建設業界の基礎知識

地耐力とは?地盤改良に必要な計算式や調査方法を徹底解説!

建物の建設には、大小問わず地耐力を調べることが法律で定められています。

法律で定められていたとしても、地耐力の意味や重要性を把握していないと、建造物の完成後に大きなトラブルを招く危険性があります。

今回は地耐力の概要と調査方法を中心に解説します。

建物の建造にどのように関係しているのか、きちんと調査しないとどのようなことが起きうるのかを把握し、今後の業務に活かしていきましょう。

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地耐力とは


地耐力は地盤の強度を表す言葉です。

建物の重みにどれくらい耐えられるかを把握することで、建物の直下で支える基礎の構造形式が決められます。

地耐力が建物の単位面積あたりの重量よりも

  • 大きい場合:建物は重みに耐えられる
  • 小さい場合:重みに耐えられず沈んでしまう

耐力は応力を加えたことでひずみが出る許容応力度になり、許容応力度は計算によって割り出すことができます。

一例としては「30kn/㎡」「50kn/㎡」「5t/㎡」「15t/㎡」といった数値で表します。

地盤の許容応力度は建築基準法施行令で規定されています。
詳細はe-Gov法令検索内「建築基準法施行令」の第九十三条をご確認ください。

参考:e-Gov法令検索|建築基準法施行令

長期許容地耐力とは

長期許容地耐力は、建物の重みに対する長期的な指示力を指し、地盤に重さ・圧力が加わった際、どれくらい沈下せずに耐えられるかといった意味があります。

後述する軟弱地盤であれば、杭基礎の重さが加わった際に地盤が崩れます。

建物を建てたあとにこのようにならないため、建築業界では地耐力の算定や計算、確認が必要です。

地盤とは

地盤とは、地表から一定の深さまでの土地のことです。
建物の荷重を支え、安定した状態を保つ役割を担っています。

地盤は下層にある岩盤・粘土・砂といった地層も含みます。

地盤は「支持地盤」と「軟弱地盤」に分かれています。
支持地盤は建物や構造物の荷重を支えられる地盤を指し、軟弱地盤は荷重によって変形しやすい地盤を指します。

地盤の強度はn値で表す

地盤の強度は「n値」で表します。

このn値は地盤の強度、つまり力の単位である「ニュートン」を意味します。
単位mあたり何kgの力に耐えられるかを表しています。

地耐力の計算は「n値×10」で計算することができ、例えばn値が0〜4であれば、地耐力は0〜40といった数字で算出されます。

40kn/㎡の基礎を打ち込む場合は、地耐力が40kn/㎡以上なければ地盤が耐えきれず崩れてしまうことが分かります。

なお建物を建てる際のn値は後述する「標準貫入試験」で調べることができます。

地耐力を確認する際に用いられる調査方法


建築現場で建物を建てる際は、地耐力についてあらかじめ確認する必要があります。

ここからは地耐力を確認する調査方法をメリット・デメリットとあわせて解説します。

標準貫入試験

標準貫入試験は、ボーリングを使って掘削した孔を使用し、1mごとに地盤の硬さを測定する試験です。

土のサンプリングと同時に行い、地盤の強度と地層の状況を把握します。
建築現場ではボーリング調査と呼ばれることもあります。

試験では63.5kgの重りを高さ75mから初速度ゼロで自由落下し、試料採取器(サンプラー)を土中30cm貫入させるのに必要な打撃回数を測定し、この打撃回数をN値と称して地番の耐性を推測します。

標準貫入試験による基準は50回とし、サンプラーが30cmの深さに埋まるまでに打撃回数が50回だったときは、n値50以上と記録されます。

標準貫入試験のメリット

標準貫入試験によるメリットには、調査用途の多さや精度が高い調査ができること、液状化の判定がスムーズにできることが挙げられます。

住宅地はもちろん、倉庫や中規模建築物などにも適応可能なので、多くの建築現場に対応しやすいと言えます。

標準貫入試験のデメリット

デメリットには、ボーリングは大きな機材であることから、試験そのものが大がかりになり時間と費用がかかる、調査する際は広いスペースを確保しなければならない、横方向での調査にやや不向きというのが挙げられます。

