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押え盛土工法とは?特徴や施工方法、押さえておくべき注意点を解説

軟弱地盤対策の一つに「押え盛土工法」という対策が用いられます。

本記事では、押え盛土工法の概要と施工方法、押さえておくべき注意点を紹介します。

土木工事に従事する人や、これから土木業界に就職・転職を予定している人は、ぜひ参考資料の一つとしてお役立てください。

押え盛土工法とは


押え盛土工法とは、盛土が必要な安全率を確保できず、基礎地盤のすべりや破壊の危険がある際に、本体盛土に先行して側方に施工し、すべりに対する安全性を確保する方法のことです。

軟弱地盤対策方法のうちの一つで、押え盛土工法のほかにも表層処理工法や緩速載荷工法、置換工法などがあります。

施工方法 概要
表層処理工法 表層地盤に石灰やセメントといった固化剤を混ぜて地盤改良を目的とした工法
緩速載荷工法 軟弱地盤の処理を行わず、その代わりに圧密の進行に合わせて時間をかけて施工し、地盤の強度増加・安定を目的とした工法
置換工法 軟弱地盤の一部、または全体を良質材等に置き換えて地盤強化を目的とした工法
軽量盛土工法 軟弱地盤や地すべり地帯、急傾斜地などに従来の土を使った盛土施工が困難なときに、軽量な資材を土の代わりに使用して構造物や周辺環境への影響を予防する工法
載荷重工法 盛土や構造物が計画された地盤に対して、事前に荷重をかけて沈下を促進後、改めて計画済の構造物を作る工法
振動締固め工法 ロッド先端部に取り付けた大容量バイブレータを用いて地盤や供給される中詰め材を水平方向に振動締固め、軟弱地盤を改良する工法
サンドコンパクションパイル工法 地盤内に鋼管を貫入後、管内に砂等を投入し、振動で締め固めた砂杭を地盤中に造成する工法
バーチカルドレーン工法 軟弱な粘度地盤にプラスチック製のバーチカルドレーンを打設し、盛土の荷重を用いて土中の水を抜き、圧密沈下させる工法
ペーパードレーン工法とも呼ばれる
固結工法 セメント等の固化剤などで軟弱地盤を団結させ、支持力の増大、変形の抑制および液状化を防止する工法
排水工法 排水材を軟弱地盤の中に打設後、排水経路を確保する工法
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押え盛土工法の特徴


ここからは押え盛土工法の特徴を紹介します。

➀応急処置として使用される機会が多い

押え盛土工法は、すでに地すべりが起きている部分に応急的に処置するための工法です。

応急処置として採択される理由は、施工に特別な材料を用意する必要がないことが挙げられます。

作業が進めやすく抵抗力を現場に負荷しやすいといった特徴があるので、地すべりによる甚大な影響を最小限の資材でくい止めることが可能です。

➁十分な用地面積が必要

応急処置に適した方法である一方で、一定以上の広さが必要になるのも特徴の一つです。

例えば工事を行う斜面と、河川・住宅の間に一定以上の用地面積がない場合、適切な工事が行えません。

このような場合は押え盛土工法以外の工法で対処します。

③地すべりへの抵抗力を付加できる

軟弱地盤に適した工法なので、頑丈さに欠ける表層地盤を強固な地盤に変えることができます。

例えば雨水に強い礫質土や砂質土を使うと、工事の効果をより発揮しやすくなります。

礫質土や砂質土は水に浸食されにくい性質があるので、盛土作業終了後の敷き均しや締固め作業がスムーズになる特徴もあります。

押え盛土工法の施工手順


ここでは押え盛土工法の施工手順を紹介します。

  1. 工事に取り掛かる前に、あらかじめ木の根や落ち葉などを取り除き、きれいな土に仕上げておく
  2. 盛土材料の土の選定および搬入をする
  3. 盛り土が終わったらブルドーザーなどの重機を使って敷き均しをする

ただし、押え盛土工法の施工においては、押え盛土全体で押されると言うよりも、押え盛土内部に地すべり面末端からつながる新たなすべり面が形成されなければなりません。

新たなすべり面を形成させるには、以下の条件で施工する必要があります。

  • 有効押え盛土量は地すべり移動土塊量の2.5~30%(平均約13%)とする
  • 押え盛土有効高さは少なくとも地すべり最大層厚の6分の1程度を目安とする
  • 押え盛土幅は全ての事例において地すべり末端部の幅のおよそ75%以上を確保
  • 押え盛土天端幅(地すべり移動方向の幅)は5m程度

参考:地すべり応急緊急対策としての押え盛土の形状と効果

なお、押え盛土量と安全率変化の関係は、すべり面の形状や押え盛土形状等に左右されるほか、盛土量に比例して安全率が上昇するとは限らないので注意しましょう。

押え盛土工法における注意点


ここからは押え盛土工法における注意点を2つ紹介します。

➀地下水の確認をする

雨などによって盛土内部に地下水が溜まってしまうと、盛土が地下水と一緒に流れ出てしまうなどさまざまなトラブルを招く恐れがあります。

また、盛土そのものが崩壊する恐れもあることから、工事の際には押え盛土工法に最適な土を使用するなど、地下水が溜まりにくい材料を選ぶよう注意しましょう。

➁地すべりを助長する可能性がある

押え盛土工法は地すべりの発生をしにくくするための工事です。

しかし、工事によって地すべりを助長する恐れがあることにも留意しましょう。

その理由は、押え盛土工法で用いられる材料が土であるためです。

地すべりを助長させないためには使用する材料、特に土が盛土に適しているかを確認することが大切です。

なお、地すべりへの応急処置として押え盛り土を施工する際は現場土を利用するしかありません。

この場合は木々などの異物をきれいに取り除き、良質な土に仕上げてから施工するよう注意しましょう。

地すべりの移動速度が速いときは、地すべり滑動が低下または停止するまで時間があるので、土留め柵などを使って押さえ盛り土を法留すると良いでしょう。

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押え盛土工法について理解を深めよう

軟弱地盤対策工法の一つである押え盛土工法は、地すべりに対する応急処置です。

状況によっては現場土を使う必要もあることから、施工する際は異物をきれいに取り除き、地すべりを最小限に抑える姿勢が求められます。

本記事で紹介した方法や特徴は土木施工管理技士試験にも出題されることの多い知識です。

土木工事に携わる人はもちろん、土木施工管理技士試験を受験する人は、この機会に覚えておくと良いでしょう。

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