建設業界の基礎知識

スレーキングとは?スレーキング試験や対策方法も解説

スレーキングは土木工事に関わる人は1度は聞いた事があるでしょう。

実は、スレーキングが大規模に発生してしまうと、大きな事故にもつながります。
そのため、土木工事に従事する方は、スレーキングについて把握しておくべき言葉です。

本記事では、スレーキングの概要と発生のメカニズム、スレーキングを防ぐ対策や安全性を確認する試験などを解説します。

日常生活においては聞きなれない言葉ですが、土木工事関係者には深くかかわるため、本記事を通してスレーキングについての知識を深めてください。

スレーキングとは


スレーキングとは、軟石や硬岩などが気象の影響で乾燥と湿潤を繰り返し、細粒化(土砂化)する現象のことです。
また、スレーキングで細粒化しやすい石や岩は、スレーキング材料と呼ばれます。

道路盛土や宅地造成などでスレーキング材料を使用した場合、自然現象によってスレーキングが発生します。
そのため、盛土の崩壊や不等沈下などが引き起こされる可能性を、考慮しなくてはなりません。

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スレーキング現象の発生メカニズム


スレーキングが起こるメカニズムは主に2つあります。

  • 乾燥・湿潤が繰り返されること
  • 乾燥した状態で細かなクラックや隙間に水が侵入すること

まず、乾燥・湿潤が繰り返されることがあげられます。

石や岩が自然現象により乾燥や湿潤が繰り替えされると、収縮膨張現象で細かなクラック(ひびわれ)が発生し、徐々に増加することで細粒かされます。

次に、乾燥した状態で細かなクラックや隙間に水が侵入することも、スレーキングの発生原因です。

クラックや隙間に侵入した水は、毛管力作用(狭い隙間の中で液体が自発的に移動する現象)で内部まで引き込まれます。

内部まで水が入り込むと、逃げ場のない空気が圧縮され空気圧が上昇、破壊現象が引き起こされます。

スレーキング性材料とは


スレーキングが発生しやすい軟石や硬岩、土塊はスレーキング性材料と呼ばれます。

スレーキング性材料は新第3期時代に堆積した凝灰岩(ぎょうかいがん)や泥岩(でいがん)などが該当し、そのほかにも、頁岩(けつがん)や蛇紋岩(じゃもんがん)などが有名でしょう。

スレーキング性材料をそのまま盛土といった施工に使用すると、施工後に不等沈下の可能性が高まります。

そのため、スレーキングが起こりやすい材料で施工する場合、あらかじめ性状を確認して対策を講じなくてはなりません。

スレーキング材料を使用する場合の対策


スレーキング現象を引き起こすスレーキング性材料ですが、建設残土削減のため、現場内で使用する必要性に迫られている現状があります。

そのため、スレーキング材を使用する場合、以下で解説する4つの対策を施します。

排水処理

ストレーキングは湿潤の繰り返しが原因となることからわかるように、浸透水や地下水が大きく影響します。

それゆえ、スレーキング剤を使用する際は、地表面の排水や地下排水工、湧水処理などを徹底しなくてはなりません。

破砕転圧

破砕転圧とは、転圧の際にあらかじめ岩石を破砕しておく方法です。
スレーキング性材料は施工後に風化によって圧縮沈下するリスクがあるため、前もって破砕して沈下の可能性を減少させます。

そのため、掘削段階から十分に破砕できる掘削方法(リッピング方法など)を検討する必要があります。

また盛土を撒く際には、砂と混合して適切な粒度に調整し、隙間のない均一な締固めが必要です。
さらに、タンピングローラーで破砕転圧を行う場合は、薄層で締め固めるのが効果的です。

安定処理

「安定処理」とは土壌の質を向上させるために、石灰やセメントなどの改良剤を用いる方法です。

破砕転圧が効果を示さない場合、安定処理による土壌改良が効果的です。
安定処理を行った後は、その効果を確かめてから使用します。

品質管理

スレーキング性材料を使用する場合、工法規定方式での品質管理が有効です。
一般的に、空気間隙率が15%を下回ると、圧縮力によるひずみが一定値に安定することが確認されています。

