目次
上下水道施設には「管渠」や「函渠」のほか、「開渠」や「暗渠」など、類似した言葉が多くあります。
上下水道にはさまざまな施設があることは理解していても、これらについて把握している人は少ないのではないでしょうか。
実はこれらはすべて、私たちの暮らしに欠かせない存在であるという共通点があります。
今回は管渠を中心に、概要や目的、工事方法などを解説します。
設備の役割や概要を知り、私たちの生活にどのように関わっているのかを見ていきましょう。
管渠とは?
管渠とは、地中に埋設した水道の排水、上下水管を含む取水管、またはその周辺にある側溝のことです。
給水や排水を目的として作られる水路の総称として用いられるものの、水路の形態は設置場所によって後ほど解説する別の名称で呼びます。
下水道管路・函渠(かんきょ)との違い
管渠と混在しやすい言葉の一つに「下水道管路」があります。
この下水道管路とは、下水を集めて下水処理場や公共施設などへ運ぶまでの施設・設備の総称のことです。
そのなかの一つに管渠が存在します。
さらに管渠と同じ読み方で「函渠」と呼ばれるものもあり、こちらは水路に限定せず箱形の水路を指します。
箱の形をした地下に埋設される、コンクリート構造物のボックスカルバートなどで造られた道路用の箱型になっている通路も含まれ、水路の総称として用いられる管渠とは大きな違いがあります。
管渠調査をする理由
管渠調査が行われる理由は、上下水管を含む取水管や側溝が埋設された状態によって地上から確認することができないためです。
埋設された下水道管は地盤変化や振動、災害などによる荷重によって破損する恐れがあることから、問題なく稼動しているか、なにか異常はないかを確認するために調査が行われます。
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管渠の種類
管渠として作られた水路は、「開渠(かいきょ)」「溝渠(こうきょ)」「暗渠(あんきょ)」の3つに分類されます。
ここではそれぞれの概要を紹介します。
開渠(かいきょ)
開渠(かいきょ)とは、フタをしない水路や側溝のことで、「明渠(めいきょ)」と呼ばれることもあります。
水路を設置する目的は、農業や工業、産業などのほか、家庭用の給排水のためです。
給水用水道のようなライフラインは管で給水されるため、開渠で行うことはありません。
溝渠(こうきょ)
溝渠(こうきょ)とは、給排水を目的に作られた水路のうち、小規模な溝状のことです。
なかでも公共用として作られた溝渠(こうきょ)は「公共溝渠(こうきょうこうきょ)」と呼ばれています。
溝渠(こうきょ)は「側溝(そっこう)」とも呼ばれ、主に道路の水が停滞しないよう排水を目的に道路・鉄道に沿って設置します。
暗渠(あんきょ)
暗渠(あんきょ)とは、蓋のある水路や地下水路のことで、蓋を簡単に外せるものを呼びます。
蓋で覆い隠した水路を指すため、下水道や河川・農業用水路など、上に蓋をしたものも暗渠(あんきょ)に含まれます。
管渠調査で行われる主な項目
管渠を埋設した後は、正常に稼働できているか、破損などはないかを調査する必要があります。
ここでは管渠調査で行われる項目を紹介します。
カメラによる調査
管渠の口径が直径800mm未満のタイプでは、自走可能なカメラで管渠内部を調査します。カメラに管渠内が正常に映るよう、調査をする前に高圧洗浄を行うのが一般的です。
カメラ調査は録画画面にデータを同時表示できることから、資料作成がスムーズに行えるメリットがあります。
目視による調査
下水道管渠の口径が直径800mm以上の場合は、調査員が目視で調査を行います。
なお近年ではテレビカメラの進化によって、大経口タイプの管渠に対応した調査も増加。
目視での調査は、マンホールや管渠自体の損傷・劣化を確認する際に行うことが多いです。
内面の調査・測定
内面の調査では、レーザー測定機器を使って管内形状を精密に計測し、管内壁の凹凸や変形を確認します。
測定器で表示されたデータは、パソコンでの解析によって全方向の精密測定結果が表示され、3Dによって細部まで確認することも可能です。
さらに測定結果はデジタルデータのため、データベースへの蓄積はもちろん変形や腐食といったさまざまな要因の解析にも活用できます。
ガスの調査・測定
調査員が立ち入る前は、酸素濃度や硫化水素濃度、可燃性ガスの発生・有無・蔓延の確認が行われます。
ガスの調査は安全面の確保から、調査項目が細かく決められており、項目全てが安全基準値に満たない場合は調査員による調査が行えません。
