建設業界の基礎知識

弱電と強電とは?違いや設備・工事の種類を分かりやすく解説!

電気には電圧というものがあり、弱電・強電の二つに分かれています。

しかし、日常生活で意識することはほぼなく、弱電や強電と言われてもイメージが湧かない方も多いでしょう。

弱電と強電は私たちの生活に深く関係しており、電気を使う上では重要な項目でもあります。

今回は、弱電と強電について解説します。
私たちの生活にどのように関わっているのか、早速見ていきましょう。

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弱電とは


弱電とは、電気を信号として使うことです。

そもそも電気は2つに分かれています。

  • 「エネルギー」として使う場合
  • 「信号」として使う場合

その中で電気信号として使うものを弱電と呼びます。

用途としては、電話・インターネット・テレビの画像受信などがあります。

弱電は48V未満と極めて低い電圧ですがあくまで信号を送る目的であることから、それほど高い電圧を使用しない特徴があります。

しかし、電圧の低さによって減衰が起きやすく、まれにノイズが生じることも。

ノイズが起きると正確な電気信号は送れないので、弱電の使用ではこの点に注意する必要があります。

強電とは


強電とは、電気をエネルギーとして使うことです。
電灯やエレベーター、家電製品を動かすための動力源として用いられます。

なお、強電は「低圧」「高圧」「特別高圧」の3つに大別されます。

低圧

低圧は、一般的な家電製品に用いられる電圧のことで、交流で600V以下、直流で750V以下と指定されています。

家電製品に低圧以外の電圧がかかると、製品に負荷が掛かり故障することがあります。

また一般家庭による高圧の使用は大事故につながる恐れもあるため、あらかじめ低圧に変電されています。

高圧

高圧は、電気を送るために必要な高い圧力を指し、交流で600〜7,000V、直流で700V〜7,000Vと非常に高い特徴があります。

市街地でみかける電線はこの高圧で送電されているため、素手で触ると感電し、大事故につながる恐れがあります。

多くの電気をさまざまな場所へ配送するために欠かせない圧力ではあるものの、取り扱いは十分に注意しなければならない種類でもあります。

特別高圧

特別高圧は、発電所から変電所へ送電するための電圧を指し、7,000〜数十万Vにまで上ることも多い特徴があります。

大容量の電気を送るためには高い電圧が必要とされるため、主に山岳地に設置された鉄塔を経由しています。

弱電と強電の違い


弱電と強電は下表のような違いがあります。

強電 弱電
電圧 48V以上 48V未満
電気使用例 エネルギー(動力源) 信号の伝送(信号ライン)
理論 電気光学 電子光学
電気設備における役割 電気エネルギーを変電室の配電盤から建物に運ぶ動脈 情報や信号をコントロールする中心部から建物の必要箇所に運ぶ動脈

弱電と強電にそれぞれ違いがあるのは、使用する目的が異なるからです。

例えば強電だけを送っても、一般家庭で使用する場合、電圧が高すぎるあまり、製品が故障する可能性があります。

弱電だけを残しても、エレベーターやエスカレーターを動かすことはおろか、山岳地帯へ電気を送ることもできません。

弱電・強電それぞれの技術が絡み合う設備がシステムが主流なために、このような違いがあるのです。

弱電を扱える資格


弱電・強電を扱うためには、電気工事士などの国家資格を取得しなければなりません。
では、それぞれの電気はどのような資格が必要なのでしょうか。

まずは弱電を扱える資格から解説します。

電気通信主任技術者

電気通信主任技術者は、電気通信ネットワークにおける工事・運用の監督責任者として働くことが可能な国家資格です。

電気通信設備などの工事現場では、電気通信主任技術者を有する人を配置しなければならないことから、需要の高い資格の一つです。

試験種類は「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」の2つあり、それぞれに合格することで「伝送交換主任技術者資格者証」または「線路主任技術者資格者証」の交付が受けられます。

どちらの資格が必要かは現場によって異なるため、従事する仕事内容に合わせて取得を目指すと良いでしょう。

試験日は毎年夏期と冬期の2回実施され、選択式のマークシート解答です。

一定の資格または実務経験がある場合は、申請することで免除される科目があるので、詳細については日本データ通信協会電気通信国家試験センター公式ホームページをご確認ください。

