建設業界の基礎知識

インフラ工事とは?種類や今後の動向、業界で働くメリットを解説

インフラ工事は、私たちの暮らしを支える、電気・ガス・水道などの工事を指します。
人々の暮らしに必要不可欠なインフラは、需要が高く、工事に携わる人の仕事量は安定しているといわれています。

需要が安定し続ける一方、インフラ工事にはさまざまな懸念も。
今回は、インフラ工事の概要に加えて6種の分野・メリット・今後の動向を紹介します。
安定した職種に就きたい方はぜひ本記事を参考にしてください。

インフラ工事とは


インフラ工事とは、人々が暮らす上で欠かせないもののことで、例えば、電気やガス、水道、鉄道、電話といった生活の基盤となっているものが含まれます。

インフラ工事にもさまざまな種類があり、電気インフラや水道インフラといった聞きなじみのあるものから、土木インフラや通信インフラなど、普段の暮らしでは見聞きする機会の少ないものもあります。

インフラ業界とは

「インフラ」という言葉にちなんだものとして「インフラ業界」がありますが、これは国民の生活を支える上述した項目のほかに、社会・経済といった世界に共通することも含まれています。

世界に共通することで例を挙げるとすれば、エネルギー供給や廃棄物収集、運搬や物資などが挙げられます。

しかし人々の暮らしを支えるといった広い視点で考えると、教育・医療・福祉施設といった業種もインフラ事業の一種です。

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インフラ工事における6種の分野


広い視点で見ると、人々の暮らしを支える数々の業種も該当するインフラ業界。
では、そのなかでも「工事」に絞って考えたとき、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的には、電気・水道・ガス・鉄道など、6種の分野に大別されます。

電気にまつわる分野

人々の暮らしに欠かせない電気は、主に発電所でつくられ、変電所・柱状変圧器を介して各家庭や工場、施設などに送られます。

電気を通すためには電柱の新設や交換、立て替えといった外側に関する外線工事と、各家庭や工場、施設などにコンセントやスイッチを設置するといった内線工事を行う必要があります。

水道にまつわる分野

水道工事には、水道局が管轄で行う公共事業工事のほかに、公共事業以外の住宅や工場、施設などを施工する工事の2つに分かれます。

公共事業工事には、上下水道の管理や水源の整備、道路の下などに設置された排水管の修繕などが該当します。

一方、公共事業以外の工事では、各家庭などで使用する水道メーター下の給水管の給水設備や、キッチン、洗面所、トイレといった排水設備の新設や修繕などが該当します。

ガスにまつわる分野

ガス工事の仕事では、ガス外管の敷設やガス栓の増設、老朽化による交換などが中心に行われます。

どれだけ規模の小さな住宅であっても、ガスの引き込み工事などを行うときは簡易内管施工士の資格が必要です。

また、ガス設備の工事を監督する場合には、ガス主任技術者という資格の取得を目指す必要があります。

鉄道にまつわる分野

鉄道に関わる工事としては、線路の設置やトンネル・駅・線路そのものの新設や修繕が該当します。
さらに細分化すると、駅内部のエレベーターやスロープ、待合室の設置なども含まれます。

鉄道に関わる工事に資格はないものの、1級(2級)土木施工管理技士や電気主任技術者といった資格が役立つといわれています。
また電車が運行中だと工事ができないため、主に夜勤で行われることの多い職種です。

通信にまつわる分野

通信関係の工事といえば、スマートフォンやタブレットなど、どこでもインターネットが使えるよう、対応エリアの拡大や通信速度の向上を目的とした工事が中心です。

例えば携帯基地局や無線通信局の新設や、老朽化した部分の補修、さらに通信ケーブルの敷設なども行います。
電気通信工事施工管理技士といった国家資格を取得しておくと業務に役立つといわれています。

道路にまつわる分野

誰でも歩きやすい道路を新設するほか、修繕・拡張といった工事が中心です。
また、事故が多発したり、事故の可能性が高い場所に標識やガードレールを設置する工事や橋の耐震化工事、道路の段差をなくすためのバリアフリー化なども行います。

なお、道路工事は一般的に土木会社が土を掘り、道路工事を依頼された会社がアスファルトやコンクリートで舗装する仕組みです。
そのため1つの現場に2つ以上の会社が一つになって道路工事を行うのが一般的です。

