目次
住友林業と大東建託が業務提携し、国産木材の活用を一層推進することが発表されました。
森林資源に恵まれながら木材の多くを輸入に頼ってきた日本において、この提携は建設業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。
本記事では、その背景や目的、国産木材活用の意義、そして現場や転職市場への影響まで、深掘りして解説していきます。
参考:住友林業ニュースリリース「住友林業と大東建託 国産材利活用など広範な業務提携で基本合意」
住友林業×大東建託 業務提携の概要
住友林業と大東建託が基本合意した業務提携の狙いと内容を解説します。
提携の背景には両社の戦略的一致と脱炭素への取り組みがあり、第一弾として大東建託が住友林業の子会社へ出資する事による国産材供給強化策が実行されます。
提携の背景と目的
2025年2月13日、住友林業株式会社と大東建託株式会社は企業価値向上と脱炭素社会の実現に向け、森林から住宅・不動産まで国内外の幅広い事業分野で協業する業務提携に基本合意しました。
木材を使った住宅建築を手がける住友林業と、賃貸住宅で国内最大手の大東建託は、かねてより脱炭素に向けた共同事業を協議しており、両社の戦略の方向性が一致したことで提携に至ったとされています。
特に大東建託は2007年から地産地消による国産木材(ディメンション材)の活用を開始しており、環境志向の点でも住友林業と歩調が合っていました。
今回の提携ではまず住友林業のグループ会社への出資を皮切りに協業を進め、今後「海外事業」「国内事業」「木環の杜・国産材関連事業」「その他事業」の4分野でシナジーを創出する方針です。
こうした包括的な提携により、両社はお互いの強みを活かして循環型社会の実現と企業価値向上を目指す狙いがあります。
具体的な業務連携の内容
提携の第一弾として打ち出されたのが、国産構造材(ディメンション材)の長期安定供給体制の構築です。
2021年に発生した世界的なウッドショックでは、輸入木材の不足と価格高騰が深刻化し、日本の建築現場も資材調達の遅延やコスト増に直面しました。
日本は国土の約70%が森林に覆われる森林大国ですが、木材自給率は約40%に留まり国産材の活用が十分進んでいない現状があります。
ウッドショックによる外材不足を機に、海外要因に左右されない安定した国産材の供給体制づくりが急務となりました。
こうした背景から、住友林業子会社の「株式会社木環の杜(こわのもり)」に大東建託が第三者割当増資を引き受ける形で出資し、国産材供給で協力します。
木環の杜が福島県いわき市に新設する四倉工場(2026年3月稼働予定)は、年間11万㎥もの原木投入量を計画しており、国内最大規模の構造用ディメンション材製造工場となる見込みです。
ここで生産された構造材の一部は2026年以降に大東建託の関東・東北エリアの賃貸住宅建築に供給される計画で、住友林業側は安定した販売先の確保、大東建託側は安定した国産材調達という双方のニーズが合致した取り組みとなります。
国産材の利活用拡大により森林の循環利用(伐採→再植林による森の若返り)が促進され、結果的にCO2吸収量を増やして社会の脱炭素化に貢献できる点も大きな目的です。
今後はこの国産材事業以外にも、海外事業や国内不動産事業など提携4分野で具体的な協業内容を両社で詰めていく予定です。
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国産木材活用の意義と課題
国産木材を建設分野で利用することの持つ意義と、実際に活用を拡大する上での課題について整理します。
住友林業×大東建託の提携でも掲げられた国産木材活用は、環境や経済面で大きなメリットをもたらす一方、供給体制や人材といった課題も存在します。
建設業界における木材利用の現状
日本の建築分野では古くから木造住宅が主流であり、現在でも新設住宅戸数の約6割は木造が占めています(戸建住宅に限れば91%が木造、令和3年(2021年)時点)。
このように住宅分野では木材利用が盛んですが、その木材の供給源には長年輸入材に大きく依存してきました。
高度経済成長期以降、安価な輸入木材に押されて国産材利用は低迷し、木材自給率は1970年代に50%を下回り、2002年には過去最低の18.8%まで低下しました。
