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2025年度版『公共建築工事標準仕様書』改定のポイント徹底解説 ~働き方改革・ICT活用・木材利用はどう変わった?~
2025年3月、国土交通省は公共建築工事標準仕様書の最新版(令和7年版)を制定しました。
公共建築工事標準仕様書は官庁営繕工事で用いる統一基準で、各府省庁共通の契約図書として位置づけられており、その改定周期は3年と定められています。
今回の2025年度版では、働き方改革や生産性向上、木材利用促進など政府の最新施策が反映され、内容が大きく見直されています。
参考:mlit.go.jp
公共工事の現場に携わる方や、これから業界を目指す方にとっても、今回の改定ポイントを押さえておくことは重要です。
本記事では、公共建築工事標準仕様書とは何か、そして2025年度改定で具体的に何が変わったのかを解説します。
公共建築工事標準仕様書とは何か?2025年改定の背景
公共建築工事標準仕様書は官庁施設工事で使われる標準的な仕様書で、統一基準として運用されています。
3年ごとに改定されており、2025年版では働き方改革や木材利用推進など最新の方針が盛り込まれました。
公共建築工事標準仕様書の役割と改定サイクル
公共建築工事標準仕様書とは、国の庁舎など官公庁建築の工事において使用する材料や工法などの標準仕様を定めたものです。
その目的は、発注者ごとに仕様がばらつかないよう統一し、建築物の品質・性能の確保、設計図書作成の効率化、施工の合理化を図ることにあります。
標準仕様書の記載範囲は基礎工事から仕上げ工事まで多岐にわたり、材料の品質基準、施工方法、検査方法などが詳細に定められています。
例えば建築工事編では、コンクリートの配合強度や鉄筋の接合方法、仕上げ材の仕様など、現場で頻繁に用いられる項目について統一的な基準が示されています。
実際の契約では、設計図書にこの標準仕様書を適用する旨を記載することで、標準仕様書が契約図書の一部となります。
各府省庁が官庁営繕を行う際の共通ルール(統一基準)として運用されており、定期的に見直しが行われています。
改定周期は3年で、直近では令和4年(2022年)版が制定されており、今回の令和7年(2025年)版がその次の改定となります。
なお、本標準仕様書には建築工事編のほか、電気設備工事編や機械設備工事編があり、改修工事標準仕様書や木造工事標準仕様書、設備工事標準図といった関連基準も合わせて3年ごとに改定されます。
2025年版ではそれら関連基準も含めて改定が行われました。
それでは、2025年度版で具体的にどのような変更が行われたのか、主なポイントを見ていきましょう。
2025年度改定の背景:働き方改革・生産性向上・木材利用
2025年度版への改定には、国の政策目標が強く影響しています。
最大のポイントは「働き方改革」への対応です。
建設業界では長時間労働の是正や週休2日の推進が重要課題となっており、現場の働き方を見直す必要性が高まっていました。
そこで、本仕様書でも労務環境に配慮した変更が行われ、工期変更時の新たな報告ルールを設けることで無理のない施工計画を立てやすくし、現場の過度な残業削減や適切な休暇取得につなげる狙いがあります。
次に「生産性向上」の観点です。
人手不足が深刻化する建設業界では、限られた人員で効率的に施工を進める取り組みが求められています。
その解決策の一つとして、ICT(情報通信技術)の活用による業務効率化が挙げられます。
2025年版標準仕様書では、電子的な情報共有システムの利用や遠隔臨場(リモートによる現場確認)といった新技術の活用を正式に盛り込み、デジタル技術を活用した施工管理の効率化を図りました。
これは国土交通省が推進する「建設DX」(デジタルトランスフォーメーション)の一環でもあります。
さらに、「木材利用の推進」も改定の重要な柱です。
脱炭素社会の実現や地域経済の活性化の観点から、建築物での木材利用拡大が国の方針となっています。
2021年には「都市の木造化推進法」と呼ばれる法律が施行され、公共・民間を問わず建築物全般で木造化を進める動きが加速しました。
今回の標準仕様書改定でも、この流れを受けて木造建築に関する基準が見直され、木と鉄骨・コンクリートを組み合わせた混構造を含む多様な木造化に対応できる内容にアップデートされています。
以上のように、2025年度版の改定は働き方改革、生産性向上、木材利用促進といった国の重点施策を反映したものとなりました。
