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2025年3月から公共工事設計労務単価が引き上げられます。
これは公共工事の積算(工事費算出)に使われる労務費の基準であり、建設業界にとって賃金水準や工事コストに直結する重要な指標です。
今回の改定では全国平均で前年度比6.0%という大幅なアップとなり、13年連続の引き上げで過去最高額に達します。
本記事では、この労務単価引き上げの概要と背景、建設業界や転職市場への影響、そして業界関係者が取るべき対応策について詳しく解説します。
賃金上昇が施工現場や企業経営に何をもたらすのか、また転職希望者にとってどのようなチャンスや課題が生まれるのか、最新動向を踏まえて考察します。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00261.html
2025年3月から適用される公共工事設計労務単価とは?
設計労務単価とは?(概要と役割)
公共工事設計労務単価とは、国や自治体など公共発注の工事で積算に用いられる建設労働者の賃金単価を指します。
言い換えれば、「公共工事における1人1日あたりの労務費の標準額」です。
この単価は国土交通省や農林水産省が毎年、建設現場で働く技能労働者の実際の賃金調査をもとに算定・公表しており、公共工事の予定価格(予算)を決める基礎資料となります。
設計労務単価には基本給や各種手当が含まれますが、企業が負担する社会保険料や現場管理費等の諸経費は含まれていない点に注意が必要です。
そのため、実際に下請業者に支払う際はこの単価に諸経費分を上乗せする必要があります。
過去の推移を振り返ると、設計労務単価は2013年度(平成25年度)の算定方法見直し(法定福利費の反映)を契機に毎年上昇を続けてきました。
特に東日本大震災後の復興需要や慢性的な人手不足を背景に、2012年度以降13年連続で引き上げが行われています。その結果、全国全職種の単純平均日額は2012年頃と比べて約12,000円も増加し、ほぼ倍増に近い水準となりました。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001724088.pdf
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今回の引き上げの背景(労働力不足・物価高騰など)
2025年3月適用の労務単価が大幅アップ(+6.0%)となった背景には、現在の建設業界を取り巻く複数の要因があります。主な背景要因を整理すると以下の通りです。
慢性的な人手不足の深刻化
建設業では高齢化と若年入職者の減少により技能労働者が慢性的に不足しています。
特に「2024年問題」とも言われるように、2024年から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されるため長時間労働に頼ったやり方が困難になります。
加えて団塊世代をはじめとするベテラン技能者の大量引退(いわゆる「2025年問題」)が目前に迫り、現場の担い手確保が喫緊の課題です。
この人材難に対応するには賃金を含め労働条件を大幅に改善しないと若手が定着しないため、労務単価の引き上げによって業界全体の賃金水準を底上し、人材確保につなげる狙いがあります。
物価上昇・資材費高騰への対応
近年の円安や世界的な資源高により、建設資材価格が大幅に上昇しています。
鉄鋼やセメント、木材などの高騰で工事費全体が上がる中、賃金だけ据え置かれると技能者の生活も苦しくなります。政府は賃上げ促進を経済政策の柱に掲げており、建設分野でも適正な賃金上昇を誘導する必要がありました。
そのため労務単価にも最近の労働市場の実勢価格を迅速に反映させ、インフレや資材高に負けない水準まで引き上げたといえます。実際、今回の伸び率6.0%は過去10年で最大であり、
物価上昇局面で賃金遅れを取り戻す意味合いもあります。
時間外労働規制への対応費用の反映
2024年からの時間外労働(残業)上限規制に対応するには、労働者一人ひとりの労働時間を減らす代わりに人員を追加確保したり、割増賃金の支払いを強化したりする必要があります。国交省は今回、そうした働き方改革に必要なコストも労務単価に織り込んだとしています。
以上のように、人材不足の深刻化とコスト増要因(物価高・働き方改革)への対応が重なった結果、2025年3月からの労務単価は大幅な引き上げとなりました。これは単なるコスト増ではなく、技能労働者の処遇改善と業界の持続可能性確保のための投資と位置付けられています。
政府も労務単価公表に合わせ、「技能労働者への適正な賃金支払い」「新単価を反映した請負代金への変更」「若年入職者の積極的確保」など関係団体への通知を行い、賃上げ効果が現場に行き渡るよう対策を講じています。
建設業界に与える影響とは?