その後、国産材振興策や木質バイオマス発電など新たな需要の増加を背景に自給率は回復傾向を示し、2020年には41.8%と約半世紀ぶりに40%台を回復しています。
参考:nippon.com「木材自給率、半世紀ぶりに40%台回復 : 燃料材の増加も貢献?」
しかし依然として木材需要の半分以上は外国産で賄われており、豊富な森林資源を持つ国としては潜在力を十分活かしきれていないのが現状と言えるでしょう。
こうした中、2021年にはコロナ禍での北米住宅需要急増や中国の木材買い付けによって世界的なウッドショックが発生し、日本でも建築資材の調達難と価格急騰に見舞われました。
輸入構造材の価格は数ヶ月で2倍以上に跳ね上がり、木造住宅1棟あたり数十万~数百万円のコスト増という影響報告もあります。
参考:木材価格はまだ高い?ウッドショックの今とこれから|北欧の森
幸い国内では行政や企業の努力で一部国産材への切り替えが進み、住宅着工の大幅な停滞は避けられましたが、木材供給の脆弱性が広く認識される契機となりました。
ウッドショック以降、輸入材価格はピーク時より落ち着いたものの依然高値で推移しており、今後も安定供給のためには輸入依存からの脱却、すなわち国産材利用拡大が重要との認識が業界内で共有されています。
国産木材活用がもたらすメリットと課題
国産木材を積極的に活用することには、建設業界・社会にもたらすメリットが多くあります。
メリット1:安定供給と価格安定
まず最大の利点は、海外市況に左右されにくい安定供給と価格安定です。
ウッドショックのように世界情勢の影響で輸入材が高騰・不足すると、日本の住宅建設コストや進行にも大きな支障が出ます。
しかし国産材の利用比率を上げておけば、国外の需給逼迫時にも国内調達でリスクを分散でき、建築資材価格の乱高下を緩和できます。
実際、2021年には輸入不足を補う形で国産材需要が高まり、林業産出額が前年比13%増の5,457億円(木材生産額は32%増の3,254億円)と20年ぶりの高水準となりました。
参考:最新【森林・林業白書】押さえたい動向をナナメヨミ! 国内林業の現在は?
これは外材不足を国内材で補完できた好例であり、今後安定した国内サプライチェーンを築けば、建設現場の調達リスク低減につながるでしょう。
さらに地域経済の活性化も見逃せません。木材需要の地産地消が進めば、林業や製材業が主要産業である地域にお金が循環し、過疎化が進む山村の雇用創出や所得向上につながります。
国産材利用拡大は都会と地方の経済格差是正策の一つとも位置付けられています。
メリット2:運搬エネルギー消費の削減
環境面でのメリットも非常に大きいです。国産木材を使うことは、運搬に伴うエネルギー消費を減らし、いわゆる「ウッドマイレージ」を下げる効果があります。
日本は輸入木材に頼ってきた結果、木材運搬に伴うエネルギー消費(CO2排出)が世界有数との指摘もあります。
輸入材から国産材へ切り替えることは、この輸送由来の二酸化炭素排出を削減し、カーボンニュートラルに貢献する取り組みです。
加えて、木材自体が成長過程でCO2を吸収・固定するカーボンストックであり、建物に使われることで長期に炭素を閉じ込める効果があります。
鉄やコンクリートに比べ製造時のエネルギー消費が少ない木材を使うことで建設段階のCO2排出も抑えられるため、環境負荷低減と建築物の脱炭素化を同時に実現できる素材として世界的に注目されています。
国内では2010年に公共建築物木材利用促進法が施行され、公共施設での木材利用が推進されてきましたが、近年は民間建築物にも木造化推進の動きが広がっています。
国産材活用はそうした政策目標とも合致し、森林資源の循環利用(計画的な伐採と植林)によって森林の適正管理にも寄与します。
成長しきった人工林を適度に伐採して若い苗木に更新していくことは、森林の健康維持とCO2吸収能力の向上につながる重要なプロセスです。
課題1:国産材の供給体制の整備
一方、課題や注意点もあります。
第一に、国産材の安定供給体制を整備する必要があります。
長年需要低迷に苦しんだ国内林業・木材産業は、生産・流通インフラや人員面で縮小傾向にありました。
木材価格の低迷により林業採算が厳しかったため、山林の手入れ不足や製材所の減少、人材の流出と高齢化が進んだ歴史があります。
例えば林業就業者の平均年齢は2015年時点で52.4歳と全産業平均(46.9歳)より高齢で、将来的な担い手不足が懸念されています。
