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竹中工務店が描く宇宙建築の未来とは?月面長期滞在への挑戦

2025年12月、竹中工務店が「月面で長期滞在を可能にする宇宙建築技術構想」を発表し、建設業界内外から注目を集めました。

月面に直径約30mの大空間を生み出す「ルナドーム」や、高さ150m級の「ルナタワー」といった壮大な構想は、宇宙に人々が暮らす時代の到来を見据えたものです。

本稿では、この宇宙建築構想の内容と背景、さらには建設業界への影響や今後の展望について、施工王の視点から解説します。

竹中工務店の月面建築構想とは

竹中工務店が発表した月面建築構想は、月の過酷な環境下でも人間が安全かつ快適に暮らし続けるための建築プランです。ルナドームやルナタワーなど、画期的な施設によって月面での長期滞在を実現しようとする狙いがあります。

宇宙建築構想の概要

竹中工務店は2025年12月10日、 月面で人間が長期間“生き生きと暮らす”ための宇宙建築技術構想を明らかにしました。

同社が設立した「宇宙建築タスクフォース (TSX)」による研究成果として公開されたこの構想では、 月面における恒久的な居住環境を段階的に整備していく青写真が示されています。

その中心的な要素が、 ルナドーム (Lunar Dome)とルナタワー (Lunar Tower)です。 直径約30m・高さ約15mにも及ぶ大空間を確保するルナドームと、 最大高さ150mに達し通信・エネルギー供給のインフラともなるルナタワーという2大コンセプトによって、 人類の月面定住に必要な居住空間と生活基盤を提供しようというのです。

宇宙建築構想の狙いと注目ポイント

今回の構想発表が特に注目を集めたのは、 それが「宇宙飛行士だけでなく我々一般の人々も住まう空間」を見据えている点です。 単なる未来の夢物語ではなく、 実現可能性と快適性の両立を追求していることが特徴で、 建設会社が培ってきた技術力を宇宙に応用する姿勢が随所に感じられます。

竹中工務店は展示会「宇宙のくらしをつくる建築展」を開催してこの構想を公開し、 会場では無人探査ロボットの模型やベースキャンプ施設の試作モデルなども展示されました。

宇宙開発の専門家だけでなく建設業界関係者からも、 「月での生活」を具体的に思い描かせる内容として大きな関心を集めています。

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竹中工務店とはどんな会社か

竹中工務店は創業400年以上の歴史を持つ、 日本を代表するスーパーゼネコン(大手総合建設会社)の一角です。 高度な建築設計・施工技術で数多くのランドマークを手掛けてきた同社は、 近年宇宙分野にも挑戦を始めており、 その一環として社内に宇宙建築専門チームを立ち上げています。

老舗ゼネコン・竹中工務店の概要と実績

竹中工務店は1610年創業という長い歴史を持ちながら、 常に技術革新を追求してきた老舗企業です。 高層ビルや大型商業施設、 公共建築まで国内外で数多くのプロジェクトを手掛けており、 日本を代表するトップクラスの建設会社として知られています。

実際、 売上高は連結で1兆円規模に上り (2024年度で約1.6兆円)、 約7,800名の社員を擁する業界有数の規模を誇ります。

また、 竹中工務店は設計から施工まで一貫して手掛ける建築専業のゼネコンであり、 その設計力の高さから建築業協会賞(BCS賞)を歴代最多受賞するなど評価も高いです。

宇宙建築タスクフォース (TSX)の設立と目的

こうした竹中工務店が宇宙分野に本格参入した象徴が、 2023年に社内横断で結成した「宇宙建築タスクフォース(TSX)」です。 宇宙開発や建築設計に情熱を持つ有志の一級建築士らが集い、 未来の宇宙建築を追求するこのチームは、 東京大学やJAXAなどの学術機関・企業とも協働しながら研究開発を進めています。

TSXの目標は「2050年代に月で地球と同等以上のQOL(生活の質)を実現すること」であり、 そのために快適性と実現性の両立を掲げ、 素材から施工方法まで含めた具体的な建築コンセプトの開発に取り組んでいます。