平板載荷試験

平板載荷試験は段階的に荷重を加えた後、どのように沈下状態が復元されるかを調べる試験です。
この試験によって地盤の信頼性を確認します。

方法としては、まず建物の基礎を設置する位置まで掘削後、その基礎部に直径30cmの円盤状の載荷板を設置します。

その後、板に実際の建物の重量と同様の荷重を8段階に加えていき、5分ごとに徐々に強め、力が最大になった後、今度は5分ごとに荷重を緩めていく流れです。

平板載荷試験のメリット

平板載荷試験のメリットには、調査の信頼性が高いことや調査時間を短縮できること、費用を抑えられるほか、騒音・振動がないことが挙げられます。

平板載荷試験のデメリット

一方で、深い地盤では行えないことや調査箇所が増えてしまうこと、支持力の評価が難しいといったデメリットがあります。

スウェーデン式サウンディング試験

スウェーデン式サウンディング試験は、簡易試験によって標準貫入試験の打撃回数(n値)に匹敵する換算n値が算出できる試験で、鉄の棒を使用して行われます。

なお、換算n値は標準貫入試験を実施せずに地盤の判断に使われる値を指します。

試験では鉄の棒を杭打ちの要領で地盤に差し込み、埋土の硬さや土粒子などの密度を調べます。

鉄の棒が差しにくいと地盤が固いと評価し、スムーズに差し込めるときは地盤が緩いまたは弱いと評価します。

スウェーデン式サウンディング試験のメリット

スウェーデン式サウンディング試験のメリットには、費用が抑えられることや時間をかけずに行えること、ボーリングを使用しないことからスペースの確保が不要といったメリットがあります。

スウェーデン式サウンディング試験のデメリット

一方で、調査深度に限界がある、検査データの信頼性が低い、硬い地盤に不向きといったデメリットがあります。

地耐力とあわせて覚えておきたい長期許容応力度とは


建物が地盤の上に建つ限り、地盤は常に建物による重量を受け続けますが、その際、地盤内部に外圧が加わると、物体内部に生じる応力という抵抗力が発生します。

この抵抗力に深く関わっているのが長期許容応力度です。

部材が壊れない強度のことを許容応力度と呼びますが、長期許容応力度とは建物の重みに対する長期的な地盤の支持力のことです。

地耐力が低い場合の地盤改良方法


さまざまな地盤調査によって、地耐力が低いまたは弱いと判断された場合、建築物を建てる前に強化する地盤改良が必要になります。

地盤改良には「表層改良工法」や「柱状改良工法」といったいくつかの種類があります。

ここでは地盤改良を行う際に比較的選ばれやすい3つの方法を、メリット・デメリットとあわせて解説します。

表層改良工法

表層改良工法は、軟弱地盤の層が地表から2m以内に適用される改良方法です。

良好地盤と軟弱地盤の間にアスファルトやセメントを散布後、地盤内の土と混ぜ合わせて団結体を造り、地盤の強度を上げる方法から、全体的に軟弱な地盤には行いません。

表層改良工法のメリット

表層改良工法のメリットには、簡単に施工できるほか、地盤に異物を混入できること、費用が抑えられるといったメリットがあります。

表層改良工法のデメリット

一方で、施工する従業員のスキルによってばらつきが出やすいほか、地盤が傾斜していると施工できないといったデメリットがあります。

柱状改良工法

柱状改良工法は、軟弱地盤が2~8m未満の場合に行われる改良方法です。

良好地盤と軟弱地盤の間にあらかじめ掘削した穴にアスファルトやセメント、そして現地の土を混ぜて流し込みます。

柱状の改良体の先端支持力と局面摩擦力で建物による荷重沈下を防ぐ目的があり、適応する地盤が多いといった特徴があります。

柱状改良工法のメリット

振動や騒音がないことから周囲の迷惑にならないこと、工期が短く済む、信頼性があるといったメリットがあります。

柱状改良工法のデメリット

一方、軟弱地盤の割合が多いとできないことや、費用が高いといったデメリットもあります。

小口径鋼管杭工法

小口径鋼管杭工法は、軟弱層が8m以上の場所に効果的な改良方法です。
鋼管の杭を支持層まで回転圧入し建物を支える仕組みです。

地下水の影響を受けにくいので、地盤が傾斜していても施工可能といった特徴があります。

表層改良工法や柱状改良工法では対応しきれないほど支持層が深いときや、ほかの方法では強度を出しにくい土質のときに採用されます。

小口径鋼管杭工法のメリット

小口径鋼管杭工法は、比較的小型の機械での施工が可能なことから、一般住宅の地盤改良工事に用いられることも多いです。

セメント系固化材の使用もないため、固化不良の心配がないほか、土地質にかかわらず施工できるといったメリットがあります。

小口径鋼管杭工法のデメリット

一方で、支持層がない地盤では施工できないほか、地盤に鋼管の杭を差し込む際に生じる騒音や振動によって周囲の迷惑になる、費用が高いといったデメリットがあります。

地耐力は建物に欠かせない項目

地盤の地耐力確保は、建物を建てる際に確認すべき重要な項目の一つです。

技術の進歩によって地耐力や許容応力度などが調べられるようになったことから、事前に地盤の弱さを把握することも可能になりました。

地盤の強度、さらには適した方法に関する知識を押さえ、得た知識を日々の業務に活かしましょう。

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