国産材需要が高まっても、それに応じて伐採・製材できる人材と設備が不足していては供給量を増やせません。
今回の住友林業と大東建託のように、大手企業が製材工場への出資や生産能力増強に乗り出すことは、こうした供給側のボトルネックを解消する一助となります。
課題2:国産材の品質・規格の安定
国産材の品質・規格を安定させることも課題です。
輸入構造材ではJAS規格に適合した寸法・強度の材料が安定供給されていますが、国産材でも同等以上の品質を確保し大量供給するには、乾燥・強度選別技術や規格化の取り組みが重要です。
幸い、近年は最新設備を備えた大型製材工場の新設が各地で進んでおり(木環の杜の四倉工場もその一つ)、今後は国産構造材の品質・供給量ともに向上が期待できます。
また、価格面でも課題は残ります。
輸入材は大量生産と安価な海外人件費のもと低価格を実現してきた歴史があり、国産材はどうしても高コストというイメージがありました。
しかし近年は為替相場の変動や国際輸送費の上昇により外材価格が上昇傾向にあり、国産材との価格差が縮まりつつあります。
2021年のウッドショック時には、製材品や集成材価格が平時の2.5倍にまで急騰し、一時的に国産材の方が割安になる逆転現象も起きました。
足元では価格はピークアウトしたもののウッドショック前より依然高い水準で推移しています。
今後、国産材の安定供給体制が整えば、価格面でも競争力が向上し、市場原理に基づいた自然な形で国産材シフトが進む可能性があります。
総じて、国産木材活用の拡大はサプライチェーン強靭化、地域経済振興、環境貢献と、一石三鳥の効果をもたらす取り組みです。
もちろん課題への対応も不可欠ですが、今回の住友林業×大東建託の提携のように、需要側(建設会社)と供給側(林業・製材)が連携して解決策を講じることが、木材利用拡大の鍵を握るでしょう。
建設業界への影響と展望
国産木材の活用拡大や大手企業同士の提携は、建設現場で働く施工管理技術者や職人たちにも影響を及ぼします。
また、木造建築のトレンドが進むことで市場環境がどう変化していくか、今後の展望を探ります。
施工管理や職人への影響
住友林業と大東建託の提携による国産材の安定供給は、現場の施工管理や職人の仕事にも少なからず影響を与えます。
まず、安定した国産構造材の調達ルートが確保されることで、資材納期の遅延リスクや価格変動リスクの低減が期待できます。
施工管理者にとって、材料が計画通り入手できない事態や急な価格高騰は工程や予算を直撃する頭痛の種ですが、国内で一貫したサプライチェーンが構築されれば、その不安が緩和されるでしょう。
ウッドショック時には材料不足で工期延期を余儀なくされた現場もありましたが、今後はこうした極端な事態を避けやすくなると考えられます。
次に、木造施工に関わる技術者・職人の需要が高まる可能性があります。
大東建託はこれまで主力の賃貸住宅で鉄骨造やRC造も扱ってきましたが、国産材調達が安定すれば木造(在来工法や2x4工法)物件を拡充することも考えられます。
そうなれば、大工職や木造建築の施工管理技術者にとって新たな活躍の場が増えるでしょう。
一方で、建設業全体を見れば職人の高齢化と若手不足は深刻で、2025年までに技能労働者の約4割が離職し130万人規模の人手不足が予測されています。
木造需要が増えても、それを担う大工・プレカット技術者などを十分に確保・育成できなければ絵に描いた餅になりかねません。
業界としては、ベテラン大工の技を継承しつつ若手人材を育てる取り組みや、プレハブ化・ユニット工法などで省力化する工夫が必要です。
施工管理の現場では、木造建築特有の知識やノウハウへの対応も求められます。
鉄骨やRC造に比べて木造は構造計算や耐火設計の考え方が異なり、規模によっては許容応力度計算や認定耐火部材の使用など専門知識が必要です。
また、木材は湿気やシロアリ対策など品質管理上の注意点もあります。
施工管理技士にとっては、木造・木質系建材に関する知見を深めることがキャリア上重要度を増すでしょう。
逆に言えば、木造建築の知識を持つ人材は今後重宝される可能性があります。
実際、国も2025年の省エネ基準適合義務化などを控え、省エネや構造に精通した技術者の獲得競争が激化すると予測しています。
木造住宅は省エネ性能でも有利とされており、その点からも木造×省エネに強い技術者は引く手数多となるでしょう。