今回発表された月面建築構想は、 まさにこのTSXの活動成果の一端と言えるでしょう。

宇宙建築とは何か: 月で建物を作る課題と技術

宇宙建築とは、 宇宙空間(主に月や火星など)に人間の居住空間を構築する建築分野です。 月面では大気もなく極端な温度変化や放射線など地球とは全く違う環境のため、 地上の常識が通用しません。 そのため軽量かつ高強度な構造や、 無人での施工技術など、 独自の工夫が求められます。

月の過酷な環境と建築上の課題

月面で人が生活するには、 克服すべき環境上の課題が数多く存在します。 まず大気がほとんど無いため真空に近く、 昼夜で温度差が非常に大きいことが挙げられます。 さらに地表には強い放射線が降り注ぎ、人間にとって厳しい条件が揃っています。  こうした環境下で人が安全に活動できる空間を作るには、 地球以上に軽くて強い構造で、 内部に広い加圧空間を確保できる建築技術が必要になります。

月面への物資輸送にも制約があります。 ロケットで運べる荷物の大きさや重量には限りがあるため、 一度に大量の建材を持って行けません。 加えて、 常時人手を投入することもできないので、 できる限り自動化された施工が求められます。 つまり、 月面建築では「少ない資材で効率的に大空間を作り、 かつ人手に頼らない建設」を実現しなければならないのです。

この課題に対し、 竹中工務店は地上で培ったドーム建築技術や素材技術、 ロボット技術を応用することで解決策を提示しています。

ルナドームとルナタワーの構造・技術的特徴

月面の地下空洞 (溶岩チューブ) 内部に建設されるルナタワーと複数のルナドームの概念図。 竹中工務店の構想では、 高さ100~150m級の塔が地下から地上へ伸び、 人々の居住空間となるドームを支える。

竹中工務店の宇宙建築構想の核となるルナドームとルナタワーには、 地上の建築技術を応用した巧みな工夫が凝らされています。 ルナドームは、 月面に安全な大空間を作り出す居住施設です。

一方のルナタワーは、 月面で暮らす人々を支える多機能インフラ塔です。 クレーターや縦穴といった地形を活用し、 地下空洞から地表へ向けて垂直方向に構築されるこの塔は、 通信中継塔やエレベーター、 太陽光の集光・照明装置など様々な役割を担います。

特徴的なのはその構造形式で、 直径数メートルサイズの円形リング状部材を何百個も積み上げて形成する点です。 リング部材4個で正四面体状の基本ユニットを作り、 それを上下に重ねていくことで高さを自在に変えられるタワーを組み立てます。 

項目 ルナドーム ルナタワー
主な役割 居住空間(人が活動できる大空間を提供) インフラ拠点(通信・移動支援・採光など)
規模 直径約30m・高さ約15m 高さ最大約150m
構造形式 ジオデシックドーム構造 リングトラス積層構造
主素材 CFRP(炭素繊維強化プラスチック) CFRP製リング部材
特筆点 内部に気圧・酸素を確保し生活空間化 地下空洞から地上へ伸び、多目的タワーとして機能

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なぜ今、宇宙建築に挑むのか

近年、 月を「人類が滞在する拠点」として活用しようとする国際的な動きが本格化しています。 竹中工務店の宇宙建築構想は、 そうした流れの中で建設会社として宇宙に貢献する狙いがあります。 同時に、 より多くの人々が宇宙で暮らす時代に向けて、 居住空間のQOL(生活の質)を高めることを目標に掲げています。

月を拠点とする国際的な動き

21世紀に入り、 宇宙開発は政府だけでなく民間企業も参入してスピードを増しています。 中でも月探査については、 アメリカのアルテミス計画に代表されるように、 人類を再び月面に送り込み今度は継続的に活動することが現実的な目標となりました。

実際、 世界では月を「短期滞在の場所」から「研究や活動の恒久的拠点」へと変えていこうとする動きが進んでいます。 NASAをはじめ各国の宇宙機関が月面基地構想を打ち出し、 日本もアルテミス計画に参加して2030年代の有人月面拠点設置を目指しています。竹中工務店の挑戦も、 この人類の月進出という大きな潮流の一端を担うものと言えるでしょう。

宇宙生活のQOL向上を目指す意義

竹中工務店の宇宙建築構想に一貫しているキーワードが「宇宙QOL(Quality of Life)」です。 従来の宇宙開発では、 与圧の効いた狭いモジュール内で「生き延びること」が最優先され、 快適性は二の次でした。 宇宙飛行士たちは長期間にわたり窮屈な環境や精神的ストレスに耐える必要があり、 「我慢」が前提の暮らしだったのです。