参考:日本データ通信協会 電気通信国家試験センター|電気通信主任技術者とは
参考:日本データ通信協会 電気通信国家試験センター試験日 | 受験の手引き

総合無線通信士

総合無線通信士は、海上・航空および陸上の無線局の無線設備の操作が可能な国家資格です。
第1級・第2級・第3級と3つの種類に分かれています。

資格名 概要 活躍できる分野
第1級総合無線通信士
  • 船舶・航空機に設置する、モールス電信を含む無線設備の操作、海上・航空関係の無線局の設備操作、陸上の無線局の無線設備の操作が可能(技術的操作については空中線電力2kWまで)
  • 陸上の固定局・陸上局・移動局・無線測位局・放送局などを含む無線局の無線設備の操作(技術的操作についてはテレビジョン放送局は500Wまで、その他の無線局は2kWまで)
  • 官公庁
  • 電気通信事業関係
  • 無線機器メーカー
  • 高専・高校・中学校の教員
  • 船舶
  • 海岸局など
第2級総合無線通信士
  • 航空関係の航空局・航空地球局・航空機局・航空機地球局にある無線設備の操作
  • 船舶に設置するモールス電信を含む無線設備の国際通信のための操作(船舶の区分・無線局の種別・航行する海域により制限がある)
  • 放送局を除く固定局・基地局・無線測位などの無線設備の技術操作(その他無線設備の技術的操作については無線設備の空中線電力による制限がある)
  • 官公庁
  • 電気通信事業関係
  • GMDSS対象船舶を除いた船舶
  • 海岸局など
第3級総合無線通信士
  • 海上人命安全条約(SOLAS)第4章が適用される船舶を除いた漁船に設置するモールス電信を含み無線電話を除いた無線設備の国内通信、電気通信業務の通信を除いた国際通信の操作
  • 漁船に設置する無線設備の国内通信の操作(無線電話を含み、船舶地球局・航空局・モールス電信を除く)
  • 漁船を除く船舶に設置する無線設備の国内通信の操作(船舶地球局・航空局・モールス電信を除く)
  • 漁業用海岸局のモールス電信を含む無線設備の操作(国際通信を除く)
  • 放送局を除く固定局・基地局などの無線設備の国内通信のための操作
  • レーダーの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの操作(無線設備の技術操作については無線設備の空中線電力などによる制限がある)
  • 小・中型漁船(特に無線電信船)
  • 漁業用海岸局など

活躍できる分野が各資格で異なるので、仕事に活かせる資格を選んだ上で取得を目指すと良いでしょう。

参考:公益財団法人 日本無線協会|総合無線従事者
参考:公益財団法人 日本無線協会|無線従事者が活躍する分野

陸上無線技術士

陸上無線技術士は、陸上の無線局に設置された無線設備の技術操作が可能な国家資格です。
第1級と第2級があり、それぞれで操作できるものは下表のとおりです。

資格名 概要 活躍できる分野
第1級陸上無線技術士 放送局・電気通信業務用等の固定局・無線測位局等全て無線局の無線設備の技術操作が可能
  • NHK、民放を含む放送局
  • 官公庁
  • 電気通信事業関係
  • 無線機メーカー
  • 高専・高校・中学校の教員など
第2級陸上無線技術士
  • 放送局・電気通信業務用等の固定局・無線測位局等全ての無線局の無線設備の技術的操作が可能
  • ただし以下のように無線設備の空中線電力による制限がある
    • テレビジョン放送局を除く無線局の空中線電力が2kW以下のもの
    • テレビジョン放送局の空中線電力が500W以下のもの
  • NHK、民放を含む放送局
  • 官公庁
  • 電気通信事業関係
  • 無線機器メーカーなど

キャリアアップを見据えた資格取得を目指す場合は、第一級陸上無線技術士の取得がおすすめです。

参考:公益財団法人 日本無線協会|陸上無線従事者
参考:公益財団法人 日本無線協会|無線従事者が活躍する分野

強電を扱える資格


ここからは、強電を扱える資格を解説します。

なお、弱電を扱える資格同様、国家資格も多いことから、取得までは多くの勉強が必要ですが、資格を有していることでキャリアアップにもつながるので、将来を見据えて目指すのもおすすめです。

電気主任技術者

電気主任技術者は、発電所や変電所、さらには工場やビルなどの受電設備や配線といった電気設備の保守監督として活躍できる国家資格です。

電気設備を設ける事業主は、工事・保守・運用などの保安監督者として電気主任技術者を選任しなければならないと法律で義務づけています。

さまざまなシーンで監督という立場で働けることから、社会的評価が高い特徴があります。

電気主任技術者の資格は取り扱うことが可能な電圧によって3つに分かれています。
概要は下表のとおりです。

資格名 概要
第1種 全ての事業用電気工作物
第2種 電圧が17万V未満の事業用電気工作物
第3種 電圧が5万V未満の事業用電気工作物
(出力5千kW以上の発電所を除く)

第1種および第二種試験は1次試験と2次試験があり、第3種試験は1次試験のみです。

1次試験では「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目ありますが、科目別合格制のため有効期限の3年間を使って勉強する方法で取得することも可能です。

