施工管理の転職ノウハウ

主任技術者資格を徹底解説!取得の手順と注意点|監理技術者との違いも

「主任技術者の資格ってそもそもなんだっけ?」「主任技術者資格を取得してキャリアアップしたい」と考えている方向けの記事です。

主任技術者資格は建設業法の定められた「配置技術者」に該当する重要な資格ですが、その重要性とキャリアアップへの効果を正しく把握できている人は多くありません。

この記事を読むことで、主任技術者資格の取得方法やメリット、主任技術者資格取得後のキャリアまでをイメージできるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

主任技術者ができること

主任技術者は、元請けの場合下請金額4,000万円未満、建築一式の場合6,000万円未満の工事について専任の技術者として担当することができます

これは、建設業法第26条第1項・第2項に基づいて規定されており、上記金額以上の工事では監理技術者を配置することが義務付けられているからです。

主任技術者は金額の大小に関わらず、すべての工事に主任技術者を配置することが義務付けられているため、実質的には請負金額の小さい工事を担当することが多くあります

※令和2年10月1日からの一部緩和

鉄筋工事・型枠工事の下請金額4,000万円未満の工事には、一定要件を満たした場合に主任技術者の配置は不要となりました。

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主任技術者資格を取得するための方法

主任技術者になるには3つの方法があります。

  1. 実務経験
  2. 国家資格の取得
  3. 登録基幹技能者講習の修了

これらの方法のいずれかを満たすことで、主任技術者資格を取得することができます。

①実務経験

主任技術者資格を取得するための1つ目の方法は、実務経験を積むことです

指定の学科卒業後に規定の実務経験年数を積むことで、主任技術者になることができます。

学歴により必要な経験年数が異なるため、以下の表を確認しましょう。

学歴

必要実務経験年数

高等学校の指定学科卒業後

5年以上

専門学校の指定学科卒業後

5年以上

高等専門学校の指定学科卒業後

3年以上

専門学校(専門士又は高度専門士)の指定学科卒業後

3年以上

短期大学の指定学科卒業後

3年以上

大学の指定学科卒業後

3年以上

それ以外の学歴の者

10年以上

参考:「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者(資料編)」(国土交通省)

②国家資格の取得

主任技術者になるには国家資格の取得も一つの方法です

ここでは、主任技術者になれる資格を土木・建築・電気・管の各工事から抜粋してご紹介します。

建設工事種別

主任技術者になれる資格

土木

1級建設機械施工技士

 

2級建設機械施工技士(第1種~第6種)

 

1級土木施工管理技士

 

2級土木施工管理技士(種別:土木)

 

技術士 建設・総合技術監理(建設)

 

技術士 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)

 

技術士 農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」)

 

技術士 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」

 

技術士 森林[森林土木」・総合技術監理(森林[森林土木」)

建築

1級建築施工管理技士

 

2級建築施工管理技士(種別:建築)

 

1級建築士

 

2級建築士

電気

1級電気工事施工管理技士

 

2級電気工事施工管理技士

 

技術士 建設・総合技術監理(建設)

 

技術士 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)

 

技術士 電気電子・総合技術監理(電気電子)

 

第1種電気工事士

 

第2種電気工事士+実務経験3年

 

電気主任技術者(第1種~第3種)+実務経験5年

 

建築設備士+実務経験1年

 

計装+実務経験1年

1級管工事施工管理技士

 

2級管工事施工管理技士

 

技術士 機械「流体工学」又は「熱工学」・総合技術監理(機械「流体工学」又は「熱工学」)

 

技術士 上下水道・総合技術監理(上下水道)

 

技術士 上下水道・総合技術監理(上下水道)

 

技術士 衛生工学・総合技術監理(衛生工学)

 

技術士 衛生工学「水質管理」・総合技術監理(衛生工学「水質管理」)

 

技術士 衛生工学「廃棄物管理」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物管理」)

 

給水装置工事主任技術者+実務経験1年

 

技能検定 冷凍空気調和機器施工/空気調和設備配管

 

技能検定 給排水衛生設備配管

 

技能検定 配管(選択科目「建築配管作業」)・配管工

 

技能検定 建築板金(選択科目「「ダクト板金作業」)

 

建築設備士+実務経験1年

 

計装+実務経験1年

参考:「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者(資料編)」(国土交通省)