しかし未来において、 月や火星に数十人規模で人が滞在するようになれば、 安全に生存するだけでなく快適に暮らすことが求められます。 そこで竹中工務店は、 宇宙建築にも地上の住宅や都市計画と同様に快適性や豊かさを追求すべきだと捉えました。

例えば、 竹中工務店は以前から宇宙での「食」の質にも着目し、 国際宇宙ステーションで生野菜を育てる実験や月面農場のコンセプト研究を進めてきました。 展示会でも宇宙でレタスを栽培するプロジェクトの紹介があり、 栄養や食事の楽しみといった生活要素まで視野に入れていることが伺えます。

また同社は地上で培った健康配慮型建築「健築®」や、 人の生体情報を活用した空間評価ツール「GISTA®」、 VR技術による設計シミュレーション技術 「visiMAX®」といった先端技術も宇宙に展開しようとしています。 これらは宇宙でも地上でも有用な技術であり、 宇宙での快適な暮らしづくりが同時に地上の建築技術をさらに進化させることにもつながるでしょう。

要するに、 竹中工務店の宇宙建築への挑戦は「単に月に建物を建てる」ことではなく、 「人類がどこに住んでも豊かに生活できる環境をつくる」という建築の本質的使命の延長にあります。 宇宙という極限のフィールドで人々の暮らしを支える取り組みは、 建築の可能性を大きく押し広げる意義深い挑戦なのです。

今後の展望:竹中工務店の宇宙建築ロードマップ

竹中工務店は、 月面建築構想をすぐに実現するのではなく、 段階的なロードマップを描いています。 その計画によれば、 2030年代に小規模な拠点を構築し、 2040年代には数十人規模が暮らせる基地へ発展、 さらに将来的には月面都市とも言える大規模施設を目指すとされています。

段階的に進む月面基地計画(2030年代)

同社のロードマップでは、 まず2020年代後半から2030年代前半にかけて少人数用の拠点(ベースキャンプ)を月面に構築することが目標とされています。

具体的には2人用および4人用の小型基地モジュール 「Lunar BASE CAMP」を提案しており、 月面着陸船に搭載して運搬後、 現地で折り畳み構造を展開して設営する仕組みです。

2人用は超軽量・コンパクトながら個室を備え、 4人用には簡易シャワーや植物栽培スペースも設けて水・空気の再生循環機能を持たせるなど、 半年程度の滞在に耐えうる設備を持ちます。 竹中工務店はこのベースキャンプの実証として、 2026年度に極小型の月面実証機を製作する計画です。

次の段階として、 2030年代後半には移動型の中継拠点が検討されています。 これは「Lunar LOTUS」という可搬型多機能シェルターのコンセプトで、 有人与圧ローバー(宇宙飛行士が乗り込める月面車)で牽引して運べる複数の居住キャビンから成ります。

長期の探査ミッションで宇宙飛行士が狭い車内に閉じこもりきりになる負担を軽減し、 万一のトラブル時には緊急避難所ともなる施設です。 LOTUSではベッドルームや生命維持装置、 簡易ラボ等の機能を持つキャビンを現地で連結・展開し、 宇宙飛行士が宇宙服を脱いで休憩できるゆとりある空間を提供します。 

月面都市への発展(2040年代~2050年代)

ロードマップのフェーズ4 (2040年代)では、 一度に40人以上が生活できる本格的な長期運用基地「Lunar COSMOS」の実現が目標に掲げられています。 COSMOSではいきなり巨大な建物を造るのではなく、 畳1枚程度の床面積を基本単位とした居住ユニットを組み合わせ、 必要に応じて増設していくモジュール型の設計が特徴です。 主要な部材は日本のH3ロケットで打ち上げ可能なサイズに収まるよう設計されており、 将来的な拡張や分解移設にも柔軟に対応できる構造です。

そしてフェーズ5にあたる2050年代以降、 月面にはルナタワーやルナドームといった大規模建築が登場することになります。 これは単に居住施設というだけでなく、 「月に新しい社会が本格的に築かれた象徴」となるようなランドマーク的建造物です。 

