建設業界の基礎知識

洗掘とは?概要や洗掘被害が起きる要因を詳しく解説!

河川に構造物を設置する場合、さまざまな被害について理解を深め、その上で施工マニュアル等を遵守し、適切に取り組むことが大切です。

被災要因について理解しないまま施行を進めてしまうと、トラブルがさらに大きくなる可能性や多くの人々を巻き込んでしまう可能性が高まります。

今回は、被災要因の一つである洗掘(深掘れ)を中心に、概要や水防工法の種類について解説します。

洗掘(深掘れ)とは


洗掘(深掘れ)とは、激しい川の流れや波浪などによって、堤防の川側が削り取られた現象のことです。

水防活動では、洗掘(深掘れ)が起きないよう、構造物の流出を防ぐために固定したり、部品が緩まないよう加工するなどの防止策を行っています。

洗掘(深掘れ)と浸食の違い

洗掘(深掘れ)と混在しやすいものとして「浸食」がありますが、浸食は水や風といった自然の力によって岩盤などが削り取られる現象を指します。

雨水や川の流れなど水の力による要因に限定していないことから、自然を理由とする場合は浸食という言葉が用いられます。

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洗掘(深掘れ)被害の要因


洗掘(深掘れ)被害が起きる要因はさまざまです。
ここからは具体的な被害を5つ紹介します。

1.河床が水流などによって削られる「河床洗掘」

河床洗掘(かしょうせんくつ)とは、河床が水流などの力によって削られる現象のことです。

河床が流水による影響を受けて洗掘されることで、水流が強まるとその分だけ土砂が洗い流されます。

河床洗掘では護岸の基礎部分に空洞が生まれてしまうことも多く、このような状態になると、土砂が空洞へ流れてしまい、護岸沈下や陥没・倒壊といった甚大な被害につながる可能性があります。

2.土砂が水流などによって流出する「吸い出し」

吸い出しとは、土砂が水流などの力によって流出する現象のことです。

大雨などによって河川が増加した際、護岸裏法部の土砂に吸い出しが起きることがあります。

そのままにしておくと護岸背面の土砂が陥没し、護岸全体が被災する場合があります。
吸い出しの予防策として、日本では石やブロックを積み上げる方法が用いられます。

3.空気や水の力により引き起こされる「流体力」

流体力とは、空気や水の力を受けて発生する力のことです。
岸壁や防波堤、ダムといった水理構造物は、この流体力が関係しています。

建築業界では、構造物周辺の水流や構造物に影響する流体力についてきちんと把握し、その上で施行する姿勢が求められます。

4.洪水減水のときに浸透水が取り残される「残留水圧」

残留水圧とは、洪水減水時に浸透水が取り残されてしまう現象のことです。

堤体内や川岸などに浸透水が残留すると、残留圧力が生じて「パイピング破壊」と呼ばれる堤防や地中の土が噴き出す現象を招く場合があります。

勾配が急な護岸の場合だと、土圧に残留圧力が加わることで護岸の転倒や地質強度の低下を招き、地滑りにつながることも少なくありません。

参考:厚生労働省|浸透による破堤のメカニズム(パイピング破壊1)

5.護岸天端からの浸食により護岸裏が空洞化する「天端の侵食」

洪水が護岸の天端を越水したときや高水敷から水が落ちて水流が激しくなったときは、天端からの浸食によって護岸裏が空洞化して被災につながることもあります。

外岸側に寄せられた水流は遠心力と調和するように水位を上昇させます。

水位が護岸に乗り上げると、水流の力や天端から水路へ落下する流れが生じ、土砂を大きく浸食させてしまいます。

参考:厚生労働省|越水による河川堤防の侵食メカニズム

洗掘(深掘れ)以外の被災要因


水防工法を選定する際は、どのような要因かを見極めることが大切です。

ここでは、洗掘(深掘れ)以外に見られる被災要因を紹介します。

参考:国土交通省中国地方整備局|1.水防工法の種類

漏水

漏水とは、河川水位が上昇し居住側との水位差が大きく開くことで、堤防や基礎部を通った浸透水が地表に漏れ出す状態のことです。

漏水量の増加によって堤防内の土砂が排出し決壊する恐れがあることから、漏水量の増加を防ぐため、川側・居住側それぞれの水位差を小さくする対策が行われます。

越水

越水とは、河川の水位が上昇して、堤防の上面を超えてあふれた状態のことです。

「水のあふれ」とも呼ばれ、あふれ出した水が堤防の上面や居住地側の傾斜面を削り取り、決壊する恐れがあります。

このような被害を避けるため、堤防を嵩上げする対策が行われます。

亀裂

亀裂とは、河川の水圧や堤防内の浸透水などの影響により、堤防が変形してひび割れた状態のことです。

亀裂が見られると、進行し決壊する恐れがあるため、被災箇所を縫い合わせる対策が行われます。

崩壊

崩壊とは、激しい川の流れや降雨の影響により堤防の一部が崩れた状態のことで、「斜面の崩れ」と呼ばれることもあります。

水位が高くない状態であっても、降雨などの影響によって崩れる恐れがあることを想定して失われた部分を充填するほか、川側で起きた場合は反対に位置する居住地側を補充する対策が行われます。

