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国土交通省のTSUNAG制度が建設業界にもたらす変化とは?緑化推進で高まる造園施工管理技士の需要

国土交通省が進める新制度「TSUNAG(優良緑地確保計画認定制度)」が建設業界で大きな注目を集めています。

都市部の開発に良質な緑地を取り入れるこの制度は、気候変動対策や生物多様性の確保につながるだけでなく、施工管理技士の仕事やキャリアにも影響を与えそうです。
特に造園施工管理技士の需要増加が期待される可能性もあり、建設業界で転職を考えている方にとっては見逃せないトピックでしょう。

本コラムでは施工管理のプロである「施工王」の視点から、最新ニュースで話題のTSUNAG制度の概要と背景、建設業界への影響、そして造園施工管理技士の役割や今後のキャリア展望について詳しく解説します。

TSUNAG制度とは?

TSUNAG制度とは、都市緑地法の改正(令和6年11月施行)に伴い創設された、民間事業者等による良質な緑地確保の取り組みを国土交通大臣が評価・認定する制度です​。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000274.html

気候変動への対応や生物多様性の保全、ウェルビーイング(幸福度)の向上を目的に掲げ、都市開発における「緑地の質と量」を重視する画期的な認定制度として注目されています。ここではTSUNAG制度誕生の背景と目的、そして企業や自治体による取り組みと認定事例について見ていきましょう。

TSUNAG制度の背景と目的

都市緑化の必要性が高まる背景

日本の都市部における緑地面積は他国と比べても少なく減少傾向にあり、ヒートアイランド現象の深刻化や生物多様性の喪失が課題となっています​。
また、気候変動への対応や住民の快適性向上の面からも、都市における「緑」の価値が再認識され始めました。

「まちづくりGX」の一環

国土交通省はグリーントランスフォーメーション(GX)による持続可能な街づくりを推進しており、その一環として都市緑地法を改正してTSUNAG制度を創設しました​。
mlit.go.jp
GXとは、環境配慮型の技術や手法を導入して都市開発を転換する取り組みで、TSUNAGはその具体策の一つです。

制度の目的

TSUNAG制度の目的は、民間企業や土地所有者による自主的な緑地創出・保全の取り組みを促進し、良好な都市環境づくりに寄与することです​。
具体的には、開発プロジェクト内に質・量ともに優れた緑地を確保する計画を認定・奨励することで、都市の気候変動緩和や生態系ネットワークの形成、人々の健康増進(癒しや憩いの場の提供)につなげる狙いがあります。
国としては、こうした取り組みを「見える化」し、優良事例を示すことで他の開発にも波及させたい考えです。

認定の仕組み

TSUNAGでは対象となる開発計画について、緑地の「質」(例:多様な樹種の植栽、地域生態系への貢献、ヒートアイランド対策効果)と「量」(敷地面積に対する緑地面積の割合や規模)の双方を評価し、総合的に優れている場合に国土交通大臣名で認定が与えられます​。

期待される効果

この制度により、民間主導で良質な緑地空間を計画・維持管理する動きが活発化すると期待されています。
都市住環境の改善だけでなく、企業にとっても環境貢献やSDGs達成に資する取り組みとして企業価値向上につながるでしょう。
また、行政としても公共の予算だけに頼らず民間の力で緑地が増えるメリットがあります。

企業・自治体の取り組みと認定事例

初の認定事例が続々誕生

TSUNAG制度は2024年末の施行後、2025年3月18日付で第1回の認定が行われ、全国で14件の優良緑地確保計画が公式に認定されました​。
参考:mlit.go.jp

これらは民間企業による都市開発プロジェクトや自治体と協働した再開発計画など、緑地創出に積極的に取り組んだ事例です。
以下に主な認定事例をまとめます。

認定プロジェクト名(所在地) 事業主体 緑化の特徴
大手町タワー「大手町の森」(東京・千代田区) 東京建物株式会社 敷地の約1/3を本物の森が占有。都会の真ん中で豊かな森林生態系を再現し、ヒートアイランド現象緩和や生物多様性に貢献​。
新梅田シティ「グランフロント大阪・うめきた2期」(大阪市) 積水ハウス株式会社 他 「自然との共生」をテーマに超高層ビル周辺に大規模緑地を配置。都市の中心に憩いと生態系ネットワークを創出。
竹中技術研究所「調の森 SHI-RA-BE」(千葉・印西市) 株式会社竹中工務店 研究所敷地内に里山の景観を再現。雑木林や草原、池沼を整備し地域本来の生態系を復元、生物多様性を向上​。