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工期変更の円滑化で進む働き方改革
今回の改訂では、工期延長時の協議手続きが明確化されています。
受注者の責によらない遅延発生時に監督職員への報告を義務付け、発注者との協議を円滑にする新ルールです。
現場の無理な残業を減らし、働き方改革を後押しする狙いがあります。
ここから詳細を見ていきましょう。
工期遅延時の報告義務を新設
従来、工事が発注された後に設計変更や予期せぬ事態(天候不良や資材の供給遅れなど)が発生し、当初の工期では完了が難しくなるケースがあります。
その原因が受注者(施工業者)の責任によるものでない場合でも、契約上は工期を守らねばならず、現場にしわ寄せが生じる恐れがありました。
2025年度版の公共建築工事標準仕様書では、このような工期遅延リスクに対処するため、新たな報告手続きが明記されました。
具体的には、受注者の責によらない理由で全体の工期に影響が及ぶ場合には、その旨を速やかに監督職員(発注者側の現場監督者)へ報告しなければならないという規定です。
監督職員とは発注官庁の現場監督担当者であり、この報告を受けた段階で、発注者(官庁側)と受注者(施工者)との間で工期変更に関する協議を行うきっかけとなります。
新設された報告義務により、工期延長が必要な状況が公式に認識されるため、従来よりも契約当事者間で工期の見直し協議がスムーズに進みます。
これまで曖昧だった手続きを標準化することで、受注者にとっては不測の事態でも適切に工期を延長しやすくなり、発注者にとっても工程管理上のリスクを早期に把握できるメリットがあります。
柔軟な工期調整で長時間労働を改善
この新ルールの導入は、建設現場の働き方改革を進める上で大きな意味を持ちます。
2024年4月から建設業にも罰則付きの時間外労働上限規制が適用され、(年間720時間・単月100時間などの制限)法律上も過度な残業ができなくなりました。
参考:xn--alg-li9dki71toh.com
工期に余裕を持たせる取り組みはますます重要になり、新たな手続きは、現場の労働環境を守り、人手不足の中でも持続可能な施工体制を築く一助となるでしょう。
現場では「声を上げにくい雰囲気」が課題と指摘されることもありますが、標準仕様書という公式な形でルール化されたことで、今後は受注者も必要な報告・協議を堂々と行いやすくなると考えられます。
ICT活用と遠隔臨場による生産性向上
2025年版では、デジタル技術(ICT)の活用に関する規定が拡充されました。
情報共有システムを用いた電子書類提出や、遠隔臨場(オンラインでの現場立会い)を正式に認め、生産性向上を図っています。
情報共有システムによる書類提出の電子化
建設工事では、多くの申請書類や報告書類が発生します。
従来、これらの提出や共有は紙ベースで行われることが多く、関係者への配布や保管に手間がかかっていました。
2025年版の標準仕様書では、こうした文書のやり取りを効率化するため「情報共有システムによる書面の提出」についての規定が新設されています。
「情報共有システム」とは、インターネット上で工事関係者が図面や書類を共有できるプラットフォームのことを指します。
例えば、クラウド上の専用サイトに工事写真や検査報告書をアップロードすれば、発注者や監督職員がリアルタイムで確認できます。
これにより、紙の書類を郵送・持参したり、対面で説明したりする手間を削減でき、迅速な情報共有が可能となります。電子データでやり取りすることで記録の検索や保管も容易になり、事務作業の生産性が向上します。
さらに、情報共有システムの活用はテレワーク環境下でも有効です。
現場にいなくても必要な書類確認や承認がオンラインで行えるため、柔軟な働き方にも寄与します。国土交通省は以前からCALS/ECや建設CIMなど電子化施策を進めてきましたが、今回の標準仕様書改定で日常の施工管理レベルでのICT活用が明確に位置づけられた形です。
遠隔臨場の導入で現場確認を効率化
「遠隔臨場」とは、現地に赴かずにオフィス等から工事現場の状況を確認・立会いする手法です。
例えば、施工現場に設置したウェアラブルカメラやタブレット端末の映像をリアルタイムで共有し、発注者や監督者が離れた場所から検査や打合せに参加できます。
2025年版の標準仕様書では、この遠隔臨場を行うための要件や手続きについての規定が新たに盛り込まれました。