被災要因に適した対策として水防工法が行われる


日本では被災要因に適した対策として水防工法が行われています。
ここからは要因ごとの対策を紹介します。

参考:国土交通省中国地方整備局|1.水防工法の種類
参考:国土交通省総合政策局建設施工企画課|大型土のう工・袋詰玉石工 笠コンクリートブロック据付工
参考:一般社団法人リバーテクノ研究会|5.効率的な対策工法

洗掘(深掘れ)対策

洗掘(深掘れ)対策には以下の水防工法が行われています。
種類と概要は下表のとおりです。

種類 概要
大型土のう工法・大型ブロック工法
  • 土木工事などで用いられる大型土のうや大型ブロックを被災箇所に投入し、川表のり面を直接保護する工法
  • 水流の早い河川にも対応しており洗掘(深掘れ)防止効果が高い
捨石(バックホウ)工法
  • 大きな石をバックホウなどの重機で被災箇所に投入し、川表のり面を直接保護する工法
  • 水流が早い河川にも対応しており、洗掘(深掘れ)防止効果が高い
シート張り工法
  • ブルーシートなどの合成繊維シートに骨組み材や重し土嚢を取り付け、河川へ投入して川側の斜面を保護する工法
  • 汎用材料を使って人力で作成することも可能
  • シートを被災箇所に密着できないと効果が得られないため、水流の速い河川では困難
水防マット工法
  • シート張り工法と同様の効果を持つ工法
  • 水防活動専用に開発され、緊急時に迅速に効果を発揮する
  • 袋体に砕石などを大量に投入できる特長から、シート張り工法に比べてあおりに対する抵抗力が高く、比較的水流の速い河川にも適用可能
木流し工法
  • 川側斜面に投入した樹木の抵抗力によって堤防表面の水流を低減させ、洗掘(深掘れ)の進行を抑える工法
  • シート張り工法に比べてあおりに対する抵抗力が大きいため、水流の早い河川にも用いられる
捨土のう(人力)工法
  • 洗掘した部分に土のうなどを投入し斜面を保護する工法
  • 土のうを人力でも投げ入れられるよう水際に近い箇所かつ比較的緩やかな主流の場合にのみ適用可能
立てかご工法
  • 主に急流部での洗掘(深掘れ)や崩壊箇所の拡大防止に効果的な工法
  • 決壊した箇所に蛇かごを立てかける
  • 決壊の状況に応じてかごを前面または並列に2~3本ずつ並べる
竹編流し工法
  • 川表のり面の決壊防止を目的とした工法
  • 太めの竹を格子状に結び格子を骨に竹格子の中を鉄線や縄で格子を作製後、大きい網状にして決壊したのり面に押し当てる
  • 網の上に土のうや石のうを投入し、のり面の洗掘(深掘れ)を防止する
わく入れ工法
  • 急流河川での流水を緩和し、堤脚洗掘面の広がりを防止する工法
  • 洗掘箇所に丸太を用いた川倉・牛枠・鳥脚などの合掌木を投入する
築きまわし工法
  • 堤防の肉厚が減少し漏水によって堤防する恐れから、堤防断面の不足を補う目的がある
  • 裏のり側に土のうなどを積み上げ堤防の補強を行う
びょうぶ返し工法
  • 波浪や流水によって川表側が欠けた場合その拡大を抑え、かつ漏水防止する目的として用いられる工法
むしろ張り工法
  • 堤防表の裏面にむしろを何枚か縫い継ぎし骨竹を通して竹ピンでのり面に指し、重い土のうを乗せる工法
おもてむしろ張り工法
  • 漏水吸込口の表の裏面に、むしろ・骨竹・なわを用いた工法
たたみ張り工法
  • たたみを川表のり面の漏水吸込口またはのり面決壊部分に押し当て、漏水や洗掘(深掘り)を防止する工法
  • 対策必要箇所の推進が比較的浅い場合に有効

漏水対策

漏水対策には以下の水防工法が行われています。
種類と概要は下表のとおりです。

種類 概要
月の輪(つきのわ)工法
  • 漏水箇所周辺に土嚢を月の輪状に積み上げ水深を保つ工法
  • 川側との水位差を小さくし漏水量の増加を抑える効果に期待できる
  • ただし漏水量の増加を避ける目的であることから漏水を完全に止めることはできないとされている
釜段(かまだん)工法
  • 漏水箇所周辺に土嚢を円形に積み上げ推進を保つ工法
  • 川側との水位差を小さくし漏水量の増加を抑える効果に期待できる
  • 形が円形となるほかは月の輪工法と同様で居住地側の平地に適用されるのが一般的
たる伏せ工法
  • 漏水が比較的小規模な場合に地盤状況を十分考慮したあと、底を抜いたたるやおけを漏水口にかぶせて漏水の噴出力を弱める工法
導水むしろ張り工法
  • 漏水量が少ない場合に漏水の流路にむしろや防水シートを張り、堤体土の流出を防ぐ工法
詰め土俵工
  • 洪水中に堤防側表の裏面にはっきりとした吸込口が確認できた場合に用いられる工法
  • 吸込口に土俵や土のうを詰めて止水を図る