参考:prtimes.jp
参考:sekisuihouse.co.jp
参考:takenaka.co.jp

上記のように、大手デベロッパーや建設会社が率先して緑地計画を打ち出し、TSUNAG認定を取得しています。

企業にとってTSUNAG認定は、自社プロジェクトの環境価値を国がお墨付きを与える形で証明できるため、ブランディングやテナント誘致の面でもメリットがあると考えられます。
実際、大手町タワーを運営する東京建物は「都市を再生しながら自然も再生する」というコンセプトを掲げ、10年以上にわたり都市内森林の維持管理に努めてきました​。
その取り組みが評価され認定第1号となったことは、他企業への刺激となるでしょう。

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建設業界に与える影響

TSUNAG制度の導入は、単に都市に緑を増やすだけでなく、建設業界全体に新たな潮流をもたらすと考えられます。開発プロジェクトの計画や施工のあり方が見直され、施工管理技士の役割にも変化が及ぶでしょう。ここでは、緑地確保を軸とした都市開発の新しい潮流と、施工管理技士、とりわけ造園施工管理技士の需要増加の可能性について掘り下げます。

施工管理技士の需要増加の可能性

緑化プロジェクト増加による人材需要

緑地重視のプロジェクトが増えることで、それを現場で統括する施工管理技士の需要も増加する可能性があります。
特に造園分野の専門知識を持つ施工管理技士は貴重で、各社が緑化対応のプロジェクトに配置したいと考えるでしょう。
緑地造成や外構工事では土木・建築の知識に加え、植栽や生態系に関する理解が必要なため、造園施工管理技士の存在感が増すと考えられます。

造園施工管理技士への脚光

現在、造園施工管理技士は他の施工管理資格と比べて有資格者数が少なく、“希少人材”となっています。
そのため、緑化需要の高まりに対して造園の施工管理技士が不足しており、今後資格を持つ技術者の市場価値が上がるでしょう。

キャリアアップの好機

以上のように需要が高まる中で、造園施工管理技士にとってはキャリアアップの追い風となります。
希少性の高い資格を持つことで、将来的に大規模プロジェクトの中核を担ったり、好条件の転職を実現できる可能性が高まります。
若手にとっても新たな専門分野として注目でき、早い段階で造園の知見を身につけておくことが差別化につながるでしょう。

造園施工管理技士の役割とキャリア展望

TSUNAG制度により緑化需要がクローズアップされる中、造園施工管理技士という職種への関心も高まっています。
このセクションでは、造園施工管理技士の具体的な役割や求められるスキルを整理するとともに、今後の市場動向や求人の傾向について解説します。
転職を検討している方がキャリアを考える上で、造園施工管理技士の将来性を知る一助としてください。

資格と求められるスキル

造園施工管理技士とは

造園施工管理技士は、庭園や公園などの緑地の工事現場で計画・施工の管理を行う国家資格保有者です​。
1級と2級があり、一定の実務経験を積んだ上で試験に合格することで取得できます。
業務内容は、造園工事の施工計画策定、職人や作業員への指示、進捗・安全・品質管理、資材手配、完成検査など多岐にわたり、建設現場監督の造園版ともいえる存在です。

求められる専門知識

造園施工管理技士には建設管理の一般知識に加え、園芸・植栽や環境に関する専門知識が求められます。
具体的には、樹木や草花の種類と育成管理方法、土壌改良や排水計画の知見、季節に応じた植栽スケジュール調整、景観デザインの基礎、さらには生態系への配慮など幅広い知識が必要です。
また、近年は緑地が持つ防災機能(雨水の地中浸透による洪水緩和など)やヒートアイランド緩和効果についての理解も重要視されています。

資格取得のメリット

造園施工管理技士の資格を持つことで、造園工事を請け負う企業からの信頼を得やすくなり、現場代理人や監理技術者として選任されるチャンスが広がります。
特に1級を取得すれば大規模プロジェクトを任される可能性も高まり、将来は造園部門の責任者や環境推進担当などキャリアの幅が広がります。逆に未経験からこの分野に飛び込む場合でも、資格取得を目標に据えることでモチベーションとなり、早期に専門性を身につける指針となるでしょう。

市場の動向と求人の傾向

都市緑化需要の高まり

市場動向として、都市開発における緑化需要が年々増えています。かつては個人宅の庭園造成や新設公園の整備が中心だった造園業界ですが​、
近年はビルや公共施設の緑化改修、老朽化した公園のリニューアル、商業施設の屋上庭園化など、新しい需要が次々と生まれています。
企業の環境宣言や自治体の緑化方針により、都市のあらゆる場所で緑を増やすプロジェクトが増加傾向にあります。

慢性的な人手不足と高齢化

造園業界では慢性的な人手不足が続いており、特に施工管理技士の求人は増加傾向にあります​。
他の建設分野と比べて若手人材が少なく、高齢の技術者に頼っている企業も多いのが現状です。
そのためシニア層にも活躍の場が広がっており、「定年後も造園施工管理技士として現役」というケースも珍しくありません​。

