建設業界の資格

第一種電気工事士とは?難易度や合格率、受験資格を解説

電気工事士として働く方の中には、さらなるスキルアップを目指し、資格取得を検討する方も多いでしょう。

電気工事士にまつわる資格にはいくつか存在しますが、その中でもスキルアップやキャリアアップにつながる第一種電気工事士という資格があります。

そこで今回は、第一種電気工事士の概要と難易度・合格率を紹介します。

電気工事士としてさらに活躍したいと考える方は、ぜひ本記事を参考にしながら資格取得を目指してみてください。

第一種電気工事士とは


第一種電気工事士とは、自家用電気工作物や一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物の工事が行える人のことです。

電気工作物は、電気の供給に必要な発電所、変電所のほか、工場やビル、住宅などに設置された受電設備や屋内配線など、電気使用において不可欠な設備の総称です。

その特徴から、自家用電気工作物、一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物には以下のようなものが該当します。

工作物の種類
自家用電気工作物 発電や変電など電気使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路など
一般用電気工作物 一般家庭や事業所、商店などの屋内配電設備や小さな出力の発電設備など
小規模事業用電気工作物 10kW以上50kW未満の太陽光発電設備や20kW未満の風力発電設備など

このように多くの工作物の工事が行える特徴から、第一種電気工事士の資格取得によって、電気設備工事のプロとして活躍できると言えるでしょう。

第二種との違い

電気工事士には第一種と第二種の2つ存在し、工作物の対象範囲などに違いがあります。

  • 第二種:一般用電気工作物及び小規模事業用電気工作物の工事に従事できる
  • 第一種:第二種電気工事士が従事できる電気工事に加えて、最大電力500kW未満の需要設備にかかわる電気工事に従事できる

なお企業によっては第二種の場合、工事の対象範囲が狭いために、資格手当がつかないことがあるようです。

一方、第一種は電気出力も広く扱える特徴から、10,000円ほどの資格手当を支給する企業があります。

資格の種類によって年収差があるので、スキルアップに併せて年収アップも目指したい方は、第一種電気工事士試験を目指すのが望ましいでしょう。


出典:job tag|電気工事士

また、厚生労働省の職業情報提供サイトで電気工事士の年収をみてみると、55〜59歳頃に682.44万円とピークを迎えていることが分かります。

年齢別の年収傾向から分かるように、電気工事士は経験の積み上げも年収に大きく影響することが考えられるでしょう。

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第一種電気工事士試験の難易度・合格率


第一種電気工事士試験を受験するにあたって、概要や難易度、合格率はどのようなものなのか気になる方も多いでしょう。

第一種電気工事士試験は四肢択一式の筆記試験と技能試験の2つで構成されており、筆記試験では試験時間120分の中で50問の問題を解き、100点中60点以上獲得できれば合格です。

一般財団法人電気技術者試験センターの資料では、過去5年の筆記試験の合格率は下表の通りでした。

令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
合格率(%) 54.1 52.0 53.5 58.2 61.6

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|令和2年度第一種電気工事士筆記試験の結果について
参考:一般財団法人電気技術者試験センター|令和5年度第一種電気工事士学科試験の結果について

一方、技能試験の合格率は下表の通りでした。

令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
合格率(%) 64.7 64.1 67.0 62.7 60.6

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|令和2年度第一種電気工事士技能試験の結果について
参考:一般財団法人電気技術者試験センター|令和5年度第一種電気工事士技能試験の結果について

技能試験では配線図や設問事項に従っての施工が求められます。
試験時間は60分と筆記試験に比べて短いですが、合格率平均は63.4%と受かりやすい試験と言えます。

第一種電気工事士の取得方法|受験資格や費用


筆記、実技どちらの試験も50%以上と合格率が高く、挑みやすいと考えられる第一種電気工事士。

では、受験資格や費用、試験日程等はどのようになっているのでしょうか。

受験資格

第一種電気工事士試験に受験資格はありません。

実務経験がない方や認定校に通学あるいは卒業していない方、外国籍の方であっても試験に挑むことが可能です。

ただし、試験に合格した後、免状交付を受ける際は3年以上の実務経験が必要になるので注意しましょう。

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|第一種電気工事士の資格取得フロー

試験日程

試験日程は年2回、上期・下期があります。

  • 上期:7月上旬(土曜日)
  • 下期:11月下旬(日曜日)

どちらの試験もパソコンを使用して受験可能なCBT(Computer Based Testing)方式の選択が可能です。

受験申込後にCBT方式を希望する方は、下記期間内に申し出ることでCBT方式による試験が可能になります。

  • 上期:3月上旬~下旬
  • 下期:8月下旬

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|第一種電気工事士の資格取得フロー

申込期間

申込期間は以下の通りです。

上期 2月上旬~下旬まで
下期 7月下旬~8月中旬まで

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|第一種電気工事士の資格取得フロー

申込方法・受験費用

申込方法は、インターネット申込と郵送申込の2つです。

支払い方法 概要 受験料(円)
インターネット申込 銀行振込・クレジットカード決済・コンビニエンスストア決済・Pay-easy決済 10,900
郵送申込 ゆうちょ銀行への振込 11,300