道路工事や土木作業員に特別な資格は必要ありません。
ただしロードローラを使用する場合は、締固め用建設機械運転特別教育を受講しなければなりません。

インフラ業界で働く3つのメリット


人々の暮らしに欠かせないインフラ業界。
複数の業種に大別されていますが、どのような部分に働くメリットがあるのでしょうか。

需要が続き仕事が安定している

人々の暮らしを支えるインフラだからこそ、仕事そのものも安定していることが挙げられます。
インフラが途絶えてしまえば一般的な生活は不可能です。

人が電気・ガス・道路などを使い続ける限りその需要は続き、その裏で安定して仕事ができることはインフラ業界で働くなかで最大のメリットといえるでしょう。

雇用環境が整っている

インフラ工事は人々の暮らしを支える仕事が中心。
需要の高い業界のため、工事を請け負う会社の経営も安定します。

会社の経営が安定していると、その分だけ従業員への待遇を手厚くできます。
そのため、経営が安定した会社ほど手当の種類が豊富だったり、福利厚生が充実していたりなど、雇用環境が良いケースが多いです。

インフラ工事は新設に限らず、老朽化による修繕工事も行うことも多いことから、長く安定した会社で働きたいといった方には大きなメリットといえるでしょう。

やりがいを感じられる

人々の暮らしを守る工事が基本だからこそ、大きなやりがいを感じられることも挙げられます。

人々の暮らしを守り、安定した供給へとつなげるインフラ工事は、いわば社会に貢献する仕事。
そのため社会に役立つ仕事に自分が携わっていることに、大きなやりがいを感じるシーンが多いです。

例えば一般住宅による水周りのトラブルを修繕したときは、依頼主から直接感謝されることも少なくありません。

「ありがとう」と言われることの多い仕事だからこそやりがいを身をもって感じることができ、さらに仕事へのモチベーション維持につなげられるのも、インフラ工事ならではのメリットです。

インフラ業界の課題


インフラ業界は、需要の高さから、工事の仕事を多く請け負う会社ほど手当や福利厚生が手厚いといったメリットがあります。

しかし工事そのものの需要は高くても、改善されにくい課題が多いのも現実です。ここではインフラ業界が抱える課題を紹介します。

既存設備の老朽化

インフラ業界では、道路やその下に設置する水道管などの新設以外に、これらを交換・修繕する工事も行います。

インフラの耐用年数はおよそ50年といわれていますが、1960年前後の高度経済成長期に設置されたインフラの多くはすでに寿命を迎えていて、早急な対策が求められています。

いささか古いデータではありますが、国土交通省のデータによると、平成25年3月時点の道路橋・トンネル・河川管理施設などの公共土木構造物は、全体の約18〜25%が築50年以上を過ぎています。

平成28年末の築50年を経過した分譲マンションは全体の約4.1万戸、30年を経過したものだと約109.7万戸もあるとしていることから、インフラは需要が高い一方で、これまで設置した設備そのものの老朽化対策にも力を入れる必要性が課題視されています。

参考:国土交通省|建設産業の現状と課題

人材不足の改善

インフラの需要の高さ、そしてこれまで設置した設備の老朽化対策が深刻視されているほかにも、インフラ工事に必要な人材が不足している点も課題です。

国土交通省の調査によると、現場作業員の急速な高齢化、そして若者離れの深刻化により、早急な人材確保が必要と考えられています。

さらに総務省のデータを見ていくと、2015年から2020年の5年間で15歳以上就業者の割合は、7.7%から7.4%と0.3%減少していることがわかります。

高齢化社会が進むなか、知識・経験が豊富な現場作業員はさらに高齢化し、やがて退職を迎えます。
このようなことから、早急な人材確保も今後の課題と考えられています。

参考:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について
参考:総務省|令和2年国勢調査 就業状態等基本集計

自然災害に強いまちづくり

自然災害の多い日本だからこそ、耐久性のある設備を作る必要性も課題視されています。
例えば日本は「地震大国」といわれていますが、その理由は地球表面にある複数のプレートが関係していると考えられています。

プレートの独立した運動によって各地に地質現象が起きる、と考察する「プレートテクトニクス理論」によると、プレートは独立して動く性質があり、プレートの動きによっては大陸プレートの端が引きずり込まれ、蓄積した歪みのエネルギーがやがて元に戻ろうとする力によって破壊が起きるとしています。

日本列島周辺には、太平洋プレート・フィリピン海プレート・ユーラシアプレート・北米プレートの4つあることから、地震による被害が特に大きく、早急な対策が求められています。

国や会社が一体となって対策を進めているものの、設備の老朽化、そして人材不足といった複数の課題もあり、日本の暮らしを不安視する人が少なくないのも現状です。

さらに、異常気象による猛烈な台風の威力によって洪水・河川の氾濫なども各地で増加しています。
これらを総合的に考え、できるだけ早い段階で対策を取り入れることもインフラ業界の課題の一つです。

参考:栃木県の地球科学|プレートテクトニクス
参考:内閣府|防災情報のページ

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インフラ業界の今後の動向


多くの設備の老朽化や、工事に関わる現場作業員の急速な高齢化、さらに自然災害に対する強化など、さまざまな課題を抱えるインフラ業界。
これらを踏まえ、現在の日本にはどのような動向が見込まれているのでしょうか。