労務単価の引き上げは、建設業界の現場レベルから企業経営まで幅広い影響を及ぼします。ここでは、施工現場と企業経営それぞれの視点でプラス面・マイナス面を整理します。
施工現場での影響(人件費増加と待遇改善)
現場レベルでは、まず人件費の増加という直接的な影響があります。労務単価が上がることで、同じ工事を行うにも以前より労務費にかかる予算が必要になります。仮に工事費に占める労務費の割合が30%だとすると、労務単価6%上昇は工事コスト全体を約1.8%押し上げる計算です。
そのため現場担当者は、発注者との契約金額内で収めるために工法の工夫や他の経費節減を求められる場面も出てくるでしょう。
特に固定予算の公共工事では、この人件費増によるコスト圧迫が課題となります。
一方で、技能労働者(職人)の待遇改善というポジティブな影響も見逃せません。労務単価アップにより、職人の日給や月給ベースの賃金が底上げされれば、現場で働く人たちの収入増につながります。
実際に政府が算定する単価が上がったことで、「適正な賃金が支払われやすくなる」「社会保険の加入徹底も進み、雇用が安定する」といった効果が期待されています。
賃金水準の向上は若い人にとって建設現場の魅力を高め、人材確保や定着率向上の追い風にもなり得ます。国交省も賃上げを現場の技能者の処遇改善につなげるよう呼びかけており、
適正な労務費が確保された現場では労働環境が徐々に改善していくでしょう。
企業経営への影響(収益構造と価格転嫁)
労務単価引き上げは、建設企業の経営にも様々な影響を及ぼします。
まず収益構造への圧迫です。
特に中小の建設業者にとって、人件費上昇はそのまま原価の増加につながります。
公共工事では発注者が新単価を考慮して予定価格を設定しますが、民間工事では必ずしも契約金額に反映できるとは限りません。
競争入札が激しい案件では、他社と落札価格を競う中で利益を削ってでも受注せざるを得ないケースもあります。結果として、「売上は増えたが人件費も増えて手元に残らない」「仕事はあるのに儲からない」という状況に陥る企業も出てきます。
労務単価上昇分を適切に見積もりに織り込む価格交渉力がないと、経営を圧迫するリスクが高まるのです。
特に問題となるのが価格転嫁の課題です。
元請けの大手建設会社は発注者と交渉してある程度コスト増を織り込めても、その下請け・孫請けとなる中小企業に十分支払われない事例が指摘されています。
いわゆる元請けと下請けの利益格差が拡大し、下請けほど苦しいという構図です。
これでは肝心の現場で働く技能者に賃金アップの恩恵が及ばず、人材流出を招きかねません。国土交通省も「ダンピング受注(過度な安値受注)の防止」や「下請代金への必要経費計上の徹底」を通知で呼びかけており、業界全体で適正なコスト負担を浸透させる必要があります。
一方、労務単価上昇は企業にとってもチャンスになり得ます。賃金水準が向上することで優秀な人材を確保・定着させやすくなり、ひいては生産性向上や企業力強化につながる可能性があるからです。
十分な人件費を確保できれば、これまで人手不足で受注を諦めていた工事に取り組めるようになるかもしれません。
また、処遇改善によって従業員の士気が高まり、離職率が下がれば、長期的には人材育成が進んで会社の技術力向上にも寄与します。
つまり、短期的にはコスト増でも、長期的視点で見れば「人への投資」としてリターンを生む可能性があるのです。
総じて、労務単価の引き上げは建設企業に「コスト増のリスク」と「人材投資の機会」という両刃の影響を与えます。
重要なのは各社が戦略を見直し、この環境変化に対応できるかどうかです。次章では、人材面に焦点を当てて転職市場への影響を見てみましょう。
転職市場への影響
賃金水準の変化は労働市場にも波及します。
建設業界に特化した転職を支援する立場から見ると、求職者(労働者)と求人を出す企業の双方で変化が起きると考えられます。
以下では、求職者にとってのメリットと、企業側の採用戦略の変化について解説します。
求職者にとってのメリット(賃金上昇と環境改善)
労務単価の引き上げによって、建設業で働く人・働こうとする人には大きなメリットが期待できます。
第一に賃金水準の上昇です。
政府公表の基準日給が上がったことで、各社の給与テーブル見直しや現場作業員の日当アップが見込まれます。