遠隔臨場を活用すれば、現場と事務所間の移動時間を削減でき、1日に複数の現場を効率よく確認することも可能です。
特に地方や山間部の工事で担当者が移動に多くの時間を割いていたケースでは、生産性向上の効果が大きいと期待されています。
新型コロナウイルス感染拡大の時期にオンライン会議やリモート監督が実施された経験も踏まえ、今後は平時でもこうした手法を取り入れていく動きが加速しています。
公共建築物で広がる木材利用:木造化への対応強化
2025年版では、木材利用促進にも対応しています。
木造工事標準仕様書が改定され、混構造を含む多様な木造建築に対応できるよう基準が整備されました。
公共建築物での木材利用拡大を目指す国の政策を踏まえた改定です。
都市の木造化推進法と木材利用拡大の背景
国はかねてより公共建築物での木材利用を推進してきました。
特に近年、公共建築分野でも木造化への注目が高まっています。
木材は鉄やコンクリートに比べ製造時のCO2排出が少なく、成長過程でCO2を吸収して固定化するという環境メリットがあります。
また国内の森林資源を有効活用し、地域の林業を活性化させる効果も期待されています。
公共建築物で木材を利用することは、温室効果ガス削減や地方創生の観点から意義が大きいとされています。
木造工事標準仕様書の改定ポイント:混構造への対応
今回の標準仕様書改定では、上記の木材利用推進の方針を踏まえて「公共建築木造工事標準仕様書」の内容が大きく見直されました。
具体的には、これまで木造建築の範囲外だった中高層建築物や大型施設でも木材を活用できるよう、設計・施工上の基準が整備されています。
従来は鉄筋コンクリート造や鉄骨造で計画していた規模の建物でも、部分的に木造を組み合わせたハイブリッド構造で実現できるケースが増えるでしょう。
例えば、下層階を鉄骨造、上層階を木造とする混構造の庁舎や、木材と鉄骨部材を一体化した新工法などにも対応可能です。
木造工事標準仕様書の改定内容には、CLT(直交集成板)など新しい木質材料の利用や、接合部の金物工法の改良なども含まれていると考えられます。
これらにより、大スパンの屋根や高層の耐火木造など、これまで難しかった構造にも木材を適用しやすくなります。
実際、国交省は木造技術の開発・普及を支援しており、耐火性能を高めた木材や強度に優れる集成材の技術進展が標準仕様書にも反映された形です。
これからは、公共建築物においても木の温もりや質感を活かした施設が増えていくことが期待されます。
標準仕様書で木造化の選択肢が明確に示されたことで、設計者・発注者は鉄筋コンクリート一択だった場面でも木材の活用を検討しやすくなりました。
今後のプロジェクトでは、環境負荷低減や地域材活用の観点から、木造・木質化の提案が標準の選択肢として定着していくでしょう。
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まとめ
2025年度版「公共建築工事標準仕様書」の改定ポイントについて、働き方改革、生産性向上、木材利用推進、法令整合、現場実態への対応という観点から見てきました。
今回の改定では、工期変更時の報告手続きやICT活用の規定追加によって現場の働き方が改善され、効率化が図られます。
また、木造化の推進や各種基準の最新化によって、環境に優しく時代に即した技術が公共工事に反映されています。
公共工事の品質確保と施工環境の改善は、業界の将来にとって重要な課題です。
標準仕様書のアップデートにより、発注者と受注者が協力して無理のない工程管理を行い、新技術を積極的に活用できる土壌が整ったと言えるでしょう。
実際の現場では、これら改定内容を踏まえて契約や施工計画を適切に進めることが求められます。
特に施工管理や設計に携わる技術者にとって、最新の仕様書に精通しておくことはプロジェクトを円滑に進める上で不可欠です。
施工業界では慢性的な人手不足や働き手の高齢化が課題となっていますが、今回の改定が示すように、働きやすい環境整備や生産性向上の取り組みが進んでいます。
これから建設業界を目指す方にとっても、デジタル技術や環境配慮といった新たな潮流に触れられる魅力的なフィールドと言えるでしょう。
施工王のような転職支援会社を通じて業界に飛び込む際も、こうした最新動向への知識があれば、自身の強みとしてアピールできます。
公共建築工事標準仕様書の改定内容をしっかり押さえ、今後のキャリアにぜひ役立ててください。
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