動にも直結する重要ポストを任せられる存在となります。 そのため建設会社は組織に1級資格者を確保することに力を入れており、 特に元請(ゼネコン) 企業では事業継続の要として位置付けられています。
資格保持者本人にとっても、 その価値は非常に大きいものがあります。 まず待遇面では、 多くの企業で資格手当が支給されたり役職登用で有利になったりするケースがあり、 年収面でも差が生じる要因となります。 若手であっても1級資格を取得していれば現場代理人(現場所長)に抜擢される例もあり、 早期から責任あるポジションを任されるチャンスが広がります。
さらに将来的なキャリア選択肢という点でも有利で、 管理職への昇進はもちろん、 独立開業時の信用や対外的な信頼性にもつながるため、 「キャリアの切り札」とも言える資格です。 単に扱える工事の規模だけでなく、 社会的評価や企業からの期待値にも影響する資格であり、 業界全体から求められる人材として長期的に活躍の場を広げていける存在です。
資格保有者の不足と高齢化の進行
一方で、 こうした1級施工管理技士の資格保有者層には偏在と高齢化の問題が生じています。 実際、 国土交通省の統計によれば建設技術者全体の約1/4が60歳以上という状況で、 ベテランの引退が相次ぐ一方で若手補充が間に合わず、 現場では深刻な世代ギャップが生じています。
資格試験の合格者層にも高齢化傾向が見られました。 つい最近まで、 1級施工管理技士試験は受験資格に実務経験年数が求められていたため、 合格者の多くが30代後半~40代以上で占められていたのです。 若手技術者が資格を取得する前に業界を去ってしまったり、 試験勉強の時間を捻出できず断念したりするケースも多く、 結果として現場のベテラン偏重が進む悪循環が生まれていました。 施工管理技士の平均年齢が上昇し続けたことは、 業界にとって大きなリスクでした。
この危機的状況を打開すべく、 前述の通り国も制度改革に乗り出し、 試験制度の大幅な緩和・ 見直しを行いました。
実際、 大学生や新社会人といった20代前半の合格者も徐々に増えてきており、 資格試験の合格者層に若返りの兆しが見え始めています。 例えば2024年度一次検定では19~24歳の若年層が全合格者の18.1%を占め(前年比+1.0ポイント)るまでになりました。 女性の合格者も年々増加傾向で、 20女性合格者比率が13.4%と過去10年間で最高を記録しています。
このように裾野の拡大が進みつつあるものの、 裏を返せば「誰でも挑戦できる時代」に見合った支援策を講じなければ、 「挑戦者は増えたが合格者は思うように増えない」という事態にもなりかねません。 実務未経験の合格者が今後増える分、 企業側には計画的な現場経験付与や教育体制の整備がこれまで以上に重要となるでしょう。
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まとめ
前田建設工業がリリースした資格取得支援アプリ「サクシェアPASS」は、 建設業界の人材育成におけるデジタルトランスフォーメーションの好例として高い注目を集めています。
重要なのは、 こうしたデジタル支援策が人材不足解消の一助となり、 現場に新風をもたらすことです。施工管理技士の人材争奪戦が激化する中、 社員の成長をサポートできる企業が人材定着でも優位に立つ時代です。
今回の前田建設工業の取り組みは、 「建設業界の学び方」を変える可能性をしています。 現場の忙しさを理由に資格取得を諦めていた人も、 デジタルツールを活用すれば合格への道筋を描けるかもしれません。
読者の中でこれから1級土木施工管理技士を目指す方がいれば、 ぜひこうした最新の学習サービスも積極的に活用してみてください。 資格はゴールではなくスタートです。 その取得過程で培った知識やネットワーク、 そして合格後に広がる職域は、 皆さんの建設キャリアを飛躍させる土台となるでしょう。
施工王も引き続き、 皆さんのキャリア形成に役立つ情報提供とサポートに努め、 建設業界で活躍する人材の未来を共に切り拓いていきたいと考えています。
参照元:
前田建設工業株式会社/「サクシェアPASS先行申込受付開始の案内」,「サクシェアPASSサービス開始のご案内」,会社概要
国土交通省/施工技術検定の受検資格,関東地方整備局/建設業法26条(R7.2版)
一般財団法人全国建設研修センター/令和7年度1級土木施工管理技術検定「第一次検定」合格者
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