最新技術の導入

今後のインフラ業界は、最新技術の導入が進むと予測されています。
その理由は、現場作業員の急速な高齢化や人材不足をできるだけ早く補う必要があるからです。

例えば建設事業の「清水建設株式会社」では、建設事業においてAR技術を用いて施工管理をサポートする「Shimz AR Eye」を開発。

最新技術を独自開発したことで、施工中の設備配管・建物躯体の施工管理を最新技術で可能にしました。

これまでの施工管理現場は、複雑化が進んだ設備配管・建物躯体によって確認の負担が懸念されていました。
最新技術によって現場作業員の負担軽減にもつながっているといわれています。

参考:清水建設|AR技術で施工管理を支援 | 企業情報

SDGsへの取り組み

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称のことで、直訳すると「持続可能な開発目標」という意味があります。
世界各地のインフラは、石油・石炭・ガスといった地球に存在する資源によって成り立っています。

しかしこれらは限られた資源であり、需要が高いからこそ枯渇が危ぶまれています。
そこで、太陽光や風力・水力・バイオマスなどといった再生可能なエネルギーによって、限られた資源を守り、代替することを目指しています。

地球に古くからある貴重な資源の枯渇防止や、これまでのようにインフラを安定化させること、そして地球温暖化の原因とされるCO2(二酸化炭素)の排出・増加させないことを目的に、SDGsの本格化も予想されています。

参考:厚生労働省|SDGs

インフラ業界の将来性


インフラは人々が暮らす上で必要不可欠なものです。
人口が減少したとしても需要そのものはなくなることがなく、インフラ業界としては安定感の高さが特徴の一つです。

また、インフラ設備が完成しても、その先には修繕や改良などの工事も欠かせません。
そのためインフラ業界の将来性は高いと考えられます。

AI技術でインフラ業界はどうなる?

インフラ業界の課題として、現場作業員の急速な高齢化や人材不足、設備の老朽化を挙げましたが、それらを解決する動向の一つにAI技術の導入が予想されています。

AI技術の導入によっては、作業員の仕事が置き換えられるといった可能性も。
そのためインフラ業界に携わる人にとっては不安視する人も少なくありません。

インフラ業界で活躍し続けるためには、機械では代替できない技術や知識を養い続ける姿勢が求められるでしょう。

インフラ業界に向いている人の特徴


人々の暮らしを支える特徴から、安定の高さが見込まれるインフラ業界ですが、支える側として働く場合、どのような人に合っているのでしょうか。
ここからはインフラ業界に向いている人の特徴を紹介します。

バックグラウンドの仕事に興味がある人

インフラは人々の暮らしに欠かせないものですが、目に見えない部分での活躍が中心です。そのことから、バックグラウンドの仕事に興味がある人に向いている仕事です。

電気やガス、水道や道路など、一つひとつの工事に携わっても、個人の名前が残ることはありません。
しかし、自分が手掛けた工事によって地図や歴史、さらにクライアントであるお客様の心に残ることが多ければ、仕事に誇りを持つことができます。

このように、インフラ業界はバックグラウンドの仕事が中心であるものの、一日一日誰かの役に立てるという特徴に興味を持てる人にはおすすめの業界です。

長期的な視点で業務に取り組める人

インフラ業界の多くは、着工するまでに綿密な計画が行われ、さらに建設までに長い時間を要します。
そのことから、何事にも長期的な視点で取り組める人にも向いている業界です。

建物や設備を設置してもそこで終わりではなく、その先には修繕や改良などと細かな工事も欠かせません。

短いスパンで結果を求めるのではなく、長期的な視点でどのようなことにも取り組める人にとっては、相性の良い仕事と言えるでしょう。

人に喜ばれる仕事に就きたい人

インフラ工事はバックグラウンドでの作業が中心ですが、人々の暮らしを快適に維持し続けるために欠かせない仕事でもあります。

これまでデコボコとしていて歩きにくさを感じていた歩道も、補修工事を行うことで、周辺地域に住む人々が喜ぶことは想像に難くないでしょう。

このことから、仕事をする以上、人に喜ばれる仕事がしたい方と強く考える方には向いている業種です。

インフラ工事は需要が高くやりがいのある仕事!

今回はインフラ工事の概要にあわせて、種類・課題・動向などを紹介しました。
インフラ工事にはさまざまな種類があり、自分に合う業種を選ぶことから始めるのがおすすめです。

人に喜ばれる仕事、やりがいを感じられる仕事に就きたいと考える方は、この機会にインフラ工事を候補の一つに入れて、検討してみてはいかがでしょうか。

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