基準値を超えていたときは、洗浄・強制換気などを行い、作業環境を安全基準値まで整えてから立ち入り作業を行います。
なお硫化水素は毒性が高いため、生命に危険を及ぼすだけでなく、コンクリート管を劣化させるなどの腐食性もあることから、必要性の高い調査とされています。
清掃
管渠の清掃は可燃性ガスや腐食性ガスの発生源を取り除く目的があり、調査と併用して行われます。
機械はじめ作業員による洗浄などを行いながら管渠内を調査します。
清掃では堆積した砂・ラードなども取り除きますが、丁寧な作業によって管渠を維持することにもつながります。
性能が機能していない場合は修繕工事が行われる
管渠調査によって下水道管渠が正常に機能していないと判断されたときは修繕工事が行われます。
下水道管渠は道路の下に埋設されているため、車両の走行によって発生する振動の影響が出やすいと言われています。
さらに都市部では大量の排水の圧力によって劣化の進行速度が速まる傾向にあり、その際も修繕工事が行われます。
マンホールとマンホールの間の管渠を交換する工事がありますが、全面入れ替えは費用が高額になるため、一部の管だけが破損していたり1ヶ所に穴が空いている場合は一部の工事になります。
下水道の管渠で行われる工事
下水道管渠の工事は開削工法と非開削工法の2つに分けられます。
ここでは工事の種類と概要を紹介します。
開削工法
開削工法は小口径の管渠を浅い地下に埋設する工法です。
地面を掘削する深度や規模によっては、工事に使用する工具の種類が異なります。
開削工法には「軽量鋼矢板建込工法(けいりょうこうやいたたてこみこうほう)」や「建込簡易土留工法(たてこみかんいつちどめこうほう)」などがあり、工事を行う管渠の状況に合わせて選択されます。
非開削工法
開削せずに行う非開削工法には2つの種類があります。
ここでは「推進工法」と「シールド工法」について解説します。
推進工法
推進工法は、工場で作られた下水道管を使って、その下水道管の先端に推進器などを取り付けて地中を進む工法です。
トンネルを造る際、横穴トンネルを掘る前に先に縦穴を造りますが、この縦穴のことを「発進立坑(はっしんたてこう)」と呼びます。
推進工法では、この発進立坑から掘る進機によって地中の所定の位置を掘削し、掘進機の後続に推進管を接続しつつ立坑からの反力を使って地中に押し込み管路を築造します。
シールド工法
シールド工法は、シールド機と呼ばれるトンネルを掘削する機械を使って開削する工法です。
掘削後は円筒形に組み立てることが可能な銅製のセグメントを使い、下水道管を造ります。
できあがった下水道管のセグメント内部は、コンクリートを打つほか、強化プラスチック複合管などを挿して仕上げます。
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管渠の更生で行われる工事
車両の走行による振動や排水の圧力によって劣化する下水道の管渠。
災害や老朽化によっても破損や漏水、腐食などが起きることから、被害を最小限に抑えるため、日常的に更生工事が行われています。
反転・形成工法
反転・形成工法は、熱、または光で硬化する樹脂を含んだ材料を、既設マンホールから既設管内に反転加工させながら挿し込み、既設管内部で加圧状態のまま樹脂が硬化することで構築させる工法です。
一方、形成工法は、熱または光で硬化する樹脂を含んだ材料や熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)の連続パイプを既設管内に引き込み、水圧や空気圧、蒸気圧で拡張・圧縮させたあと、硬化または冷却固化させて管を構築する工法です。
鞘管工法
鞘管工法は、既設管に比べて一回りほど小さいプラスチック製の管を、工場で作製したのち、推進または接合させて既存管に挿して敷設する工法です。
更生管は工場製品のため、仕上がり後の信頼性が高いといったメリットがあります。
製管工法
製管工法は、既設管内に硬質塩化ビニル材などを嵌合させながら樹脂パイプを製管し、既存管との間にモルタルなどを充填して管を構築する工法です。
流下量が少量であれば、下水を流下させながらの施工も可能です。
管渠は私たちの暮らしに欠かせない設備の一つ
今回は管渠について解説しました。
管渠は私たちの暮らしに欠かせないライフラインの施設の一つです。
私たちの暮らしはいつも誰かの手によって守られ維持できていることが、本記事によってイメージできるきっかけに役立てば幸いです。
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