③登録基幹技能者講習の修了

指定された登録基幹技能者講習を修了することで主任技術者になることが可能です

これは、2018年4月1日から認められるようになったもので、対象となる講習と建設業の種類は以下となります。

登録基幹技能者講習

建設業の種類

登録電気工事基幹技能者講習

電気工事業、電気通信工事業

登録橋梁基幹技能者講習

鋼構造物工事業、とび・土工工事業

登録造園基幹技能者講習

造園工事業

登録コンクリート圧送基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録防水基幹技能者講習

防水工事業

登録トンネル基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録建設塗装基幹技能者講習

塗装工事業

登録左官基幹技能者講習

左官工事業

登録機械土工基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録海上起重基幹技能者講習

しゆんせつ工事業

登録PC基幹技能者

とび・土工工事業、鉄筋工事業

登録鉄筋基幹技能者講習

鉄筋工事業

登録圧接基幹技能者講習

鉄筋工事業

登録型枠基幹技能者講習

大工工事業

登録配管基幹技能者講習

管工事業

登録鳶・土工基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録切断穿孔基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録内装仕上工事基幹技能者講習

内装仕上工事業

登録サッシ・カーテンウォ-ル基幹技能者講習

建具工事業

登録エクステリア基幹技能者

タイル・れんが・ブロック工事業、とび・土工工事業、石工事業

登録建築板金基幹技能者講習

板金工事業、屋根工事業

登録外壁仕上基幹技能者講習

塗装工事業、左官工事業、防水工事業

登録ダクト基幹技能者講習

管工事業

登録保温保冷基幹技能者講習

熱絶縁工事業

登録グラウト基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録冷凍空調基幹技能者講習

管工事業

登録運動施設基幹技能者講習

とび・土工工事業、舗装工事業、造園工事業

登録基礎工基幹技能者講習

とび・土工工事業

登録タイル張り基幹技能者講習

タイル・れんが・ブロック工事業

登録標識・路面標示基幹技能者講習

とび・土工工事業、塗装工事業

登録消火設備基幹技能者講習

消防施設工事業

登録建築大工基幹技能者講習

大工工事業

登録硝子工事基幹技能者講習

ガラス工事業

参考:登録基幹技能者の主任技術者の要件への認定について(国土交通省)

主任技術者資格取得のメリット

主任技術者の資格を取得することには大きなメリットがあります。

その理由は大きく2つです。

  1. キャリアアップにつながる
  2. 年収アップにつながる

企業は請け負った工事には主任技術者を配置する義務があることから、主任技術者になれる人材のニーズは高いです。

これら主任技術者の資格を取得することのメリットを詳しく見ていきましょう。

キャリアアップにつながる

主任技術者になる資格を得ることは自身のキャリアアップにつながります

なぜなら、主任技術者として工事を担当できるようになることで、働く企業での業務の幅が広がっていくからです。

例えば、主任技術者や監理技術者の下で監理実務を行っていたところから、自身の責任で監理実務を行うこととなります。

また、施工台帳にも主任技術者として自身の名前が載ることとなります。

年収アップにつながる

主任技術者になる資格を得ることは年収アップにもつながります

なぜなら、業務の範囲が広がることで、企業への貢献度も高くなり、評価もされやすくなるからです。

また、社内での昇給だけでなく、転職市場でも評価されやすくなります。

よこてん
今の時代は昇給を待つより、転職した方が年収は断然上がりやすいのは周知の事実ですよね。

そのため、主任技術者を取得し転職すると、年収アップにつながります。

主任技術者資格を取得する際の注意点

主任技術者資格を取得しようとする際には注意点もあります。

主任技術者は建設工事における施工従事者の技術的な指導監督を行うため、企業との雇用関係や業務の範囲についていくつかの要件があることが特徴です

ここでは、主任技術者資格を取得する際の注意事項について解説します。

恒常的な雇用関係が必要

主任技術者となるには、企業との直接的で恒常的な雇用関係である必要があります

企業と直接の雇用関係とは、企業と直接雇用契約を結んでいる正社員などが一例となります。

派遣・アルバイトでは従事できない

主任技術者は派遣社員や出向、アルバイトではなれません

なぜなら、先に説明した通り、主任技術者に任命されるには企業との直接の雇用関係が必要となるためです。

例えば、派遣社員として派遣先の企業で工事を担当している場合でも、派遣先の企業が請け負った工事の主任技術者になることができません。

工事現場を兼任できない場合がある

主任技術者は、公共性のある工作物に関する重要な工事かつ、工事請負代金額が4,000万円(建築一式工事である場合は8,000万円)以上の工事の場合には、専任で配置することが義務付けられており、工事現場の兼任はできません。(※)

※一定の条件を満たすことで主任技術者が複数の現場を兼任することが可能な場合があります。詳しくは別途

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主任技術者・監理技術者の違い

実は役割は主任技術者も監理技術者も同じで、工事現場の管理・監督が主な仕事です。

では、主任技術者と監理技術者の違いは何か?