「給与水準が他業種より低い」という理由で転職をためらっていた人にとって、条件改善は朗報でしょう。
実際に今回の改定後は、未経験でも比較的高い初任給を提示する求人が増える可能性があります。
「転職先の選択肢が広がる」「より好条件の求人を選べる」といった有利な状況が生まれつつあります。
第二に、働きやすい環境への変化です。
賃金アップと同時に業界では働き方改革が進行しており、長時間労働の是正や週休二日制の推進など労働環境の改善が図られています。
例えば、2024年の時間外規制施行を契機に、多くの建設会社が残業削減や現場の効率化に本腰を入れ始めました。
従来「休みが少なく厳しい」と敬遠されがちだった施工現場も、徐々に休日取得や福利厚生整備が進んでいます。
給与が上がり労働環境も改善されるなら、建設業は働きがいのある業界として見直され、転職先として十分魅力的になり得ます。
さらに見逃せないのが、キャリアアップのチャンスです。
人手不足に伴い若手にも責任あるポジションや難易度の高い仕事が回ってきやすい状況です。
今いる会社で頭打ちを感じている技能者や施工管理技士の方も、他社に移ることでより高い役職や待遇を得るチャンスがあります。
また各社が人材育成に力を入れ始めているため、スキルアップ支援制度が充実してきているのもメリットです。
資格取得補助や研修制度を設ける企業が増えており、自分の市場価値を高めながら働ける環境が整いつつあります。
このように、労務単価引き上げは求職者に「給与面のメリット」と「働きやすさのメリット」をもたらします。
ただし、もちろん企業ごとに対応は様々です。
転職希望者は単に給与額だけでなく、その企業が本当に現場の働き方改革に取り組んでいるか、将来性ある仕事ができるか、といった点も見極める必要があります。
次に企業側がどのように採用戦略を変えているかを見てみましょう。
企業の採用戦略の変化(人材確保のための施策)
多くの建設企業にとって、労務単価アップは人材獲得競争の追い風となります。
各社は人手不足に対処すべく、これまで以上に採用活動に力を入れ始めています。
特に顕著なのが待遇面の改善による人材確保策です。
賃金水準が業界全体で上がったことを受け、「他社に負けない給与提示」をする企業が増えています。
求人票に未経験者でも高月給スタートや賞与増額などを明記し、求職者の目に留まるよう工夫する動きがあります。
また、現場手当や技能手当の充実、資格取得支援金の支給など、経済的インセンティブを手厚くする企業も出てきました。
同時に、未経験者・若手の採用強化もトレンドです。
高齢化で減った技能者を補うため、異業種からの転職者や新卒・第二新卒層を積極的に受け入れる企業が増えています。
今回の賃金引き上げは「若年層の建設業への参入を促すチャンス」でもあり、各社とも育成前提で人材の裾野を広げる戦略にシフトしています。
「未経験OK」「研修充実」を打ち出し、ポテンシャル重視で人を採り、現場で一から育てる体制を整える企業が目立ちます。
実際、国交省も若年入職者の確保を業界団体に呼びかけており、界全体で新人育成に取り組む機運が高まっています。
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建設業界関係者がとるべき対応策
労務単価の引き上げに直面し、建設業界の関係者はそれぞれ戦略的な対応が求められます。
企業(経営者側)と求職者(労働者側)に分けて、今後取るべき具体的な対策・心構えを整理します。
企業が行うべき対策(賃金改定と生産性向上)
まず建設企業側の対策です。
経営者や人事担当者は、労務単価引き上げを他人事と捉えず、自社の持続的発展のためのチャンスと捉えることが重要です。
具体的には以下のような取り組みが考えられます。
賃金テーブルの見直しと予算確保
国の単価アップに合わせ、自社の給与体系を点検しましょう。
特に現場技能者や技術者の初任給・昇給カーブを業界水準に見合ったものへ改定し、優秀な人材が定着するようにします。
その際、必要な人件費を工事原価や経費に適切に織り込むことも重要です。
公共工事を請け負う場合、新労務単価を考慮して見積もりを行い、無理のない予算を確保します。
賃金改定はコスト増ですが、適正な利益が確保できるよう発注者との交渉や内部の経費見直しも並行して行います。
労働環境の改善と人材定着
賃金だけでなく働きやすさも含めたトータルな改善を図ります。