竹中工務店の宇宙建築構想は、 このように小さな基地から始まり最終的には月面都市へと至るビジョンを包括的に示したものなのです。

宇宙建築が建設業界にもたらすもの

宇宙建築への挑戦は、 建設業界に新たな技術革新やビジネスチャンスをもたらすと期待されています。 極限環境での建設を通じて培われた知見は、 地球上の課題解決にも役立ち、 また将来的には建設技術者が宇宙で活躍する道も開かれるでしょう。

最先端技術の研鑽と地上への波及効果

竹中工務店の宇宙建築プロジェクトで開発・活用されている技術は、 そのまま地上の建設にも応用可能なものが多く存在します。

また、 月面で必要とされる省資源・高効率な建設手法は、 人口減少や職人不足といった地上の建設業界が直面する課題に対するヒントにもなります。 極限環境での都市づくりの知見は、 例えば災害に強いインフラや過疎地での効率的な建築にも応用できる可能性があります。 

さらに、 竹中工務店が宇宙農場や健康建築といった幅広い技術を結集していることから分かるように、 宇宙建築は異業種や異分野とのコラボレーションの場にもなっています。 これは建設業界にとって新たなイノベーションの機会であり、 建築のみならずエネルギー・通信・農業・医学など様々な領域との融合によって、 新しいソリューションやサービスが生まれる余地があります。

宇宙というフロンティアへの挑戦が、 結果として建設業界全体の技術水準を押し上げ、 ひいては社会全体の発展に寄与する効果が期待できるでしょう。

建設技術者に広がる新たなフィールド

竹中工務店の構想がユニークなのは、 「宇宙飛行士ではない民間の専門家も月に行く時代」を見据えている点です。 彼らは建築設計や施工のプロフェッショナルであり、 そのスキルが宇宙で求められることで新たな活躍の場が生まれています。 将来的に月面基地の建設・運用には、 建設技術者や現場監督、 設備エンジニアといった“宇宙で働く建設職”が必要になるかもしれません。

実際、 竹中工務店の長期運用モジュールの構想では、 将来月を訪れる民間スペシャリスト(建設業者や研究者)が快適に滞在できる施設を想定しています。 言い換えれば、 建設業界のプロが宇宙開発に直接参加し、 人類のフロンティアを切り拓く役割を担う可能性があるのです。

宇宙建築への取り組みは、 建設業のイメージアップにも寄与するでしょう。 最先端の宇宙プロジェクトに関わることで、 若い世代にとって建設業が「夢のある挑戦的なフィールド」と映る効果も期待できます。普段の建築の延長線上に宇宙という新天地が広がっているのだと知れば、 建築を志す人々に大きな刺激となるはずです。

施工王としても、 こうした最前線の情報を業界の方々に伝えることで、 新たなキャリアパスやビジネスチャンスの創出に繋げていきたいところです。

まとめ

竹中工務店が打ち出した宇宙建築技術構想は、 建設業界が持つ可能性を宇宙にまで拡張する壮大な挑戦です。 月面で人々が安心して暮らせるドームやタワーを建てるというビジョンは、 一見突拍子もないようですが、 その裏には地上の延長線上にある堅実な技術と周到な計画があります。 実際、 ジオデシックドームや折り畳み式構造物など、 多くの要素は地球で実績のある建築手法の応用です。 

また、 このプロジェクトは宇宙開発という枠を超え、 地上の建設業にも新風をもたらすでしょう。 人が生きる場所を創り出す建築の力は、 地球に留まらず月や火星にまで及ぶかもしれないのです。

建設業界に身を置く私たちにとって、 竹中工務店の宇宙建築への挑戦は大きなインスピレーションです。  宇宙建築という新たなフロンティアに挑む動きが、 業界の技術者や企業にとって次なる成長の原動力になることを期待したいです。

そしていつの日か、 施工管理技士や建築士が宇宙で活躍する光景が現実となるかもしれません。 その未来に向けて、 私たちも日々研鑽を積んでいきましょう。

参照元:竹中工務店:「竹中工務店の宇宙建築」/「宇宙のくらしを作る建築展」/会社概要

/三菱電機:「竹中工務店TSXが挑む宇宙建築」/日刊建設工業新聞/建設円陣PLUS

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