さらに、プレカット工場や大規模製材工場との連携が深まると、建築現場の施工プロセス自体にも変化が出るかもしれません。
高精度なプレカット材やパネルが供給されれば、現場での墨出しや刻み作業は減り、組み立て・据付作業が中心となります。
これは工期短縮や品質均一化につながるメリットですが、同時に現場大工の手仕事の機会減少も意味します。
大工職人は現場での即応力だけでなく、工場加工図を読み解きパネルやユニットを正確に施工するマネジメント力が求められるでしょう。
このように、国産材活用の拡大は職人の技能内容にも変化をもたらす可能性があります。
総じて、施工管理や職人にとって国産材の安定供給拡大はポジティブな面が多いものの、それを生かすための人材育成と技術継承が不可欠です。
業界全体で見れば人手不足が深刻化する中、効率化できる部分は進めつつ、木造建築という伝統分野を次世代に繋ぐ努力が求められるでしょう。
木造建築のトレンドと今後の市場予測
昨今、世界的な脱炭素トレンドや技術革新を背景に、木造建築が新たなブームを迎えつつあります。
日本国内でも低層住宅だけでなく中高層の木造建築物が増加傾向にあり、その勢いはデータにも表れています。
国土交通省によると、4階建て以上の中高層木造建築の新設着工床面積は2022年度は2万㎡台でしたが、2023年度は4万㎡超とほぼ倍増しました。
これはまだ全体から見れば小さな割合とはいえ、成長率として顕著であり「都市木造化」の機運が高まっていることを示しています。
実際、都市部でも木造大型ビルの計画が相次いで発表・実現されています。
2019年竣工の新国立競技場では木材(国産材を含む)をふんだんに用いたハイブリッド木造構造が採用され、大規模建築への木材活用が象徴的に示されました。
住友林業も2041年完成を目標に高さ350m・70階建ての超高層木造ビル「W350計画」を打ち出すなど、夢のある構想が話題を集めました。
大手ゼネコン各社も専門部署を立ち上げ、中高層木造建築の技術開発やプロジェクトに参入しています。
こうした動きは、環境に優しい建築への需要拡大とCLT(直交集成板)など新素材の進化が後押ししています。
市場予測としては、木造建築の割合は今後徐々に拡大すると見込まれます。
住宅分野では人口減少により新設着工戸数自体は長期的に減少傾向が予想されていますが、その中で木造率の高さは維持されるでしょう。
むしろ省エネ性能や環境性能で有利な木造住宅が選好され、ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)など高性能木造住宅の需要が底堅く推移する可能性があります。
一方、非住宅・中高層分野はこれまで木造が少なかっただけに伸び代が大きいと考えられます。
政府も公共建築物だけでなく民間ビルの木造化を後押ししており、補助金制度の拡充や規制緩和(耐火木材の認定や容積率ボーナスなど)によって市場環境は整いつつあります。
日本国内でも需要増に応じて供給量を伸ばす方針が示されています。住友林業と大東建託の提携はまさにその流れに沿ったものであり、国産材マーケットの成長に弾みをつけるでしょう。
データで見る国産木材の市場動向
最後に、国産木材を取り巻く市場動向をデータで振り返ります。生産・流通量の推移や価格動向、そして国際的な比較から、日本の立ち位置と課題を数字で確認しましょう。
国産木材の流通量
供給量と自給率の推移: 先述の通り、日本の木材自給率は長期低落ののち2010年代から上昇に転じ、2020年に41.8%と1970年代以来の高水準を記録しました。
2022年は40.7%(前年比0.4ポイント減)で若干低下したものの、概ね40%前後を維持しています。
木材需要全体を見ると、2020年は新型コロナの影響で7,443万9千立方メートルと前年より約10%減少しましたが、その後は住宅着工の持ち直しや輸出増もあり持ち直しています。
国内の木材生産量(丸太ベース)は増加傾向で、2019年時点で年間約3,000万立方メートル弱だったものが、2021年には3,300万立方メートル超と伸びています。
2021年は前述のように輸入減少を補うため国産材の供給が増え、市場に投入された国産材量が大幅増となりました。
林野庁の資料によれば、今後しばらく国産材の供給量は緩やかに増えていく見通しが示されています。
戦後造林された人工林資源が本格的な伐採期を迎えており、資源量的には今後20年以上にわたり木材生産を拡大可能とされています。