具体的には週休2日制の推進、現場のシフト制導入、有給休暇の取得奨励、安全設備への投資などです。
長時間労働の是正は法令遵守のみならず、人材の健康と定着に直結します。
福利厚生面でも他業種並みの水準を目指し、社員寮の整備や家族手当の拡充など働き続けやすい職場づくりを進めましょう。
現場社員の声を経営層が直接聞き、職場環境改善のPDCAを回す仕組みも有効です。
生産性向上への投資(省人化・DXの推進)
人件費が上がった分を技術革新で補う視点も重要です。
例えば建設ICTツールや施工管理ソフトの導入、BIM/CIM活用による設計・施工プロセスの効率化、プレハブ工法の採用など省人化に資する投資を積極的に行います。
初期コストはかかりますが、中長期的に人手不足や人件費高騰に対応できる体質が構築できます。
また、社員の技能向上も生産性向上につながるため、資格取得支援や社内技能訓練にも投資しましょう。
国や自治体の補助金・助成金も活用し、経営基盤強化に役立てることが肝要です。
適正価格受注と協力会社との関係構築
安易な安値受注は自社と協力会社双方の首を絞めます。労務費アップ分を正当に評価した適正価格で受注する姿勢を貫き、必要に応じて発注者と粘り強く交渉することが大切です。
同時に、自社だけで対応困難な場合は協力会社と連携し、Win-Winの関係を築きましょう。
元請けであれば下請けへの支払いに新単価分を上乗せし、公正な取引で信頼を得ます。
下請けであれば元請けに対し適正な見積もりを提示し、交渉によって適切な対価を得る努力をします。
持続可能なサプライチェーンの構築が、結果的に人材定着と品質確保につながります。
以上の対策を講じることで、企業は労務単価上昇を乗り越え、むしろ人材力・技術力で競争優位を築くことが可能となります。
「人に投資し、人を大切にする経営」へ舵を切ることが、これからの建設企業に求められる対応策と言えるでしょう。
求職者が意識すべきポイント(市場動向の把握とスキルアップ)
次に求職者側の対応策です。
現在建設業界で働いている方や、これから転職を検討している方は、労務単価引き上げに伴う市場の変化を踏まえてキャリア戦略を立てることが重要です。
意識すべきポイントをいくつか挙げます。
業界や転職市場の動向を見極める
まず、今建設業界で何が起きているのか常にアンテナを張りましょう。
国土交通省の発表や業界ニュースをチェックし、賃金動向や人材需要の情報を収集します。
例えばどの職種・資格が特に不足しているのか、どんなスキルが今後求められるのか知ることで、転職先の選択に役立ちます。
施工管理技士や建築士など有資格者の需要は高まる一方ですし、DX人材(ITに強い現場監督など)も注目されています。
また、求人サイトや人材エージェントから得られる企業の採用ニーズにも敏感になり、自分の市場価値を客観視することが大切です。
自身のスキルアップの重要性
賃金が上がったとはいえ、より良い条件で転職するには他の求職者との差別化が必要です。
そのためにはスキルアップを怠らないことが肝心です。
具体的には、施工管理技士(1級・2級)や建築士、技能士といった資格取得にチャレンジしたり、新たな工法・技術(CAD、BIM、ドローン測量など)を習得したりすることです。
資格やスキルは転職市場で強力な武器となり、より高いポストや年収で迎えられる可能性を高めます。
現在の職場にいながらでも夜間講習や通信講座で学ぶことはできますし、会社によっては費用補助もあります。
「学び続ける職人・技術者」であることが、将来のキャリアの安定につながります。
企業研究と見極め
転職活動においては、興味のある企業の労働環境や将来性をしっかり調べましょう。
労務単価アップを受けて各社がどのような対応をしているかは重要な見極めポイントです。
求人票に「週休2日」や「残業月20時間以内」と書かれていても、実態が伴っているか企業HPの情報や社員口コミなどで確認します。
また、面接時には遠慮せず賃金や働き方に関する質問をすることも大切です。
「新しい労務単価改定を受けて御社で何か取り組んでいますか?」などと聞いてみるのも良いでしょう。
それに対して明確な答えができない企業は、今後の時代についていけない可能性もあります。
柔軟なキャリアプラン
建設業界は技術革新や市場変化が激しくなってきています。