なお漏水対策では、上述したシート張り・たたみ張り・びょうぶ返し・むしろ張り・おもてむしろ張り工法も行われています。

越水対策

越水対策には以下の水防工法が行われています。
種類と概要は下表のとおりです。

種類 概要
積土のう工法
  • 堤防正面に土のうを積み上げ水のあふれを防止する一般的な工法
  • 構造が簡単なため汎用材料で作製できる
改良積土のう工法
  • 積土のう工法の改良型
  • 中詰め材を省略し代わりにブルーシートなどで止水する
  • 中詰め材を省略した分、施工性が向上している
改良積土のう工法(2)
  • 改良積土のう工法から杭を省略した工法
  • 舗装された堤防正面など杭が打ち込めない場所にも有効
せき板工法
  • 軽量銅板製の堰板を杭で固定した後、中詰め材で安定させる工法
  • なんらかの理由から大量土のうを作成できない際に用いられる
水のう工法
  • ビニロン帆布製の水のうにポンプで水を注入し、水のあふれを防止する工法
  • 都市部で多量の土を得ることができない場合に用いられる
蛇かご積み工
  • 堤防の欠け込みを考慮し堤防天端の表のり肩から0.5~1.0mほど後退し、蛇かごを積み、越水を防止する方法
  • 玉石類が多く入手が容易な地方かつ洪水継続時間の比較的短い河川に用いられる
裏むしろ張り工(補強策)
  • 堤防側裏側にむしろを法尻の下端部から堤防に長手が平行になるよう、下草を刈り取って、敷き並べる工法
  • 洪水が堤防を越流し、天端・裏のり・裏小段・犬走りなどが洗掘(深掘れ)または崩壊するのを防ぐ際や、積み土俵などからの漏水が多い場合、これらが予想されるときなどに積み土俵工と併用して行われる

亀裂対策

亀裂対策には以下の水防工法が行われています。
種類と概要は下表のとおりです。

種類 概要
打ち継ぎ(鉄線)工法
  • 堤防に生じた亀裂を鉄線で挟み亀裂の広がりをくい止める工法
  • 堤防正面に起きた亀裂に用いられる
かご止め(鉄線)工法
  • 堤防に生じた亀裂を鉄線で縫い合わせ亀裂の広がりをくい止める工法
  • 堤防斜面に広範囲に起きた亀裂に用いられる
繋ぎ縫い(鉄線)工法
  • 堤防に発生した亀裂を鉄線で挟み、亀裂の広がりをくい止める工法
  • 堤防正面から居住地側斜面にかけて起きた亀裂に用いられる
五徳縫い工法(竹利用)
  • 裏のりまたは裏小段に生じた亀裂の拡大を防止する工法
五徳縫い工法(くい打ち)
  • 竹の入手がなんらかの理由で困難であり杭が比較的入手しやすい地域である場合に用いられる工法
  • のり面の亀裂拡大を防止する目的がある
竹さし工法
  • 五徳縫いを簡易にしたもの
  • のり面の滑りを防止する目的がある
力ぐい打ち工法
  • 竹さし工法の竹ではなく木杭を使用する工法
  • のり面の滑りを防止する目的がある
折り返し工法
  • 表のり・裏のりの適当な場所に土俵又は土のうを設置し、土俵や土のうの舌側に竹を突きさして土俵をまくらに竹を折り曲げ、堤防天端で双方の竹を折り返し、縄で結束する工法
控え取り工法
  • 堤防天端から裏のりにかけて起きた亀裂の広がりを同時に防止する工法

崩壊対策

崩壊対策には以下の水防工法が行われています。
種類と概要は下表のとおりです。

種類 概要
杭打積土のう工法
  • 居住地側傾斜面で崩れの恐れがある場合または比較的小規模な崩れが起きた場合に、対象箇所下面に打ち込んだ杭と崩れ面との間に土のうを充填し崩れの進行を防ぐ工法
築きまわし工法
  • 堤防断面の不足を補う目的から裏のり側に土のうなどを積み上げ、堤防を補強する工法
土のう羽口工法
  • 川表または川表のり面が崩壊した際に堤防断面の補強又はのり崩れの拡大を防ぐために行われる工法
継ぎくい打ち工法
  • 裏のりの崩壊した部分に木杭を並べて打ち、連結してその中に土俵または土のうを詰め込み、堤防断面の補強をする工法
さくかき詰め土俵工法
  • 崩壊の程度によってその最下部から天端と平行に数列の杭を打ち込み、各列に竹やそだで柵を作り、爪土俵を行い堤防を補強する工法

崩壊対策では、ほかにも大型土のう、立てかご、力ぐい打ち工法も用いられています。

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河川に構造物を設置する場合には、洗掘(深掘れ)をはじめ、さまざまな被害が発生しうる可能性を考慮した上で業務に取り組むことが大切です。

本記事をきっかけに、洗掘(深掘れ)を中心とした被災要因・水防工法に理解を深めてはいかがでしょうか。

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