そのため、排水処理後に破砕転圧と安定処理を施し、空気間隙率を15%以下に維持できる工法規定方式を設定することで、スレーキングの発生の予防が期待できます。

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スレーキング試験で安全性を確認する


スレーキング性材料を使用する場合、性状を確認し必要に応じた対策をしなければなりません。

ここでは、性状を確認する4つの試験について解説します。

浸水崩壊度試験

浸水崩壊度試験は岩石の形状変化を調べる検査で、1週間〜10日かけて行われます。
検査は、以下の手順で行われます。

  1. 検査する岩石(5cm~cm程の岩塊)を、80℃の温度で24時間乾燥させる
  2. 水浸して時間経過ごとの崩壊度を目視によって観察する
  3. 岩石の崩壊度を、A~Dの4段階で評価する

岩の乾湿繰返し吸水率試験

岩の乾湿繰返し吸水率試験は、切土法面の風化に対する耐久性を調べる試験です。
検査の手順は、以下の通りです。

  1. 岩石の質量を測定、24時間水に浸す
  2. 崩壊した土を含む給水後の質量を測定する
  3. 110℃前後で乾燥させ、再度質量を測定する
  4. 10サイクル行い、サイクルごとに水を含む比率を計り耐久性を評価する

岩の破砕率試験

岩の破砕率試験は、スレーキング性材料の破砕性を評価する検査です。
試験は、以下の手順に沿って行われます。

  1. 適度な大きさに調整された岩や土のサンプルを9キログラム以上用意する
  2. このサンプルを型に入れて、形を整える
  3. 機械を使いゆっくりと力を加え、サンプルが壊れるまで押し続ける
  4. 型からサンプルを取り出し、特別なふるいで通過したものと残ったものに分ける
  5. 分けた後のサンプルを乾燥させて、重さを計り破砕率を算出する

    破砕率=ふるいを通過した乾燥土質量/乾燥土全質量×100

岩のスレーキング率試験

岩のスレーキング率試験は、スレーキング性材料の耐久性を調べる検査です。
試験の手順は以下の通りです。

  1. 粒が適度な大きさになるように調整した試料を用意し、3kg以上の重さがあるものを3つ作る
  2. 試料を110℃前後で24時間炉乾燥させ、乾いた後の重量を計測する
  3. 乾燥した試料を室温の水に24時間つける
  4. 2~3の手順を5回繰り返す
  5. 小さい粒子が通る9.5mmのふるいで洗い、再び乾かして重さを計測し、スレーキング率を算出する

    スレーキング率=全乾燥土質量ー9.5mmふるいに残留した乾燥土質量/全乾燥土質量×100

スレーキング現象で生じる問題


スレーキングが生じた材料は耐久性が低下するため、さまざまな問題が引き起こされます。
ここでは、スレーキング現象で起こる3つの問題について解説します。

以下の解説文に目を通し、スレーキングの問題について理解を深めましょう。

安定性の低下

スレーキング現象が発生すると、盛土の安定性が顕著に低下します。

施工時に問題がないと思われた盛土材料でも、スレーキングによる風化が進行し細粒化することで安定性が損なわれます。

盛土の崩壊

道路盛土や宅地造成、埋め立て地などで使用される盛土材料にスレーキング性材料が含まれる場合、天候の変動により細かくやわらかくなりがちです。

そのため、盛土の崩壊や地盤が不均等に沈下して、構造物が傾くケースがあります。

斜面崩壊や地すべり

スレーキングは、盛土だけではなく切土でも懸念される問題です。
切土の場合でもスレーキングによって細粒化がすすみ、地下深くまで進行します。

そのため強度が低下し、斜面崩壊や地すべりの発生するリスクが増加します。

地盤の安定にはスレーキングへの理解が重要

スレーキングとは石や岩などが自然環境の影響を受けて、細粒化する現象です。

不等沈下や地すべりなどの原因になるため、スレーキングしやすい材料は事前の検査や対策が必要です。

盛土や宅地造成といった工事には、石や岩の使用は避けられません。
それゆえ、スレーキングの問題も絶えずついて回ります。

工事にかかわる方は地盤を安定させるためにも、スレーキングへの理解を深めてください。

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