それはかんたんに言うと、担当する建設工事の規模の大小です

それぞれどのような工事に配置されるのか、違いをわかりやすく解説します。

1番の大きな違いは工事規模

主任技術者と監理技術者の違いは担当する工事の規模です。

主任技術者は請負金額を問わずすべての建設工事に配置が義務付けられており、監理技術者は請負金額4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の建設工事で配置が義務付けられています。

監理技術者は主任技術者の上位であり、より高度な業務を求められているのが監理技術者です。

監理技術者は全体の技術指導の役割も担う

主任技術者も行っている「施工計画の作成」「工程管理」「品質管理」に加え、監理技術者は工事全体の技術指導も行います

具体的には、技術者の配置などの法令が守られているかの確認、下請けを含む請負範囲での技術指導になります。

参考:国土交通省「監理技術者等の職務(役割)の明確化、実質的に施工しない企業の施工体制からの排除、工場製品の品質確保」

監理技術者資格を取得するための要件

監理技術者資格を取得するためには、一定の要件を満たすことが必要です。

主任技術者資格と同様、資格や実務経験が必要となるため、以下に解説します。

資格や実務経験の要件

資格や実務経験で監理技術者の要件を満たすには、指定建設業の7業種とそれ以外の22業種で必要な資格は異なってきます。

指定建設業の場合、一級国家資格の取得者のみ監理技術者になることができます

指定建設業以外の22業種では、一級国家資格のほか実務経験でも監理技術者になることが可能です

ここでは、指定建設業の7業種のうち、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業について解説します。

建設工事種別

主任技術者になれる資格

土木

1級建設機械施工技士

 

1級土木施工管理技士

 

技術士 建設・総合技術監理(建設)

 

技術士 農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」)

 

技術士 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」

 

技術士 森林[森林土木」・総合技術監理(森林[森林土木」)

建築

1級建築施工管理技士

 

1級建築士

電気

1級電気工事施工管理技士

 

技術士 建設・総合技術監理(建設)

 

技術士 電気電子・総合技術監理(電気電子)

1級管工事施工管理技士

 

技術士 機械「流体工学」又は「熱工学」・総合技術監理(機械「流体工学」又は「熱工学」)

 

技術士 上下水道・総合技術監理(上下水道)

 

上下水道「上水道及び工業用水道」・総合技術監理(上下水道「上水道及び工業用水道」)

 

技術士 衛生工学・総合技術監理(衛生工学)

 

技術士 衛生工学「水質管理」・総合技術監理(衛生工学「水質管理」)

 

技術士 衛生工学「廃棄物管理」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物管理」)

実務経験で監理技術者になる場合には、それぞれ学歴と資格の保有によって必要な実務経験の年数が異なります

なお、実務経験には2種類あり、工事の経験と指導監督的な経験の2種類があり、どちらも必要になるため、注意しておきましょう。

 

実務経験

指導監督的実務経験

指定学科を履修

卒業後、3年以上または5年以上

2年以上(実務経験年数と重複可)

特定の国家資格の保有

実務経験必要なしまたは、合格後1年以上、3年以上、5年以上

その他

10年以上

資格者証の交付

監理技術者となる場合には、要件をクリアするのに加え、監理技術者資格者証の交付申請をし、資格者証を受領する必要があります。

申請書の入手方法は以下の3つ。

  • 建設業技術者センターの窓口で受け取る
  • 郵送で受け取る
  • インターネットからダウンロード

その後、資格者証交付申請書と必要書類を提出し、交付されるのを待ちましょう。

交付後は監理技術者講習を受講して、ようやく工事に配置となります。

詳しい資格者証の交付手続き方法については、別記事にまとめていますので参考にしてください。

主任技術者資格でキャリアアップしよう

主任技術者資格は一定の要件を満たした技術者として、周囲からの評価もされる資格です。

また、主任技術者は請負金額に関わらず、建設工事に必ず配置することが義務付けられているため、企業からの需要も高いです。

転職や年収アップにも有利になるため、主任技術者資格を取得しようと検討している人は、ぜひ自身のキャリアアップに向けて動き出してみましょう。

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