将来を見据えてキャリアの選択肢を広げておくことも重要です。
例えば現場施工だけでなく、ゆくゆくは施工管理や積算、技術営業など他の職種にキャリアチェンジする道もあります。
労務単価アップで待遇が改善されたからといって安住せず、5年後10年後の目標を描いて逆算的にキャリアを積んでいきましょう。
海外でのプロジェクトに挑戦したり、独立して起業したりという道もあります。
業界の追い風を活かしつつ、自身の可能性を最大化する意識を持つことが大切です。
以上のように、求職者は受け身ではなく戦略的・主体的に行動することが求められます。
建設業界は今、大きな転換期にありますが、それは同時にチャンスでもあります。
自分の努力次第で待遇もキャリアも向上が望める時代です。ぜひ情報収集と自己研鑽を怠らず、納得のいくキャリアを築いてください。
今後の展望とまとめ
労務単価引き上げの長期的な影響(持続可能性と新しい働き方)
今回の公共工事設計労務単価の引き上げは、短期的な話題に留まらず長期的に建設業界へ影響を及ぼしていくでしょう。
今後5年、10年というスパンで見たとき、いくつか考えられるポイントを展望します。
まず、労務単価上昇の流れは今後もしばらく続く可能性が高いという点です。
慢性的な人手不足が劇的に解消しない限り、人材確保のための賃金上昇圧力は継続すると考えられます。
実際、専門家の見通しでも「少なくとも今後5~10年は労務単価の上昇が続く」とされています。
公共投資も国土強靱化計画などで底堅く推移する見込みがあり、需要面からも高水準の賃金を支えられる状況が続きそうです。
ただし上昇率は徐々に落ち着き、ある程度高止まりして安定する可能性もあります。
重要なのは、この高い労務費水準に業界が適応し、生産性向上や適正価格取引の定着によって持続可能なビジネスモデルを確立できるかです。
次に、建設業界のイメージと働き方の変化です。賃金が上がり労働環境が改善されれば、業界のイメージアップにつながり、将来的には「選ばれる産業」へと変わっていくかもしれません。
若者が憧れるような最先端技術を駆使する現場や、女性も活躍できる職場が増えれば、人材不足問題も緩和していくでしょう。
テレワークなどは難しい現場仕事ですが、施工管理の一部リモート化やICTによる効率化で、従来とは異なる働き方も登場しています。
例えば遠隔監視システムで現場常駐せずに進捗管理を行う技術者や、複数の現場をオンラインで指示する監督者など、新しい働き方が広がれば労働生産性も一段と向上する可能性があります。
最後に、建設市場や働き手の国際化も進む可能性があります。
人材不足で国内だけではまかないきれなくなれば、海外からの人材受け入れを拡大したり、日本企業が海外に活路を求めたりする動きが出てくるでしょう。
すでに東南アジアなどでは建設需要が旺盛で、日本の企業も海外進出を強めています。
将来、日本人が海外の現場で働く代わりに、海外の職人が日本の現場を支えるといった境界のない労働市場が形成される可能性もあります。
その際、日本の労務単価水準は国際比較で見られるようになるため、グローバル競争力という視点も必要になるでしょう。
総じて、労務単価引き上げは建設業界の転換点であり、「人を大切にする産業」へ進化する契機と捉えることができます。
長期的には賃金水準の向上を原動力に、働き手に魅力的で生産性の高い持続可能な建設業界を築いていけるかが問われています。
まとめ
今回の公共工事設計労務単価の引き上げについて、その概要から影響、対策まで幅広く見てきました。
建設業界は日本経済を支える基幹産業であり、インフラ整備や都市開発になくてはならない存在です。
その現場を担う人々の待遇が改善され、魅力ある職業となっていくことは、とても喜ばしいことです。
一方で、その変化に対応できる企業・個人でなければ生き残れない時代でもあります。
本記事で述べたように、情報を収集し戦略を持って行動することが重要です。
施工王として転職支援の立場から言えば、今の建設業界は「変わる勇気」が報われるフィールドだと感じます。
企業は従来の慣習にとらわれず改革を進めたところが人材を集め、成長していくでしょう。
求職者も新しい一歩を踏み出すことで、思い描くキャリアや安定した生活を実現できるチャンスです。
有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。