申込方法で受験料に変動があるので注意しましょう。

参考:一般財団法人電気技術者試験センター|第一種電気工事士の資格取得フロー

第一種電気工事士(免状取得)の対象工事


第一種電気工事士の試験に合格し、免状を取得した方の対象工事は以下の通りです。

  1. 自家用電気工作物のうち最大電力が500kW未満の需要設備の電気工事
  2. 一般用電気工作物等の電気工事(上述した工事作業のうち、ネオン工事と非常用予備発電装置工事の作業に従事する場合は別の認定証が必要)

また、一定条件を満たすことで電気主任技術者として働くことも可能です。

詳細については一般財団法人電気技術者試験センターの公式ホームページ、またはこちらのリンクをご確認ください。

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第一種電気工事士合格者(免状未取得者)の対象工事


第一種電気工事士試験に合格したものの、免状取得が済んでいない方の場合は、産業保安監督部長より「認定電気工事従事者認定証」の交付を受けることで簡易電気工事が可能になります。

この場合の簡易電気工事は、自家用電気工作物のうち、最大電力500kW未満の需要設備で、電線路を除き、電圧600V以下で使用する電気工作物の電気工事を指します。

また一定条件を満たすことで許可主任技術者として働くことも可能です。

詳細については一般財団法人電気技術者試験センターの公式ホームページ、またはこちらのリンクをご確認ください。

第一種電気工事士を取得するメリット


ここでは第一種電気工事士を取得するメリットを紹介します。

深い専門知識を身につけられる

第一種電気工事士の業務内容は、一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物の工事に加え、最大電力500kW未満の自家用電気工作物の工事も対象です。

第二種電気工事士と比べてあらゆる電気工事に従事できるので、積極的に取り組むことで専門的な知識を実務経験で身につけることができます。

転職を検討する場合も、これらの経験が即戦力につながる可能性があることから、第一種電気工事士の保有によって業務幅が広まるのは大きなメリットと言えるでしょう。

社内評価アップや年収アップにつながる

資格保有によって電気工事のプロという実力が示されるので、社内評価アップにつながります。

また多くの電気工事に対応できることから、企業の業務幅も広がり、より多くの案件を受注できるようにもなるので、業績アップにも貢献できます。

業績アップに貢献できれば、収入アップも期待できるので、資格保有によるメリットは企業・自分双方にとって大きいと言えるでしょう。

転職先の選択肢が増える

第一種電気工事士の資格を有することで、転職先の選択肢が増えるのもメリットです。

第二種は戸建住宅など小規模な建築物に限定されますが、第一種電気工事は小規模事業用電気工作物の工事に加え、一般用電気工作物など多岐にわたります。

住宅に限らず、ビルや工場といった大規模な電気工事を取り扱う企業にも応募できるので、多くの選択肢の中から自分に合った企業を探せるのは大きなメリットと言えるでしょう。

将来性がある

第一種電気工事士は業務幅が広い特徴から、あらゆる電気工事のプロとして活躍できます。

また、電気工事士は人々の暮らしに欠かせないインフラに不可欠な存在であることから、将来性の高い資格と言えます。


出典:経済産業省|電気保安人材の将来的な確保 に向けた検討について

経済産業省の資料によると、2022年にかけて第一種電気工事士保有者の多くが、60歳以上の高齢により退職すると予測しています。

このことから、第一種電気工事士はますます需要が高まる資格になると考えられます。

電気工事士の業務内容


ここでは電気工事士の主な業務内容を紹介します。

電気工事士は一般住宅をはじめ、高層ビルや工場、鉄道など幅広い場所での活躍が可能な職種です。

その中でも特に多いのが建設電気工事と鉄道電気工事の2つで、それぞれの業務内容と概要は下表の通りです。

建設電気工事
工事種類 概要
外線配線工事 発電所から電線を繋ぐために必要な電柱の設置および各建物・施設へ電線を配線する工事
屋内配線工事 建物の中で使う電気を配線する工事
冷暖房設備工事 エアコンや室内機・室外機の取付のほか、それに伴う電気・配管工事
ビル管理 ビルの管理・メンテナンスに伴う工事
鉄道電気工事
工事種類 概要
変電設備工事 電力会社から供給された高圧電力を屋内で使用できるよう低圧に下げる設備に関する工事
線路工事 線路の保守・メンテナンスに伴う工事
駅構内の電気設備工事 点検やメンテナンスも含まれる

このように、電気工事士と一口に言ってもさまざまな業務に携わることができるうえ、建設や鉄道など、人々の暮らしに不可欠な業界で活躍することができるのは、魅力的な職種と言えるでしょう。

第一種電気工事士は誰でも目指せる資格!

第一種電気工事士は、受験資格がないことから、誰でも目指すことのできる資格です。

免状取得を受ける場合3年の実務経験が必要になりますが、実務経験を経ることで体を使って技術や知識を高められるので、免状取得後はさまざまなシーンで活躍できると言えるでしょう。

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