2次試験では、「電力・管理」「機械・制御」の2科目で、科目別合格制度はありませんが、1次試験合格年度に不合格だった場合でも、翌年度の1次試験が免除されます。

参考:ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター|電気主任技術者って何だろう?
参考:e-Gov法令検索|電気工事士法
参考:e-Gov法令検索|建設業法

エネルギー管理士

エネルギー管理士は、省エネ法を根拠法令(第八・九条)とした省エネを推奨する目的を持つ国家資格です。

仕事内容も省エネに基づくものが多いため、選任者は4つに大別され、それぞれで担う役割や必要資格が異なります。

資格者名 役割 選任と資格要件
エネルギー管理統括者
  • 経営的な視点を踏まえた取り組みの推進
  • 中長期の計画のとりまとめ
  • 現場管理に関わる企画立案・実務の統制
  • 事業経営の一環で事業者全体のエネルギー管理が行える者
エネルギー管理企画推進者
  • エネルギー管理当事者を実務的に補佐
  • エネルギー管理士またはエネルギー管理講習修了者
エネルギー管理者
  • エネルギー管理士
エネルギー管理員
  • エネルギー管理士、エネルギー管理講習修了者

参考:METI 経済産業省|エネルギー管理士
参考:ECCJ 省エネルギーセンター|エネルギー管理士の制度
参考:e-Gov法令検索|安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整理及び経過措置に関する政令

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士は、建造物の建設・増築において、電気工事の施工計画の作成および工程・安全・品質の管理や監督を行える国家資格です。

一般建設業の電気工事に関わる2級と、特定建設業の電気工事を含む1級に大別されます。

どちらの資格も第1次検定・第2次検定と2つの試験があり、それぞれで受験資格が定められています。

また、試験受付期間や試験日なども異なるため、興味のある方は一般財団法人建築業振興基金公式ホームページ内の案内を確認すると良いでしょう。

参考:一般財団法人建築業振興基金|令和6年度 1級電気工事施工管理技術検定のご案内
参考:一般財団法人建築業振興基金|令和6年度 2級電気工事施工管理技術検定のご案内

電気工事士

電気工事士は、電力会社から送電された電気を変圧するための変電設備の設置や、建物の各階へ送電するための幹線の敷設、分電盤の設置や配線などの工事が行える国家資格です。

基本業務は機器の設置や配線が多く、建設会社と並行して行われることが一般的です。

一般住宅や店舗など、600V以下で受電する設備工事に従事できる第2種と、第2種の範囲に加え最大電力500kW未満の工場・ビルなどの工事に従事できる第1種に大別されます。

第1種および第2種の試験は学科試験と技能試験の2つあり、第1種の方が試験範囲が広い傾向にあります。

国家資格と言うこともあり取得までのハードルは高いですが、取得できればさまざまなシーンで活躍でき、キャリアアップにもつながります。

電気工事士に興味がある方は、一般財団法人電気技術者試験センター公式ホームページをご確認ください。

参考:job tag|電気工事士
参考:ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター|第一種電気工事士試験
参考:ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター|第二種電気工事士試験

弱電設備と強電設備における工事の種類


弱電と強電それぞれで工事の種類が異なります。
ここでは弱電設備と強電設備における工事の種類を紹介します。

弱電設備工事

弱電設備工事は、電気信号を使う特徴から、ネットワークや電話線など細かな部分の工事が中心です。

具体例を挙げると、カメラ付きインターホンや電話、テレビやLAN配線、建物の火災感知器に関わる業務があります。

住宅やオフィス、施設などさまざまな場所で行われますが、アンテナ工事などは屋外や天井など高所での作業になることが少なくありません。

強電設備工事

強電設備工事では、建物の建設設備の稼動に必要な電気設備の工事が行われます。

具体例を挙げるとすれば、電圧引き込み線の電気を建物で使用する電圧に、降圧するための変電機の設置などがあります。

ほかにも、住宅・施設などのコンセントや照明器具、さらにはエレベーターやエスカレーターといった大がかりな工事も強電設備工事に含まれます。

日常生活に欠かせない弱電・強電について理解を深めよう

弱電や強電は、あまり見聞きしない言葉ではあるものの、私たちの生活には欠かせない電力ということが理解できたのではないでしょうか。

スイッチを入れたりコンセントにプラグを差すことで、ごく当たり前のように使用できる電気。

しかし、これらの設置や管理には資格が必要であり、また高い技術も欠かせません。

私たちの暮らしが安定的に維持できているのは、電気工事に携わる人のおかげであることが、この記事でイメージできると幸いです。

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