給与水準や待遇

需要の高まりを受けて、造園施工管理技士の待遇も相対的に向上する傾向があります。
他分野に比べ競争相手が少ないぶん、資格保有者は貴重な戦力として優遇されやすいでしょう​。
求人票でも資格手当や緑化プロジェクト経験者優遇の記載が目立ちます。また、環境分野の仕事に携わることへの社会的意義から、求職者側もやりがいを感じやすい点も魅力です。

将来性

今後も都市緑化のトレンドが続くと見られるため、造園施工管理技士の市場価値は高い将来性があります。
例えば、2050年カーボンニュートラルに向けた街づくりでは緑地の整備が重要な要素となりますし、国際イベントや都市再開発でも必ず環境対策が問われます。
そのたびに経験者の需要が生まれるため、長期的に安定したニーズが見込まれます。
転職希望者にとっては、将来性のある分野としてキャリア選択の一つに十分考えられるでしょう。

TSUNAG制度がもたらす建設業界の未来

TSUNAG制度をきっかけに、建設業界は今後どのような方向へ進んでいくのでしょうか。この最後のセクションでは、持続可能な開発における建設業界の役割を改めて考察します。

持続可能な開発と建設業界の役割

環境と調和するインフラ

持続可能な開発(サステナブル開発)において、建設業界は大きな鍵を握っています。
従来は環境負荷が大きい産業とみなされてきた建設業ですが、TSUNAG制度のように環境と調和するインフラ整備が求められる時代となりました。
建築物そのものの省エネ・脱炭素化はもちろん、周囲の環境も含めてトータルで持続可能性を高めるアプローチが主流になるでしょう。

グリーンインフラへの転換

これからの都市づくりは「グリーンインフラ」を軸に据えたものへと転換していきます。
グリーンインフラとは、樹木や水辺など自然の力を活用して都市機能を支える考え方で、浸水対策や大気浄化、景観向上など多面的な効果があります。
建設業界は土木構造物やコンクリート中心のグレイインフラに加えて、こうしたグリーンインフラの整備も担っていくことになります。
TSUNAG認定プロジェクトはまさにグリーンインフラ実現のモデルケースと言え、今後同様の発想が全国に広がるでしょう。

業界のイメージと若手人材

環境重視の流れは、建設業界のイメージアップにもつながります。
緑豊かな空間づくりに貢献できることは社会的意義が大きく、若い世代にも魅力的に映るはずです。
これまで「きつい・危険・休めない」という3Kイメージで敬遠されがちだった建設現場の仕事も、「環境を創る仕事」「未来の街をデザインする仕事」として捉え直されれば、人材流出の歯止めや優秀な若手の参入促進につながるでしょう。
施工管理技士の役割拡大と合わせて、業界全体の働き方改革や労働環境改善も進めば、持続可能な開発を担う人材基盤が強化されていきます。

建設業界の使命

持続可能な社会の実現に向け、建設業界には「良いものを作って長く使う」「人と自然が共生する空間を創出する」という使命が求められています。TSUNAG制度で示されたように、これからの建設プロジェクトは単なる箱物建築ではなく、地域の自然環境と一体になった存在へと変わっていくでしょう。
その先導役となる施工管理技士や企業の取り組みこそ、未来の街づくりに不可欠なピースです。

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まとめ

TSUNAG制度は、都市における良質な緑地確保を促すことで、環境と共生した街づくりを実現しようという新たな試みです。
最新ニュースで伝えられた第1号認定事例を通じて、その狙いとインパクトがお分かりいただけたでしょう。

建設業界にとって、この制度は単なる環境施策に留まらず、プロジェクトの進め方や人材ニーズに変化をもたらす転換点となりつつあります。
特に造園施工管理技士にスポットライトが当たり、その需要増加と活躍の場の拡大が期待されています。

企業側は積極的に緑地計画を導入し、人材育成や社内体制の整備を図る必要があり、転職希望者にとっては緑化分野の知識・資格がキャリアアップの鍵となるでしょう。
互いにこの潮流を捉えて行動することで、持続可能な開発と自身の成長を両立できるはずです。

最後に、TSUNAG制度が象徴するように、建設業界はこれからますます環境課題への対応が求められます。
しかしそれは裏を返せば、業界が社会の課題解決に貢献できる絶好の機会でもあります。
緑豊かな都市を次世代に残していく使命を胸に、施工管理技士をはじめとする建設のプロたちが力を結集すれば、「持続可能な未来都市」の実現も夢ではありません。
TSUNAGという名のとおり、「人と街と自然をつなぐ」取り組みを通じて、建設業界は今後も進化を続けていくことでしょう。

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