したがって、需要さえ確保できれば国内から供給可能な木材量は潤沢に存在する状況です。
国産木材の価格推移
木材価格は需要と供給のバランスに敏感に反応します。
近年最大の変動要因となったウッドショックでは、世界的な需要逼迫と物流網の混乱から、日本でも2021年春頃から木材価格が急騰しました。
木材全般の価格指数は数ヶ月で倍以上となり、特に構造用製材や集成材は平時の最大2.5倍もの高値に達しました。
この価格高騰は2021年末をピークに徐々に沈静化し、2022年には一部で下落傾向も見られました。
ただし以前の水準まで価格が下がったわけではなく、輸入材は依然として高値を保っています。
一方、国産材(特にスギ・ヒノキ丸太)の市場価格もウッドショック期に上昇し、2022年3月時点で前年より上昇しています。
その後円安や世界情勢の不透明感もあり、木材市場は高止まりから緩やかな調整局面にあります。
2023年現在、ウッドショックほどの極端な状況ではないものの、北米や欧州の需給、為替相場などによって価格は上下しています。
例えば、米国の金利上昇で住宅着工が減速すれば北米材の国際価格は下がり、日本にも波及する、といった具合です。
今後の価格予想としては、短期的には世界経済の動向に左右されるものの、中長期的には国産材の市場シェア拡大が価格安定化に寄与すると期待されます。
今後、林業サイドのコスト削減努力やサプライチェーン効率化が進めば、国産材価格自体の競争力も高まり、需要拡大と価格安定の好循環が生まれるでしょう。
国際的な動向と比較
日本の木材需給を国際的に見ると、自給率の低さが際立ちます。
森林資源が豊富なフィンランドやスウェーデン、カナダといった国々は自国需要を満たして余剰を輸出する「木材輸出国」です。
例えばフィンランドの木材自給率は126%と100%を超えており、日本(40%前後)とは大きな開きがあります。
中国や欧州各国、米国なども基本的には国内需要の大半を自国生産でまかない、不足分を輸入するといった体制です。
一方、日本と同様に森林が多いのに自給率が低い例としてはお隣の韓国が挙げられますが、それでも日本より低い20数%程度で、日本は韓国よりは高いものの他の主要国と比べると明らかに低水準です。
日本は潜在的な森林資源を十分活かしきれておらず、外国から木材を買っている構造だということです。
諸外国に比べ出遅れており、そのギャップを埋めるべく官民の取り組みが求められています。
今回の住友林業と大東建託の業務提携は、まさに企業レベルで木材自給率を引き上げる働きかけの一例といえます。
森林資源大国日本が、そのポテンシャルを発揮できるか—この課題に挑む上で、今回のような大手企業による先導的な取り組みは大きな意味を持つと言えるでしょう。
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まとめ
住友林業と大東建託の業務提携は、建設業界における国産木材活用拡大の大きな転換点になる可能性を秘めています。
国産構造材の安定供給体制が構築されれば、建築現場の調達不安が軽減され、脱炭素社会への貢献と国内林業の活性化にもつながります。
業界全体で見ても、ウッドショック以降に痛感した課題(輸入依存のリスク)に対する有効な解決策の一つと言えるでしょう。
環境に優しく、地域経済にも貢献し、長期的な資材安定供給を可能にする取り組みを、建設業界が支えていくことが重要です。
今回の住友林業×大東建託はこうした問題の先陣を切る動きと言えるでしょう。
参考:住友林業ニュースリリース「住友林業と大東建託 国産材利活用など広範な業務提携で基本合意」
参考:林野庁「第1部 特集2 第2節 建築分野における木材利用の動向(1)」
参考:nippon.com「木材自給率、半世紀ぶりに40%台回復 : 燃料材の増加も貢献?」
参考:恩加島木材工業株式会社「日本の木材自給率はどれくらい?国の取り組みからウッドショック・世界情勢との関係まで詳しく解説 」
参考:柏田木材工業株式会社「【2023年最新情報】ウッドショックは終了した?木材価格の推移と2024年以降の予想」
参考:最新【森林・林業白書】押さえたい動向をナナメヨミ! 国内林業の現在は?
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